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記録宝石

 アヤは、自分の追跡がこれほどまで執拗になるとは思っていなかった。


「……本来の価値も知らないくせに」


 アヤは、ひとつの宝石を盗んだ。


 その宝石は、魔術を用いることで、膨大な量の情報を記憶できることが知られていた。

 記録そのものは比較的容易だが、読み取るには高度な技術を要する。


 そのため、宝石は掘り出されると魔術研究所へ運ばれ、専門の魔術師によって解析が行われていた。

 魔術の研究では異音や異臭が発生することも多く、人里離れた山岳地帯で行われるのが常だった。


 ――そこを、アヤは狙った。


 記録宝石は、魔術が使えなければ意味をなさない。

 そのため、掘り出した者が魔術師に売れば、七日ほど飲み食いに困らぬ程度の価値はあった。


 だが、その中でも特別な宝石が掘り出された。

 緑黄石――極めて珍しい記録宝石。


 その記録容量は、従来のものの千倍に及ぶ。

 ただし、読み取りは極めて困難だった。


 国中から研究者が集められ、解析が進められていた。

 多くの人が出入りするその状況こそが、アヤにとって好都合だった。


 アヤは研究者のひとりとして潜り込み、記録宝石に関する情報交換を堂々と行った。

 少しずつ信頼を積み上げ、そして――ある日。


 緑黄石の宝石と、アヤの姿が、忽然と姿を消した。


 


 そこから、追われる日々が始まった。


 理由は分かっていた。

 緑黄石には「探索種」と呼ばれる魔術が施されていたのだ。


 それを外すには、鍵となる魔術詠唱詩が必要になる。

 力ずくで剥がそうとすれば、宝石内部の記録が破壊される仕組みになっている。


 加えて、「探索種」は精密ではない。

 大きな建物の中や、近くに同種の探索魔術が存在すると、対象を特定できなくなる。


 だから、アヤは街を目指した。


 だが兵たちは、周囲に建物もなく、探索種の誤作動も起きにくい山中で待ち伏せし、

 宝石を持つ者を追い詰めてきたのだ。


 


 アヤは、街まで走り切れれば勝ちだと考え、一気に駆け抜けようとした。


 だが、想定外だった。


 追ってきた兵たちは、一人ひとりが鍛えられた能力を持っていた。

 これまで、アヤと同等の速度で森を走り抜けられる者はいなかった。

 速度を保ったまま、的確に近接攻撃を仕掛けてくる者など、なおさらだ。


 それでも――。


 街に入った以上、まだ分はある。

 アヤはそう感じていた。


(……これじゃ、ただの盗人だな)


 内心で苦笑する。


(しょうがないけど。中身を確認したら返す、なんて言っても……通じるわけないか)


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