新たな護衛
商団は、ひっそりと進んでいった。
ラズレックは黙って歩いていた。
アヤは、さらなる盗賊に狙われていないか、周囲を警戒している。
ジェスタは馬の上で言った。
「楽しくないわ。ねえ、歌を歌っていいかしら」
誰も返事をしない。
「じゃあ、何を歌おうかしら」
そう言いながら、歌い始めた。
誰も知らない言語だった。
何を歌っているのかはわからない。
だが、それが美しい鎮魂歌であることだけは、誰もが感じていた。
――
セフィラの街までは、その後、何事もなくたどり着いた。
アヤは同行していた商団の者や傭兵たちに別れを告げた。
「三人で宿を探そう。
それから飯だ」
「そうね」とジェスタが応える。
――
三人が歩き出そうとしたとき、一人の男がラズレックに声をかけた。
「護衛を頼みたい」
商団にいた男だった。
ラズレックは答える。
「すまぬが、他をあたってくれ。
まだ傭兵たちはあそこにいる」
そう言って指さす。
「いや、あんたがいいんじゃ。
あんたは傭兵より、ずっと強い」
ジェスタが割って入る。
「ラズレックを雇おうなんて物好きね。
まあ、いくら払ってくれるか次第で、私が説得してあげるわよ」
男は言った。
「払えるだけ払う。
ただし後払いだ」
「この街の主に届け物がある。
届ければ、とてつもない報酬がもらえる」
ジェスタは笑う。
「後払いの大金持ち、ね。
そういう話、嫌いなの。じゃあね」
――
男は、三人にだけ聞こえる声で言った。
「街の主に届けるのは――『フォースクリスタ』だ」
三人は振り返った。
男はたたみかける。
「街の主に会えるのは五日後だ。
それまで、俺を守ってほしい」
ジェスタが言う。
「本当に? 偽物でしょ」
アヤは即座に言った。
「ラズレック。こいつは嘘だ。行こう」
ここで引き離したかった。
だが――
ラズレックは男に問いかけた。
「お前は、それを届ける約束をしているのか」
「これが証書だ。
これがないと会えない」
ラズレックはさらに聞く。
「街の主の名は」
「ルドルフ・ミューレン様じゃ」
アヤは、軽く首を傾げ、苦笑した。
ラズレックは言った。
「……では、お前の護衛をしてやろう」
「おおっ、ありがたい!」
――
ラズレックは男を荷物のように抱え上げた。
「場所を言え。今すぐ向かう」
男は慌てて言う。
「約束は五日後だ!」
「今からだ!」
ジェスタはアヤに囁く。
「ねえ……怒ってない?」
「だろうね」
アヤは小さく答えた。




