表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/55

商団の中で

セフィラ行きの定期商団の旅は、穏やかに始まった。


ドレイクが馬を一頭貸してくれた。

アヤが乗り、その後ろにジェスタが座る。

その横を、ラズレックが歩いていた。


三人は商団の後方に位置していた。


商団には、団員の家族や、同行する旅人たちも混じっていた。

ラズレックは、すぐに子どもたちの人気者になった。


商団で一番背の高い者より、さらに頭二つ分も大きい。

大人にとっては脅威になりかねない体格だが、

子どもにとっては、ただの「不思議な巨人」だった。


休憩になるたび、ラズレックの周りは子どもで埋まった。


たわいない質問にも、彼は真面目に答える。

それがまた、人気を集める理由だった。


「あらあら、まるで教会の学び舎ね」


ジェスタが笑う。


「くだらない話に、何時間も付き合えるのかしら」


彼女は同年代の者たちと談笑していた。


――


アヤは、同行を許可されたときのドレイクの言葉を思い出していた。


『セフィラ行きの商団は狙われやすい。

荷も高価なものが多い。

だが護衛も強者ぞろいだ。よほどのことがなければ問題はない』


(“狙われやすい”の方が、本音だろうな)


――


三度目の休憩のとき、傭兵団長が声を張り上げた。


「この先は乾燥地帯だ。隠れる場所もない。

今夜は満月。盗賊に狙われやすい。――いや、ほぼ確実に来る。


気を引き締めろ。

セフィラの感謝祭に間に合わせる。

戦えぬ者は、ここで引き返せ」


ジェスタが小声で聞いた。


「……私たち、行くの?」


「当然だ」


アヤは即答した。


「感謝祭だぞ。掘り出し物も多い。

ラズレックがいれば問題ない」


「そんなもの?」


「そんなものさ」


ラズレックは、残る者たちから別れの挨拶を受けていた。


――


商団は再び動き出した。


日が沈み始めたころ、隊列が組み替えられた。

家族連れや同行者は中央に集められる。


「密集しすぎだな……動きづらい」


アヤがつぶやいた。


――その瞬間だった。


ヒュン。


音とともに、矢が降ってきた。

しかも、一斉に。


ラズレックは即座に動いた。


商団中央に、砂のドーム状防壁を形成する。


「助かったな……」


アヤが言う。


「この撃ち方……人は皆殺し、荷だけ狙いだ」


子どもが泣き出した。

最初の矢で、母親が肩を射抜かれて倒れている。


矢の雨は、何度も繰り返された。


防壁を突き抜けるものはなかった


ジェスタが問う。


「前方は大丈夫? 矢の数が異常よ」


「おかしい」


アヤが答える。


「馬も人も売れるのに無視してる。

……よほどの“貴重な品”がある。


そして、それがあることを知っている。

つまり、内通者がいる」


そのとき、傭兵団の叫びが響いた。


「黒狼の盗賊団だ!

 来るぞ! 剣を持てる者は構えろ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ