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朱い華

アヤたちは、数日この町に滞在した。

ドレイクがティオたちへの報酬を支払うのを、きちんと見届けることができた。


ティオは、ドレイクの子の友人になってくれるよう頼まれ、

無邪気に「いいよ」と答えていた。


母親も良い職につけたようで、皆ひとまず安心していた。


――ただ一人、安心できなかったのがジェスタだ。


ジェスタは、とても美しいこともあり、飯屋や酒場で男たちに囲まれ、すぐに有名になった。


街の者たちには、

「私は魔女に誘拐されて、子どもにされて幽閉されていたの」

と話しているらしい。


アヤとラズレックは、少し離れた場所からその様子を眺めていた。


アヤが言う。


「自分で魔女だとは言えないしな。まあ、人気はあるみたいだ。この町でもやっていけそうだな」


ラズレックは答えた。


「だが、魔女であるなら、置いていくのは危険だ」


「旅に連れていけば、ラズレックが魔術を学べるって点では悪くないけどな」


「学ばぬ。真偽のわからぬ言葉からは学べぬ」


と、ラズレック。


アヤは続けた。


「町の人に聞いたけど、この辺りの魔女の話は百年以上前の話だったよ。

魔女に恋した王子様の物語だってさ」


そんな話をしていると、ジェスタが近づいてきた。


「ねえ。お話中ごめんなさい。

この町を出るのはいつかしら? ちょっと飽きてきたわ」


アヤは答えた。


「じゃあ、明日にでも出よう。セフィラ行きの定期便についていこう」


「いいわ。行きましょう。

明日に備えて買い物よ。ラズレック、立って」


ジェスタに引っ張られ、ラズレックは不満げに立ち上がる。問題を起こされては危険極まる。


アヤは言った。


「私はドレイクに挨拶して、定期便の件を伝えてくる」


そう言って別行動になった。


――


「ねえ、これ似合う?」


赤い派手なフード付きローブを着たジェスタが聞いた。


「目立ちすぎだ。地味な色を選べ。

盗賊に狙われたいのか」


ジェスタは聞く耳を持たず、次々とローブを手に取る。


やがて一つを選んだ。


青みがかった灰色のフード付きローブ。

裏地には朱い華の模様が描かれていた。


「これだわ」


ジェスタは微笑んだ。


「どう、ラズレック。

 地味だけど、私の中には朱い華が咲いているのよ。私に似合っているわ」


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