表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/46

ラズレックの旅

ラズレックは、長い間、話をしていた。


話を聞く村人たちは、代わる代わる酒や食べ物を皿に盛り、戻ってきた。


ラズレックは食事をせず、水も飲まない。しかし、その周りには、常に食事が運ばれていた。


ラズレックはいらないと言ったが、村人たちは笑いながら、次々と持ってくる。


やがてラズレックは、食べ物が少なくなった者たちに、それを渡すようになった。


村人たちは、渡された料理を喜んで食べ、また新しい料理をラズレックの前に置いた。


 


「さあ、この辺りに兵はいなくなった」


そう言って、ラズレックが外へ出ようとすると、


「そうですな……」


と、名残惜しそうに村人が言った。


 


坑道から出ると、村の中は荒れていた。


荒れ方はひどかったが、村人たちは、


「焼かれていなければ御の字じゃ」


と言った。


家は手早く片づけられ、皆、畑へ向かった。


作物は取られていた。


「食べ物に苦労するかのう……」


と村長がつぶやいた。


ラズレックが、


「食べられない私に、食事を用意しすぎだ」


と言うと、


「ラズレック様の話は、ひどく面白くて楽しかった。あれはあれでよいのです」


と返ってきた。


アヤが言った。


「ラズレック、気にするな。ここは探索者の村だ。食い物はなくなったけど、売って金になるものを、みんな少しずつ持ってるさ」


村長は笑って言った。


「そういうことですじゃ。ラズレック様、今後はどうなさるので? この村に留まってくだされば、皆、喜びますがのお」


ラズレックは答えた。


「いや、すまぬが旅に出る。私は魔術に興味がある。あの不思議な力が、何から生まれているのか知りたいのだ。私の力とは、根本的に成り立ちが違うからな」


村長はアヤを見て言った。


「お前は、ついて行くのだろう」


アヤは、うなずいた。


「うらやましいやつじゃ。これも運命かのう。ラズレック様、アヤを連れていってくだされ。きっと役に立ちますじゃ」


ラズレックは言った。


「知っている。このマントも帽子も、アヤからもらったものだからな」


村長は笑いながら、


「旅費にせよ」


と言って、金貨と赤く光る記憶宝石をアヤに渡した。


 


翌日、ラズレックは皆に別れを告げた。


皆は、


「いつでも帰ってこい」


と言った。


ラズレックは、


「お礼に、坑道の中に、こぶし一つほどの金と、こぶし五つほどの銅を集めておいた。困ったときに役立ててくれ」


と言った。


ラズレックは、見えなくなるまで、村中から振られる手に向かって、大きな手を何度も振った。


アヤは、それを見て笑っていた。


 


アヤが言った。


「さて、ラズレック。どこへ行こうか」


ラズレックは答えた。


「魔術が多く見られる地方はないのか」


アヤは言った。


「基本、魔術は秘密にされるものさ。珍しいからな。クラウディアみたいに、あえて有名にする場合もあるけどね。


魔術が使えると知られると、この辺じゃ誘拐されて売られることもある。売られた先が貴族ならまだいいが、石の部屋に閉じ込められて、魔術で働かされることもあるんだ。


だから、みんな隠すのさ。会いたくて会えるのは、クラウディアみたいな特別に強い魔術師くらいだよ」


ラズレックは言った。


「クラウディアの雷は見た。他に有名な魔術師は、どこへ行けばよい」


アヤは少し考えてから言った。


「ルドルフ・ミューレンっていう水の魔術師がいる。『深淵の調律者』なんて異名を持ってて、執政官サルヴァンの弟子らしい。この辺で有名なのは、そいつかな」


ラズレックは言った。


「では、会いに行こう」


そう言って一歩踏み出した、そのとき――


 


草むらから、小さなロバに乗った小さな子どもが飛び出してきた。


ロバごとラズレックにぶつかりそうになり、ラズレックは受け止めようとした。


だが、ぶつからなかった。


ありえない角度で、三倍はありそうなラズレックの体を飛び越えたのだ。


ロバと、その上の少年は、ゆっくりと降りてきた。


ロバは宙に浮いたまま、足をばたつかせている。


「大丈夫?」


と少年は言った。


アヤは笑って言った。


「あはは、ラズレック。見つかったぞ。お望みの魔術師が」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ