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アヤの故郷

 アヤの村に着いた。


 ――誰もいなかった。


 村は荒らされていた。だが、死体は一つもない。

 道に残った足跡の多さから、間違いなく兵が通ったあとだとわかった。


 


「ここまで人がいないと、かえって安心だな」


 アヤはそう言った。

 そして付け加える。


「……死体がない。全滅じゃない」


 


 アヤはラズレックに手招きした。


「ついてこい」


 二人は鍛冶屋の窯の前まで来ると、裏へ回った。

 灰の中に、隠すように扉があった。


 扉を開けると、真っ暗な通路が口を開けている。


 扉を閉め、アヤは独特のリズムで壁を――かすかに叩いた。


 すると通路の先に、ぽつりと光が灯った。


 


「ラズレック。ここはね……私たちが遺物を探すために掘った坑道なんだよ。

 今じゃ、ここで台風の時とかに避難するんだ」


 通路を抜けると、巨大な坑道が現れた。


「結構明るいだろ。魔力鉱石を応用した魔道具で明るいんだ」


 子どもの息づかい、女たちの囁き、老人の咳。村中の者が集まっていた。



「この坑道は水も適度に流れていて快適なんだ」


 


「その声は――カナレーン家のアヤか?」


 暗がりから声がした。


「そうだよ」


「アヤ。お前は一体、誰と来ているのだ」


 男たちの気配が増える。


 ラズレックが彫像のように美しいから驚いているのではない。

 男の一人が呻くように言った。


「……遺物なのか。動くのか」


 アヤはあっさり答えた。


「動くというより、生きてる。話も通じるぞ」


「おおお……」


 坑道に、興奮が波紋のように広がった。


 


 アヤは手を上げ、落ち着かせるように言った。


「興味が尽きぬのはわかる。

 でもまず、なぜここに隠れたかを教えてくれ。

 多くの兵が来たと聞いて、慌てて帰ってきたんだ」


 返答が来る。


「来たぞ。結構な中隊規模の兵たちだった。

 我らは巨岩族より不気味な足音が遠くから来ると聞いてな。慌てて斥候を出したら兵隊だった。だからここに入ったのさ」


 アヤが村の様子を話すと、男は頷いた。


「ある程度は仕方ない。

 食料や衣服を少し取って通り過ぎるならまだ良い。

 大事な道具と食料はここへ運んだ。問題ない」


「どこへ向かったのだろうな……」


 


 そこへ村の長が現れた。


「東へ向かっていた。

 詳しく知りたいなら、東の街ミラティスあたりで野営するだろう。探りを入れればよい」


 そして村の長はアヤに目を向けた。


「それよりも――アヤ・カナレーン。早く連れのことを話せ。

 でないと皆、勝手に質問攻めにするぞ」


 アヤは皆が無事なことに安堵し、肩の力を抜いた。


「では……ラズレックの話をしよう」


 


 だがラズレックが言った。


「いや、私は兵が気になる。東の街ミラティスへ行こうと思う」


 村長がすぐに返す。


「気になることはこちらで調べよう。

 ラズレック殿はここにいてくれ。」


 そして村人へ命じた。


「東の街へ行くものおらぬか。

 兵の目的地、行軍の理由――誰か調べて来るものはおらぬか。

 調べてきた者には、ラズレック殿と一対一で話す機会を与える」


 四、五人が手を挙げた。


「くじで一人にせよ」


 くじを当てた者は大喜びで、坑道を飛び出していった。


 正直、ラズレックは目立つ。

 代わりに調べてもらえるのはありがたかった。


 


 村長が目を輝かせた。


「それでは――まず私から一つ目の質問をしてもよいかな」


 ラズレックは、質問に一つ一つ答えていった。


 


 坑道には日の光が届かない。

 一体どれほど話したのか、誰にもわからない。


 村人たちは楽しんでいるようだった。

 アヤは安心し、眠気がじわりと落ちてくるのを感じた。

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