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巨岩族の谷

アヤはラズレックに、歩きながらずっと話しかけていた。

 ラズレックは、ゆっくりと言葉を返していた。


 アヤが言った。


「ここから北へ行くと、巨岩族のいる谷へ行けるぞ」


 ラズレックは頷いた。


「それはいいな。巨岩族とは、ぜひ会ってみたい。おそらく私と同じく、過去の人工生命ではないかな」


 アヤは肩をすくめた。


「確かにね。巨岩族って、とても長生きしていて物知りだ。

 いつも不思議だったんだ。なぜ、簡単に動けない体なのに、どこから知識を得ているのかって」


 アヤはにっこりと笑い、続けた。


「巨岩族の谷の近くには探索者の村がある。私の故郷だ。ついでに案内するよ。

 ラズレックを連れ帰ったら、皆喜ぶだろう」


 そして、ふふっと笑う。


「きっとラズレックは、うんざりして早く村を出ようって言うはずさ」


 


 アヤがラズレックから聞く話はどれも興味深かった。

 巨岩族の谷へ着くまで七日を要したが、アヤは寝る間も惜しんで知識を得ることを喜んだ。


 


 二人は、巨岩族の谷へ着いた。


 


 アヤが首を傾げる。


「……雰囲気がおかしい。いつもなら、ゆっくりだが二、三体は歩いているのに」


 谷の中央へ進むと――

 大きな岩が、ゆっくりと立ち上がった。


「おお。碧き目の小鹿よ。無事であったか。よかったのお」


 小鹿とはアヤのことだ。

 アヤの五倍はあろうという岩だった。


「何かあったの? おおきな岩よ」


 アヤが問うと、巨岩族は言った。


「多くの人間が挨拶もせず、我が村を横切った。気持ちが悪いものだよ」


 巨岩族は社交的ではない。

 アヤはふと笑った。


「おおきな岩よ。客人を連れてきた。きっとあなたたちと同族か、親戚だと思うの」


 巨岩族はラズレックを見る。


「同族でもないなあ。親戚でもないなあ。きみは誰だい」


 ラズレックも見上げて答えた。


「我が名はラズレックという。私は巨岩族と間違えられたので、そのまま巨岩族と名乗っている」


 巨岩族は首をかしげた。


「似ていないのになあ」


 


 ラズレックは笑い、姿を変えた。

 人の形ではない、岩の姿へ。


 アヤも、人の形でないラズレックを見るのは初めてだった。


 


 巨岩族は驚いた。


「姿が変わった」


 するとラズレックの背後の岩がしゃべった。


「変わった。すごい」


 さらに別の岩も続く。


「変わった。すごい」


 ラズレックを中心に、「変わった」の声が響き渡った。

 谷中の巨岩族すべてがしゃべっていた。


 


 最初の巨岩族が言った。


「きみのようなものは知らない」


 アヤが言う。


「物知りな岩も来て。知識の中では知っているの?」


 群れの奥から、青白く光る鉱脈をまとった巨岩族が立ち上がった。

 ――青い偉大な岩。


「知識の中にもない。しかし、無縁でもない。

 我々の進化ともいうのだろうか」


 


 ラズレックは人の姿に戻って言った。


「私は巨岩族を、今後も名乗っていこうと思う。良いか?」


「名乗るがよい。我らの未来よ」


 ラズレックは頷く。


「ここは居心地の良いところだ。私が動けなくなりそうになったら、ここに帰ってこよう」


 


 アヤが言った。


「ラズレックは雷を食べるのよ」


 青い偉大な岩は、低く唸った。


「……プラズマを変換したのかな。どういう技術なのじゃ」


 ラズレックは答えた。


「プラマエクスという」


 青い偉大な岩は言った。


「話が通じるか。

 しかし我らはお前を知らない。やはり――我ら巨岩族の未来は、お前なのだろう」


 そして告げた。


「これからは『未来の偉大な岩』を名乗るがよい」


 


 大きな岩たちは言った。


「今日は不愉快な兵たちが通った。

 でも未来の偉大な岩も来た。不思議な一日」


 


 アヤが確認する。


「……こんなところを兵が通ったというの?

 私の村に何かあったのか」


「碧き目の小鹿よ。何もないのだ。

 お前の村から遊びに来るものも、知識を聞きに来る子もいない」


 


 アヤが焦り始めた。


「ラズレック。私は村へ急ぎたい。来てくれるか」


 ラズレックは言った。


「急ごう」

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