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探索者

ラズレックとアヤは、大騒ぎの余韻のまま旅に出た。


 アヤが争いに巻き込まれないよう、ティル河の反対側へ向かうことになったのだ。


 


 ラズレックはマントと帽子のおかげで、相変わらず目立ちはするが、

「大きな人がいる」程度の違和感に収まった。

周囲に人が集まってくることはなくなった。


 


 ラズレックは言った。


「アヤ。探索者とは何なのだ。

 この世界では、お前は私のことを理解しているような行動をしばしば見せる。

 それは個人の能力ではなく――『探索者』という存在が何者かということだと思えるのだが」


 アヤは少し考えてから答えた。


「そうだね。探索者っていうのは……過去の知性を探す集団に属する者、かな」


 アヤは歩きながら語る。


「私の生まれた場所は、町っていうより村みたいな小さなところなんだけどさ。

 近くの崖から、よく記憶宝石が掘り出されるんだ。光が残ってる物もあって、けっこうな値で売れる」


 息をつき、続けた。


「そういう土地に住んでいると、他にもいろいろ出る。

 石でも岩でもない、違和感のある――つるつるした素材。

 複雑に絡み合っていて、おそらく何かの道具だと思えるもの。

 透明の板に、蜘蛛の巣みたいな鉄の繊維が結びついたもの……」


 アヤは肩をすくめた。


「ほとんど朽ちてない記憶宝石の箱なんかも出てくる。

 でも不思議なことに、人の骨も動物の骨も出ないんだ。不思議だろ?」


 ラズレックは黙って聞いている。


 アヤは続けた。


「それでさ。記憶宝石の中身を壁に映す魔道具があるんだよ。

 それで映すと……過去の映像が、かすかに映り込む」


 アヤは少し笑った。


「知りたくてね。どうしても」


 その声が少しだけ真剣になる。


「でも魔道具は高い。簡単には手に入らない。

 だから金を使って買い取ったり、交換したり、いろいろな場所を見て回る。

 ……それでも足りない奴がいる」


 アヤは遠い目をした。


「魅惑に負けて、魔道具や記憶宝石を盗む者が出る。

 だから探索者は盗人と呼ばれることが多くなる」


 そして、はっきり言った。


「金が欲しくてすることじゃない。

 抑えられない探究心――それこそが探索者の矜持だよ」


 


 ラズレックは頷いた。


「なるほど。城で盗人と言われた理由がそこか。

 ではアヤ。お前は私を、どのようなものと見る?」


 アヤは悩みながら言った。


「姿を変えられて、大地に溶けて――〈同化〉ができる。

 最初は『過去の叡知で作られた生物』だと思った。

 でも同化を見た瞬間、魔法にしか思えなかった。

 どこかの国が作った、人型の魔法生物じゃないかって……思ってた」


 最後は疑問形だった。


 


 ラズレックは言った。


「私も、自分が何者かを忘れていた。

 だがクラウディアの雷を受けた時――すべてを思い出した」


 ラズレックはまっすぐ前を向いたまま続ける。


「アヤ。私は過去の叡知で作られた人工生命体だ。

 私が作られた時、その世界に人は数人しかいなかった。

 私はその世界の技術の粋を集められた存在だ」


 静かな声。


「ずっと眠っていた。

 おそらく、偶然近くに雷が落ちたのだろう。

 そういう時だけ目が覚め、歩き回り……

 また力尽きた時、岩として眠りにつく。それを繰り返してきた」


 


 ラズレックは続けた。


「私は魔法で動いていないし、使えない。

 私の世界に魔法はなかった。無から有は生み出せなかった」


 ラズレックの瞳が光る。


「だがこの世界の魔法は違う。

 人間は、無から有を生み出している。進化しているのだよ」


 アヤは笑った。


「進化だって?

 ラズレックを作った人間より、この世界の人間のほうが進化してるってこと?」


 ラズレックはアヤを見た。


「そうだ。私はいくつもの世界と文明を見てきた。

 人は生きていた。絶滅寸前までいって――それでも進化を続けた。

 私より長い旅をしている生物なのだよ」


 アヤは素朴に言った。


「それは……すごいな。いろいろな話が聞けるな。

 本当に偉大なものたちの話を!」


 ラズレックは少しだけ口調を柔らかくした。


「話してやるのはやぶさかではない。

 だが旅が終わるころには……この世界の者から嘘つきと言われるぞ」


 アヤは目を輝かせて、ラズレックを見上げた。


「望むところだ。私は探索者だ!」

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