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ラズッレクの変装

大騒ぎとなった。


 城へ入っていくラズレックを、皆が見ていた。

 大人も子どもも見ていた。


 騎士を引きずって城を歩き回った――あの噂は、今や街中に知れ渡っている。


「今度こそ、ただじゃ済まないはずだ」

「クラウディア様の雷が落ちるぞ」


 誰もがそう囁いた。


 


 しばらくして、壮絶な雷の音が響いた。


 皆、悟った。

 ラズレックがクラウディアの怒りに触れたのだ、と。


 黒く焦げた姿を想像し――

 誰もが息を呑んだ、その時。


 


 大理石の光沢を持つラズレックが、颯爽と現れた。


 皆、一瞬静まり返った。


 次いで――大歓声が街を包んだ。


 自分が何に対して歓声を上げているのか、誰にも分からない。

 ただ、ただ。

 その姿は神々しく、祈る者さえいた。


 


 アヤは、この目立ち方は異常だと思った。

 このままでは旅に出られない。

 群衆はラズレックを、街に縛りつける。


(なら――祝祭に変えるしかない)


 アヤは大声を張り上げた。


「さあ! 皆さまのラズレックは無事帰還した!

 クラウディア様の雷は、褒美の“演出”だったのさ!

 ラズレックは褒美を受け取った――次の新たな旅立ちを祝っておくれ!」


 群衆がどよめく。


「さあ、このラズレックに似合うマントを知ってる者はおらぬか!

 金貨を払うぞ!」


 一人の男が手を上げた。


「おらぁ、革のテント職人だ!

 ラズレック様の大きな体なら、この革のテントがマントになると思うがの!」


 アヤは男を指さし、金貨を放った。

 男が受け取る。


 アヤは革のテントを受け取り、ラズレックへ投げた。


 ラズレックはそれを掴み、体に巻いた。

 大きさが、ぴたりと合った。


 歓声が上がる。


 


 アヤは続けた。


「さあ、まだ金貨はあるぞ! 次は帽子だ!

 ラズレックに合う帽子はないか!」


 子どもが自分の帽子を差し出した。


 アヤは笑う。


「ありがとう坊主。でもラズレックには小さすぎるな。

 さあさあ! 誰かおらぬか!

 これからラズレックは旅に出る! ふさわしい帽子はないか!」


 女が叫ぶ。


「祭り用の大きな人形に被せる帽子があるぞ!」


「どこだい!」


 同じことを思った男が、祭りの倉庫から帽子を抱えて駆けてきた。


「それだよ、それ!」


 派手に鳥の飾りがついている。だが、今はこれでいい。


 アヤは男に金貨を渡し、女にも金貨を投げた。

 そして帽子をラズレックへ投げる。


 ラズレックは帽子を被った。

 鳥の飾りが、あの高い身長によく馴染んだ。


 


 アヤは叫んだ。


「さあ、最後の金貨だ!

 誰かラズレックに一番似合う旅の歌を作っておくれ!」


 


 城の高台から、クラウディアとサルヴァンが見下ろしている。


「すごい人気だな」


 クラウディアが言うと、サルヴァンが続けた。


「よろしいのですかな。

 アヤは街の者に、ラズレックが旅に出ることを“納得”させております。

 留められれば軍事的に圧倒的に有利になりますぞ」


「留められればな。できんだろうよ」


「それもそうですな。――おっと、歌が始まりました」


 


 一人の吟遊詩人が、一つのフレーズを歌い始めた。

 皆も合わせて歌う。


 ラズレックはその歌の中にいた。

 街の合唱の中にいた。

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