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一人旅と二人旅

「フリッツ殿。教えてくれ。ティル河の三つの地域――ミラ草原村、カナレ村、ヴァル南耕地は、どのような所なのか」


 ラズレックに逃げる様子はまったくない。

 本気で三地域を治めるつもりなのだ。


 そのことに、フリッツは心穏やかではなかった。

 別に、そこまで深刻な問題を抱えた土地ではない。正直に言えば、ヴァル=ノーデン自治領の端に“追いやった”というのが実情だった。


 だが――もし城主クラウディアが嘘をついていたと悟れば、ラズレックは城へ戻るかもしれない。

 そう思うと、フリッツは嘘をつきとおすしかないと思った。


「私が生まれた時には、すでに仲が悪かったと聞いている。

 簡単に言うと、ティル河周辺は肥沃な土地で、魚も豊富だ。三地域はそれの取り合いをしている」


 フリッツは、指を折りながら説明した。


「ミラ草原村は家畜を飼い、放牧で生計を立てている。

 カナレ村は漁業。

 ヴァル南耕地は農耕だ」


 少し言いにくそうに続ける。


「少々やっかいなのはミラ草原村でな。村とは言っているが、放牧のせいで、普段はあまり村にいない。

 カナレ村の者たちがやってくると、家畜の糞尿が川に大量に流れ、川を汚す。魚の値が下がる」


 フリッツは顔をしかめる。


「それで、カナレ村はミラ草原村を嫌っている。

 ヴァル南耕地も同じだ。家畜が出てきて芽を食べてしまうからな」


(まあ迷惑ではあるが、川も土地も、家畜のおかげで肥えているところがあることもお互い知っている)


 フリッツは心の中で付け足した。


「そうか。分かった」


 ラズレックが言うと、アヤが眉をひそめた。


「なにが分かったのさ。そもそも“治めてみよ”って、終わりがないじゃないか」


 ラズレックは淡々と答えた。


「三つの地域の者たちが、『治まった』と言えばよいのではないか」


 


3日後


「ラズレック。ご飯食べないの? 眠らないの?

 ねえって。そんなに歩いて疲れないの? もう少し休んでよ」


 アヤが延々と愚痴っている。


 フリッツもまた、誓っていた。

 ――やはり、これは人ではない。

 何があっても嘘を突き通し、この存在を城に返してはならない、と。


 


6日後


「ここがヴァル南耕地だ」


 フリッツが言った。


「ここで休めるところは?」


 アヤが食い気味に聞く。


「この先に小さいが駐屯地がある」


「じゃあ行こう」


「ラズレック殿は……」


 フリッツが振り返る。


「もう、はるか先だ。追いかけなくていいのか、フリッツ」


 


12日後


 アヤとフリッツがラズレックを追いかけ、何度もすれ違い、ようやく追いついた時。


 ラズレックは、三つの地域の長と話している最中だった。


 話が終わると、ラズレックは言った。


「治まった。すぐに帰るぞ」


 アヤが驚いて言う。


「ラズレック。何があったか全く分からないけど、治まったなら良い。

 でも帰るのはあと三日待て。お前だけ先に帰ってどうするの。

 フリッツは何も報告できないじゃないか。まずいでしょ」


 ラズレックは頷いた。


「それもそうだな。では三日ほど世話になる」


 そして村長たちに向き直る。


「村長たちよ。このフリッツ殿に、何があったか伝えてほしい」



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