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怒るラズレック

「手柄をどう立てるのだ。戦でも始める気か」


 クラウディアはラズレックに言った。


 ラズレックは静かに首を振る。


「戦は断る。私は人の死を見たくはない。

 アヤ、私は何ができる。手柄になるようなことだ」


 アヤは即答した。


「土木に、治水に、城作り。得意じゃなかったか」


 ラズレックは頷き、クラウディアへ向き直った。


「それはよい。クラウディア殿。困っている土地はないか」


 クラウディアは笑みを深める。


「サルヴァン。困った土地があったな」


 サルヴァンがうなずく。


「ありますな。なんといったかのう。――おお、ティル河の上流が困っておりますな」


 “ティル河”という言葉に、謁見の間の兵たちがざわめいた。


 サルヴァンは言葉をつなぐ。


「ラズレックよ。ティル河は三つの地域――ミラ草原村、カナレ村、ヴァル南耕地が水の利権を争っておる。

 平和に治めてみよ。

 土木や治水の力を使ってもよい。お前のその強さを使って攻め滅ぼしてもよいぞ。」


 アヤが小声で言った。


「受けろ、ラズレック」


(城外に出られれば逃げられる)


 その思いを知る由もなく、ラズレックは答えた。


「クラウディア殿。受けよう」



 クラウディアは即座に命じた。


「見張りとしてフリッツ、行け。

 ラズレックなるものがティル河周辺を治められなければ――お前は全責任を負って死ね」


 そして、笑みのまま続ける。


「ラズレック。ティル河に着く前に逃げたら、フリッツの配下の兵、城門の兵、その家族――皆殺しだ」

アヤの顔から血の気が引いた

 


 ラズレックは一歩、クラウディアへ近づいた。


 騎士たちが一斉に斬りかかる。


 剣も槍も、ラズレックの身体に触れた瞬間――抵抗なく沈み、消えた。

 一瞬のうちに同化し、武器そのものが失われたのだ。


 手応えを失った騎士たちは、自ら体勢を崩して転倒していく。


 ラズレックは振り向きもせず、静かに“排出”した。


 同化した剣と槍の切っ先が、彼の全身から吐き出され、

 クラウディアの眼前――玉座の足元へ突き刺さる。

 

 ラズレックの声は低い。

「クラウディア。待っているがよい。ティル河周辺へ行ってくる。

 その間に誰かを死なせてみろ。

 ――お前自身も同等の報いを受けると思え」


 ラズレックが謁見の間から退出するのを、誰も止められなかった。


 アヤはラズレックの背に続いた。


 


 クラウディアはため息をついた。


「やれやれ……やっと去ったの。恐ろしい存在だったな」


 そして玉座の横へ目を向ける。


「サルヴァン。お前も散々だな」


 サルヴァンの周囲は、鉄の棘に囲まれ、一歩も動けぬよう封じられていた。


「まったく、魔術を使う暇もありませんな。土の魔術生物ですかな」


「そうではなかろう。魔術の気配すらなかったぞ」


 サルヴァンは振り向き、眼鏡越しに笑った。


「・・・・・・あの探索者に聞くこととしますかな」


 


 騎士たちは無力な自分たちと、

 主君が自分たちの剣や槍で殺されかけた事実に、声すら出なかった。


 クラウディアは騎士たちに言い放った。


「騎士たちよ。気にするな。あれはこの世のものではなかろうよ。

 フリッツ、任せてよいか。

 ラズレックの見張りを頼む。この都市から離れればよい。

 あのような“単騎で城を落とせる存在”がいてよいものではない」


「御意」


 フリッツは硬く応えた。


 


 クラウディアは再び頬杖をつき、呟く。


「サルヴァン。また来たらどうする」


 サルヴァンは笑った。


「友人にでもなりますかな。

 対応は間違いましたかな。腹芸など要らぬ――お人よしでしたな。

 人ではなく、魔人ですかな」


 クラウディアは短く言う。


「・・・・・・まあ、城から無事追い出した。良しとしよう。願わくば碌な場所ではないと去ってくれることだが」




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