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次の日、予定通りまだ夜も明けないうちにアルマが訪れる。


アドニスがドアを開けると、アルマが満面の笑みで玄関に立っていた。


「さあ、いざ出陣です。」

アルマが意気込む。

「ふ、大袈裟だね、王宮の敷地内でしょ。」

アルマの言い方にアドニスが笑う。


ミラダがアドニスの後ろから、顔を出してアルマに微笑む。

「おはよう、アルマ。」


「なんて美しい微笑みですか!今の微笑みをいただけたなら私、危険を冒してでも頑張ってご案内しますよ!」


「アルマ、確かに大袈裟だ。」

ミラダが含笑いをする。

「ミラダさまのために頑張ると言っているのに大袈裟はないでしょう。」

「ハハ、お前は誰にでもその調子か。」


二人が打ち解けあっているのを傍で見ていたアドニスは、気持ちが落ち着かずモヤモヤする。



(あれ_なんだか、面白くない……この感情はなんだろう?)



アドニスが、急に湧き上がった複雑な感情を紛らわせようと遠くを見る。


ミラダがアドニスの機嫌が良くないことに気付いて声をかける。


「どうした?行こうか、アドニス。」


「ああ。」


不機嫌さが声にも表れる。


アルマがニマニマして近づいてきた。


「アドニスさま、ヤキモチですか?仲間はずれにされたと思っているんですね。」

アルマは思ったままを口にする。

嘘もないが、空気も読めない。


「ヤキモチなど、あるわけないだろう。」

昨日アドニスが自分を拒んだことを思い出したミラダは、不思議そうにアルマに言う。


「そうですか、まあいいですよ。馬車を調達してきました。アドニスさまの名前で。」

「実家に請求がいくと思うのでお願いしますね。」


アルマのマイペースなところに、思わずアドニスが笑う。


「ふふ、ありがとう。抜け目ないよね。」


(よかった、アルマのおかげで気持ちが晴れた。さっきの気持ちは何だったのかな…)


「それは褒め言葉でしょうね。」


「そう受け取ってもらっていいよ。」


三人は近くの馬車の待合場まで歩いて、アルマの調達してきた馬車に乗りこんだ。


車内は対面式で、体の大きさを考えてアドニスとアルマが並んで座り対面側にミラダが座る。


馬車が走り出す。


アドニスが窓から景色を眺めていると、アルマが楽しそうにミラダに話しかける。


「ミラダさまは、身長が高いですよね!何センチぐらいあるんですか?その美しさなら女性が放って置かないでしょう。」


アルマの問いかけに、ミラダが含み笑いをする。


「背は2メートルないぐらいだ。私は美しくなんかないぞ。」


アドニスはまたイライラした。


昨日、共有したばかりのミラダのコンプレックスをアルマにもさらけ出すんじゃないかと思い、胸がじりじりと焼けるように痛み、持て余した感情でイライラがつのる。


アルマがミラダのコンプレックスを笑い飛ばして、彼を救ってしまうんじゃないかと考える。


(ぼくは、こんな心の狭い人間ではなかったはず。)


窓から外の景色を見つめるアドニスの目つきが鋭くなっていることに、アルマが気付く。


「ほら、アドニスさまやっぱりヤキモチをやいてますよ。会話に入ってこれないくらい。ミラダさま、心をほぐして差し上げてください。」


「どうすればいいのだ?」


「そうですね、キスでも差し上げたらどうですか?私ならそれで機嫌がなおります。」


「なにを勝手なことを__」

横で聞いていたアドニスがアルマを批難しようと口を開いたところに、ミラダが身を乗り出して、対面に座っているアドニスにキスをした。


放心したアドニスが抵抗しなかったので、これで正解なのかと、もう一度唇を押し当てる。


アルマが横で両手を胸の前で組みじっと見ていた。


「美しい人同士のキスは神々しいですね、絵画のようです。」


アドニスがミラダの体を押した。

「ミラダ、もう平気みたいだから…」



アドニスは真っ赤な顔で、口元を手で押さえ俯いた。


(アルマの言う通りだ、イライラしてどうしようもなかった気持ちが嘘みたいになくなった。)


「どうです、私の言ったとおりでしょう。」

アルマが胸を張った。


アドニスが俯いたまま、アルマの方に顔を傾けて言う。

「アルマの言ったとおりだったけど……恥ずかしいな、もう。」


ミラダが今までにない反応のアドニスを見て、目を見張る。


「アルマ、これはもう一度キスをしてもいいのか?」

ミラダは自分の判断に自信がないので、アルマに確認を取る。


「私は特等席で見れて嬉しいですが、アドニスさまはもういっぱいいっぱいのようですよ。」


御者が王宮近くに馬車を止めて、着いたことを知らせた。





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