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アドニスは、ミラダに体力回復効果のあるスープを手渡した。

アルマには、紅茶を淹れて出す。


ミラダが、スープに口を付ける。

「うっ…私のは苦いぞ。匂いからして苦い…」


「ふふ、それちゃんと飲んだら褒めてあげよう。ご褒美に甘いものもあげるよ。」

子供っぽいことを言うミラダを見てアドニスが微笑む。

「くそっ…約束したからな。」


(かわいい、後で褒めて甘やかしてあげよう。)


アドニスがミルダを甘やかすような目で見た。


「可愛いですね、褒めてほしくて苦いお薬も頑張って飲むなんて。」

アルマが思ったことをそのまま口にする。


アドニスは、アルマの遠慮ない言い方に苦笑した。


「それで、白の魔女の花はどこにあるの?」


「そうそう、多分…王宮の敷地内の神殿ですよ。」


ミラダが反応した。

「やっぱりそこか…」


「ミラダもなにか知ってるの?」

アドニスが空になったカップを、ミラダの手から取り上げて聞いた。



「私は、白の魔女の花を手に入れるために、ネフライト王国に来たのだ。獣人国のレーベン辺境伯から情報をもらったのだ。白の魔女の消滅したところに花が咲いているはずだと。それが神殿ではないかとな。」


「それを一株だけで良い。持って帰って、領地で栽培したいんだ。」

ミラダが思い詰めたような表情を見せた。


アルマが得意げに二人を交互に見て話す。

「この間、神殿の掃除に行った時にたまたま見つけたんです。多分まだ私しか気付いてないと思いますよ。」



「王家に知られたら、外に持ち出すのは難しくなるかもね。」

アドニスが顎に手を当てて思案する。


「その前に、一株だけ分けてもらえるといいのだが。」

ミラダが、思い詰めたように話す。


「そうだね……ぼくも欲しいな。」


「アドニスさまは、王家が管理することになっても、言えばもらえるんじゃないですか?」

アルマが不思議そうに聞く。


「いや、森で沢山栽培して多くの人が気軽に手に入るようにしたいんだ。」


「それは、こっそり一株もらって来たほうがいいですね……明日の朝一番に行きましょう!私がご案内します。」


「アルマ、よろしく頼む。」

ミラダがアルマに頭を下げた。


「日が登る前に神殿にこっそり侵入しましょう。楽しくなってきたわ!私、今から帰って色々準備をしておきます。」


アルマは飲み終わったカップをテーブルに置いて、慌ただしく帰っていった。



アルマが帰ったのを見て、ミラダがアドニスの手を引っ張った。


「危ない…」


アドニスがバランスを崩して、ベッドに座っているミラダの上に倒れ込む。


「ミラダ、急に引っ張ったら危ないよ。」

アドニスが小さな子を叱るような口調で咎める。


「さっきのスープを飲めたら甘いものをくれるんだろう。」

ミラダが甘い声でおねだりして、アドニスに覆い被さった。


「ふふ…甘いものをあげるからどいて。」


(甘えたがりだな…今度は()()を教えてみようかな。)


アドニスがミラダの髪に両手を伸ばして、くしゃくしゃと撫でる。


ミラダの瞳が潤んだ。


性急にアドニスの唇を舐める。

「はあ…これが甘くて癖になりそうだ。」


「こら、ミラダ…ぼくは甘くない…」

口を開いた瞬間ミラダの舌がアドニスの歯列を舐める。

「うん……これ以上は、駄目だよ。」

ミラダの息遣いが荒くなり、アドニスが口を閉じようとしても許さない。


アドニスの頭が酸欠でぼーっとしてくる。



「ミラダ、ぼくは男だよ。」

アドニスが酩酊しているような瞳のミルダに告げる。


「わかっている。抗えない、このままもう少し…」


ミラダが唇を押し当てていく。


(このまま流されるのはよくない、良くないけどこのまま流されてしまいそうになるな。ミラダの潤んだ瞳が色っぽくて性別を感じさせないな。困ったな。)


ミラダがアドニスのうっすら付いた腸腰筋に唇を這わせる。


「くっ…やめ……」

突然の快楽に声が、吐息とともに零れ出る。


(このままでは、流されてしまう…)


「はぁ……落ち着こう、ミラダ。」


「お前、なんでこんなに私を掻き乱すんだ…」


「ミラダ…ね、一度離れて落ち着こう。」


「はあ…そうだな。」

苦しそうにアドニスから体を離す。


アドニスがミラダを痛ましそうに見る。


(彼が落ち着くまで、少し離れていよう。ぼくも落ち着こう。)


アドニスは気付かれないように、お手洗いへ行った。



夕食の時間にアドニスは、昨日買ったパンと近くの川で取れた魚をハーブで焼いたものをだした。

ミラダと対面して座る。


(獣人っていうのは、ぼくらと変わらないものを食べるのかな?)


ミラダがテーブルの上の食材をじっとみていた。

アドニスが心配げに聞いた。

「獣人も、ぼくらと同じものを食べるのかな…」


「私たちは、習性は残っているが人と殆ど変わらないよ。お前は、これで足りるのか?もっと食わないから、お前は華奢なんじゃないのか?」

ミラダがアドニスの首や腰を見た。


「これでもしっかり食べている。」

アドニスは少し不機嫌になった。

実家でよく兄に体型のことを散々からかわれていたのを思い出した。アドニスのコンプレックスだった。

「そうか、お前の華奢なのは食事量とは関係なかったか。すまないな、自分の感覚で物を言ってしまった。」

しゅんと項垂れた。


「ごめん、言い方が悪かったな。兄上によく誂われていたから…つい口調が強くなってしまったね。」

ミラダの頭を撫でる。


ミラダの耳が出て、笑顔を浮かべる。


(かわいい……)


アドニスがとっさに目を伏せた。

(これが良くないかも…なんで一々可愛いと思ってしまうんだろう。ぼくは犬好き?)


パンを一口大にちぎって、口に運ぶミラダの食べ方はとてもきれいだ。


「ミラダは……そのな何の獣人なのかな?」


アドニスが魚を取り分けた。


「私か…耳を見てわからなかったか……私は狼の獣人だ。完全獣化できないから…犬と間違えたか?」

ミラダの瞳が虚ろになる。


「ミラダは誰かにそう言われたの?」


「そうだな…私は一人息子でな、ずっと父をがっかりさっせている。犬の仔を拾ってきたとな、みっともない息子だと。今度の任務をやり遂げて、少しは父に認めてもらえるといいのだが。」


「ミラダ…明日、白の魔女の花を持って帰って父上の鼻を明かしてやろう。もしそれでも認めてもらえなければ、ここに戻っておいで。ぼくはミラダの耳をとてもかわいいと思うし、狼の耳を持っているのに、目もくらむような美人さんなんてミラダだけだよ。」


「アドニスは優しい人だな。さっきは無体な振る舞いをして悪かった。もうしないと誓おう。」

ミラダが儚く笑った。










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