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ミラダは、アドニスが差し出した手を引っ張りべッドに仰向けに転がした。


アドニスの視線の先に部屋の天井が見える。


ミラダが口を開いて、アドニスの鼻を甘噛みする。


「ふふ。くすぐったいな、大丈夫…続けていいよ。」


アドニスがミラダの艶のある紫の髪を指ですく。


ミラダの目が見開かれて、アドニスの唇を舐めた。


(本当に犬みたいでかわいい。尻尾がないのが残念だ。)


「ミラダって呼んでいい?」


ミラダの瞳が夢心地のようになる。

「ああ…お前の好きなように呼ぶといい。」


ミラダが首筋の匂いを嗅ぐ仕草が(くすぐ)ったくて、アドニスは首を(すく)めて笑う。


ミラダが夢中になって、アドニスの鎖骨辺りまで甘噛した。



玄関の扉をノックする音が聞こえる。


「ここまで、ミラダ。ぼくから下りて。」


ミラダの目がせつなそうに揺れる。

「ぼくにお客さんだ、言うこと聞いて。まだここに居ていいから。」


ミラダがアドニスを開放した。


ベッドから立ち上がる時、ミラダの下半身にたまたま目がいってしまう。


(あれ……ミラダ興奮していたのか?)


ミラダが我に返ったようで、急いでブランケットで全身を覆い隠した。


ミラダは羞恥で悶ていた。


親愛を示したくて始めたことが夢中になってしまい、それ以上の行為をしてしまったことに自己嫌悪に陥っていた。

しかも相手は人間で、同族でもないことがさらに拍車をかけた。



ミラダは、アドニスが自分の親愛の行為をどこまでも許容してくれるところを思い返した。

アドニスは、中性的な見た目で、体の線も細く華奢で色も抜けるように白い。


アドニスの優しい瞳と包容力に甘えることが、背徳的で癖になりそうだと感じた。





「誰か寝てるんですか?」

「ぼくが、さっき人助けをしていたという証拠だよ。」

ミラダが頭から被せていたブランケットから、顔だけを出した。


「うわぁ…きれいな人ですね。人じゃないみたいだわ。」

小柄な女性が立っていた。


ミラダはブランケットを腰に巻き付けて微笑み、自己紹介をする。

「私はミラダ・シルスタ・ネーベルだ。お前の名は?」


「私はアルマ・ゲレロです。」


アドニスは、ミラダの耳が仕舞われていたのを見て安堵した。


(彼が獣人だということはアルマには黙っていよう。なんとなくだけど、彼が彼女にも親愛の情を示すのが癪に障る…気がする。アルマは気持ちの良い性格の女性だからすぐ人に好かれるし。)


「さ、アルマぼくの煎じた回復薬を持って王宮に戻ってくれるかな?」


「そんな邪険にしていいんですか?白の魔女の花の生息地の情報を持ってきたというのに。」


これにミラダがいち早く反応した。


「それは、本当か?!」


アルマに詰め寄ったせいで、ブランケットがはらりと落ちる。


アルマが目を丸めた。

「あ、あ、あの。下、下!」


アドニスが、アルマの目を手のひらで覆い隠した。


「ミラダ、アルマはこれでもまだ未婚の女性だから。アルマは自分で目を隠していて。」


アドニスはアルマの目を覆っていた手を離し、ミラダにブランケットを巻きつける。


「そうか、すまないな…シャツは身に付けていたものだから…うっかり、忘れていた。」


「もういいですか〜?」

自分で目隠したアルマの暢気(のんき)な声がする。

「わたし、今日は帰りましょうか?」

アルマがようやく気を利かせる。


「いや、待って。ミラダも、『白の魔女』の花の情報を知りたがっているみたいだから教えてくれる?」








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