表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

04

クレイン王の統治は苛烈だった。彼は自らの権力を強化するため、忠誠を疑う貴族たちを次々と粛清した。重税が課され、民衆の不満は日に日に高まっていった。しかし、強大な軍事力を背景に、クレイン王は反抗の芽を容赦なく摘み取った。


表向きは繁栄し続けるアーラント王国だったが、その内部では腐敗が進行していた。クレイン王の側近たちは贅を尽くし、民衆の富は彼らの手に流れ込んでいった。


修道院のアルバートは、リチャード修道士がこっそりと伝える情報を通じて、王国の状況を把握していた。


「陛下、悪いニュースです。南部のダンフォード伯爵が反乱を起こしましたが、クレイン王の軍に鎮圧されました。伯爵家は根絶やしにされたそうです」


「そうか、焦りは禁物だと伝えていたのだが」


アルバートは悲しげに頷いた。


「しかし、良いニュースもあります。『例の品』が目的地に到着しました」


その言葉に、アルバートの目が輝いた。


「そうか、時は熟した」


彼はリチャードに向かって小さく頷いた。若い修道士は理解を示し、部屋から出ていった。


アルバートは床板を静かに持ち上げ、そこに隠された小箱を取り出した。中には彼の王としての印璽と、数通の手紙が入っていた。


「十年の計、今こそ実を結ぶ時だ」


彼は一通の手紙を書き上げると、それをリチャードに託した。


一方、王都では、クレイン王が大規模な宴会を開いていた。戴冠一周年を祝う盛大な催しで、国内の貴族たちはもちろん、周辺諸国からも多くの使節が訪れていた。


「我がアーラントの繁栄を祝して!」


クレイン王は金の杯を掲げた。宮廷に集まった貴族たちも杯を上げ、歓声を上げた。彼らの多くはクレイン王の恩恵を受ける者たちだった。


しかし、その華やかな宮廷の影で、密かな動きが始まっていた。


「陛下、緊急の報告があります」


宴会の最中、一人の近衛兵がクレイン王の耳元でささやいた。


「何事だ?今は宴の最中だぞ」


「東部国境から急報が入りました。エルドニア王国が大軍を率いて国境を越えたとの情報です」


クレイン王の顔から血の気が引いた。エルドニアは東の大国であり、以前はアーラントの同盟国だった。しかし、クレイン王が権力を握って以来、関係は悪化の一途をたどっていた。


「馬鹿な!なぜ事前に情報がなかった!諜報部は何をしていたのだ!」


クレイン王は激怒した。宴会は急遽中断され、緊急の軍事会議が開かれた。


「エルドニア軍の進軍速度は驚異的です。すでに国境から五十マイル地点まで到達しています」


軍事顧問の報告に、クレイン王は顔をゆがめた。


「我が軍の準備状況は?」


「北部の大半の兵力はグラーストニア国境に配備されていますが、驚くべきことに彼らは全く抵抗していません。実は国境に新たな砦は建設されていましたが、それはグラーストニア側ではなく我々の側だったのです。どうやらグラーストニアの内通者がいるようです。南部の部隊を急遽向かわせていますが、両軍を止めるには完全に力不足です」


クレイン王は拳を握りしめた。「なぜエルドニアが今になって攻めてくるのだ?奴らには我が国を攻撃する理由などないはずだ!」


その時、王室顧問の一人が声を上げた。「陛下、エルドニア王室との間に何か問題があったのではないでしょうか?」


クレイン王は顔を青ざめさせた。彼はエルドニア王女との婚約を一方的に破棄していたのだ。それは旧王アルバートの時代に結ばれた約束だったが、クレイン王はより有利な同盟を求めて別の国の王女と婚約していた。


「そんなことで戦争を始めるわけがない!他に理由があるはずだ!」


クレイン王は怒りに任せて叫んだが、その声には不安が混じっていた。


その夜、王都に更なる衝撃が走った。北方からグラーストニア軍が侵攻を開始したのだ。クレイン王の最大の軍事力が配備されていたはずの北部国境が、ほとんど無抵抗で突破されたという信じがたい報告が届いた。


クレイン王は絶望的な状況に陥った。東西から大軍に挟まれ、王国の防衛線は次々と崩れ去っていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ