03
「王が暗殺された!」
その噂は瞬く間に王国中に広まった。しかし、真実はそれほど単純ではなかった。アルバート王は死んではいなかったが、毒によって重篤な状態に陥っていた。彼の意識は朦朧とし、国政を執る能力はすでに失われていた。
クレイン公爵は素早く行動した。彼は他の有力貴族たちを集め、緊急評議会を開いた。
「我が国は危機に直面している。王は意識不明の重体であり、明確な後継者も指名されていない。この非常時に国を導くのは我々の責務だ」
クレイン公爵の言葉に、多くの貴族たちが同意した。彼らの多くはすでにクレイン公爵に買収されており、残りの者たちも恐怖で沈黙を守っていた。
評議会は素早く決定を下した。アルバート王が回復するまでの間、クレイン公爵を摂政として任命するというものだった。事実上のクーデターだった。
アルバート王の側近たちは抵抗を試みたが、クレイン公爵はすでに王宮の警備を掌握していた。ヘンリー宰相は「王への謀反の罪」で逮捕され、騎士団長は「逃亡中に射殺された」と発表された。
クレイン公爵の摂政就任から一週間後、アルバート王は「健康上の理由」で正式に退位させられた。公爵は「王国の安定のため」という名目で、自らを新たな王として戴冠した。
かつての王は、王都から遠く離れた修道院に幽閉された。彼の周りには監視の目が光り、外部との接触はすべて禁じられた。アルバート――今では単なる老人に過ぎない彼は、修道院の小さな部屋で日々を過ごすことになった。
「こうして終わるとはな」
窓から見える夕暮れの空を眺めながら、アルバートはつぶやいた。彼の表情には諦めと悲しみが混ざっていた。
修道院での日々は単調だった。朝の祈り、質素な食事、そして読書と瞑想。アルバートに許された活動はそれだけだった。時折、クレイン――今や新王となった男が派遣した使者が訪れ、彼の健康状態を確認した。それは表向きの理由であり、実際には彼がまだ生きていることを確認するためだった。
「アルバート様、お薬の時間です」
若い修道士が部屋に入ってきた。彼は表向きは新王に忠誠を誓う修道院によって選ばれた世話係だったが、実はアルバートの最後の忠臣ロドリックが派遣した密偵だった。
「ありがとう、リチャード」
アルバートは静かに薬を受け取った。それは体を弱らせるための薬だと彼は知っていた。クレイン王は彼が自然死するのを待っているのだ。
しかし、リチャードが部屋を出た後、アルバートは薬を窓から捨てた。彼はすでに三ヶ月間、同じことを続けていた。
「まだだ、まだ終わりではない」
アルバートの目に、かつての鋭さが戻ってきた。彼は修道院の古い本棚から一冊の本を取り出し、その中に隠された手紙を確認した。
「計画は順調に進んでいる。もう少しの辛抱です」
署名はなかったが、アルバートはそれが誰からのものかを知っていた。彼の最後の忠臣たちは、まだ生きていたのだ。