思い出と親戚宅
西日の路地裏には
季節通りに早めの梅が咲き
雀の止まり木として機能している
口煩いおばさんに挨拶をした後
突き当たりの道に出る
畑しかないだだっ広い空間を横目に
たまに通る車を気にした
右側には側溝があり
こちらと向こうを分けていた
そういえば
手を繋いでいたと
なんとなく思い出した
路側帯だけの道路を歩き続ける
靴の紐のねじれ
青くさい行動は
大人になるにつれて
蒼くさくなるのだろうか
それとも
常にに新鮮だから
青いままであるのか
余計な考えは
陽がもっと沈んだ頃に
冷たい風で吹き飛んだ
これも知っている
「寒いね」と言った気がした
変わらない風景には
変わってしまった存在を目立たせる
魔法のような形があり
歩くスピードの違い
見える物の違い
時間の違い
興味の違いを露骨に表し
作りかけのプラモデルのように
箱の中でカラカラ鳴るのである
自転車に乗った中学生が
挨拶とライトと一緒に通り過ぎて
また静かになった
思い出の中だけが
今もお互いに五月蝿い
足先まで冷たくなった頃
目的地の街灯が見え
少しだけ足早になる
肩かけのボストンバックは
振り子運動をしながら
身体に密着してくる
漸く重さを自覚したのだ
玄関周りは変わらず
幼少期の思い出のままで
一緒に釘を打った木のベンチが
そのままになっていた
呼び鈴は鳴っただろうか
記憶にない
呼び鈴を押すと音が鳴り
中から聞き慣れた声がした