98話 嫌な再会
「全体!整列!」
ザッ!
僕たちが馬車を降りるタイミングで兵達は馬車から会場入り口までひかれたレッドカーペットの両脇に整列し、道を作った。
「敬礼!」
僕たちが進むと全員が一斉に敬礼した。
何度も見た光景だが改めて圧巻だ。
「お待ちしておりました。カーナ殿下、リール嬢」
僕たちが馬車を降り、兵達の作った道を進むと係が待っていた。
前回、お忍びで行った時とは違い礼装を着た使用人だ。
そもそも前回とは馬車を停めたところすら違う。
前回は平民など一般客が使う入り口だ。
今回はVIPと海外使節・貴族の身が使える特別入場口だ。
「歓迎感謝します」
「では早速第一皇子殿下がお待ちですので参りましょう」
「そうですね」
僕たちは係に連れられて歩き始めた。
「あ、ここから先はVIPエリアになりますので護衛は1人につき最大2人までです」
これは聞いていない。
可能ならば100人くらい引き連れて第一皇子の席を包囲してやろうと思っていたが禁止と来たか。
「そんなの聞いてn、、」
「わかりました」
「殿下!」
リールが異議を申し立てようとしたところを止めた。
リールは不服そうだ。
まあいつもは自分が僕を護衛して絶対の自信があるが今回に至っては選手として離れることになるからな。
当然警備面で不安があるだろう。
「大丈夫、エレナさんを連れて行くよ。エレナさん、一番強い者を一人選抜して」
「はっ!」
「、、、まあエレナさんなら信頼できるでしょう。頼みました、エレナさん」
「了解しました。必ずお守りいたします」
「では私は副官を2人連れて行きます」
「じゃあ大隊長、総員終わるまで闘技場を囲んで待機」
「はっ!了解」
大隊長にそう言うとすぐに兵達は会場全体を包囲するように散らばった。
「準備できました。行きましょう」
「か、かしこまりました。」
係は見たことのないほどの大軍とその練度に驚きつつも僕たちを案内し始めた。
席に向かう途中この前来た時にも聞いた説明をまた聞かされた。
どうやら僕たちが予選にお忍びで行ってたことはばれていないようだ。
「こちらになります」
そう言って案内されたのは一番見晴らしの良いひときわ豪華な席だ。
「こちらは皇族方専用の席になりましてこの奥で第一皇子殿下がお待ちです」
「わかりました。では行きましょう」
係が重厚な両開きの扉を開ける。
扉が開き切ると奥には何人もの取り巻きと使用人を片隅に置いた男が一人立っていた。
「ようこそ、我が妹よ」
第一皇子だ。
相変わらず無能そうな顔に権力にしか興味なさそうな取り巻き。
やはり何度見ても変わらないか。
「招待ありがとうございます。第一皇子殿下」
「そんなよそよそしくするなよ。我々は兄弟じゃないか」
白々しい。
事実、こんな奴と兄弟だということがむかついてたまらない。
「それよりその服はなんだ?ドレスじゃないのか?」
第一皇子は僕の軍服を見て言った。
「北部軍の軍服です。”公式の場”であり、武芸を極める場所ということで着てきました」
僕は公式の場ということを強調した。
北部軍が公式に僕を支持しているということを表すためだ。
「、、、君も女性だ。美しさを極めたいとは思わないのか?」
第一皇子が言ってきた。
美しさ、、、興味ないな。
「私は美しさより強さを求めます。美しさは確かに他人を魅了し、力を得れるかもしれませんがそれは所詮他人の力を操れるからに過ぎない。強ささえあれば自分で好きなように好きな物・人を叩き潰せます」
僕はきっぱりと言った。
恐らく第一皇子が求めた答えではないだろうし方向性も違うだろうがちょうどいいし僕という人間の性質を知ってもらおう。
「そ、、そうか、、、」
僕から物騒な返答が帰って来て少し動揺すると第一皇子は話をつづけた。
「久しぶりだね。リールと言ったか」
「はい、お久しぶりです。第一皇子殿下」
「何とか予選を勝ち上がってきたようだが結構運がいいんだな、君は」
「そうかもしれませんね」
早速二人の間には火花が散り始めた。
今にも殴り合いそうな雰囲気だ。
「私の騎士はすでに決勝者専用の待機室で待機している。そんなに戦いが好きというならば勝ち上がって戦うがいい。まあそんな貧相な体では到底むりだと思うがな」
「それはどうでしょうね」
「ま、まあ、二人とも、結果はすぐにわかります。今はお互い準備するべき時間では?」
僕が慌てて、二人を落ち着かせる。
「、、、そうだな」
「そうですね。了解しました」
幸い二人とも落ち着いて即時開戦は避けられた。
翌日北部軍近衛隊隊長が部下を引き連れて第一皇子の屋敷を包囲なんて新聞に載ったら目も当てられないからな。
「では妹よ。今日は試合を見るのに良い席を用意した。ここだ」
そう言って僕たちをドアの前から外にあるバルコニーに案内した。
そこには金と宝石で装飾された玉座のような椅子が2つあった。
そこからは闘技場全体がよく見える。
「父上の玉座を作った職人が作ったものだ。私の財を惜しみなくかけた」
「とても良い席ですね」
そう言って僕たち一行は座った。
リールにも椅子が用意されていたが警備上問題があると言ってリールは断った。
まあ当然のことだ。
大会が始まるまで僕の護衛はリールが担当しているからすぐに剣を抜ける状態じゃないといけない。
軍の規則にも書いてある。
「さて、もうすぐ始まるな。騎士たちの戦いを見届けようではないか」
「そうですね」
そう言って大会は始まった。
次回投稿は火曜日になります。
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