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94話 公国の現状

「活気あふれる風景を見て忘れかけてたけど思い出したよ。やっぱりここは南部なんだね」

「そうですね。私も忘れかけていました。気を付けなければいけませんね」


 僕の言葉にリールも同調する。


「ハンナ、詳しく聞かせて」

「かしこまりました。確かに北部にはこんなことありませんもんね」


 ハンナが歩きながら話し出した。


「帝国南部含む大陸のほとんどの地域ではご存じの通り王侯貴族の権力は絶対です。平民の人生は彼らの一言で左右できます。特に平民に対して貴族は何をしても基本的に合法です。一部の官僚などに対しては危害を加えることは禁止されていますが何もない平民にはどんなことをしても良いのです」

「ずっと北部で育ってきたからそもそもそんな感覚ないや」

「そうですね」


 リールも同意する。


「実は公国は南部諸国の中では珍しい穏健派国家でして基本的に平民と貴族の関係は北部と同じです。なのでお二方の気持ち大体は理解できます」

「そうなんだ、公国が穏健派なんて知らなかったよ」

「まあ父上が殺されて私が売られてからは親戚達が穏健主義を捨てて苛烈な身分制を敷いているらしいのでそう思われるのも仕方ありません」

「そっか、、、」


 なんとも言えない気持ちになった。

 ハンナは見た目こそ公女だが実際は数週間前まで没落した奴隷だったのだ。

 しかも父が暗殺されて親戚に売られたのだ。

 改めて彼女の人生が過酷なものだと思った。


「気を使わなくて大丈夫ですよ。私も過去ではなくこれからに目を向けているので」


 ああ、彼女は強い。

 そう確信した。 

 

「わかった。じゃあハンナの凱旋が早く、より華々しく実現できるように努力しなきゃね」

「ありがとうございます」


 僕たちはその後席に戻った。

 

「ちょうど第一試合が全て終わったみたいですね」

「だね。リールは次いつだっけ?」

「私は変わらず第4ブロックなのでもう少し先です」

「なら一緒に食べよう。結局外では注目されてシチューしか買えなかったけど頼めばいいし」

「わかりました。いただきます」


 外にいる係に頼んで肉料理をいくつか持ってきてもらった。

 

「剣に力がこもりすぎですね。振り方にメリハリがありすぎる」

「だね。相手は逆に力がこもってない。あれじゃ威力は期待できない」


 食べながらリールとフィールドで行われる試合を見ていた。

 何人も見たが期待できそうな選手はいなかった。

 これじゃあリールの相手は誰もできそうにないな。



ー-------



「では行ってまいります」

「いてらっしゃい」


 しばらくしてリールは第二試合のために選手待機場に向かった。

 今回は貴族用の待機室だ。

 本人曰く一般の待機場にも特に面白そうな選手はいなかったらしい。


「そういえば明日の決勝は第一皇子が来るそうです」

「ああ、そっか。忘れかけてたけどこれ第一皇子の大会だからね」


 明日リールの戦いを見たら第一皇子はどんな顔をするだろうか?

 楽しみだ。


「せっかくだから明日も一般客として観戦しよう」

「そうですね。殿下が見ていると驚き顔も見られないでしょうし」



ー-------



「これで3回目か」

「はい、第一試合も合わせると3回目ですね」

「やっぱりわかってはいたけど一方的だね~」

「はい」

「2試合目からは第一試合の惨状を見て不利になると死ぬ前に即降伏しちゃうしつまんないや」


 あれから数刻、第二試合も難なく通過したリールは今第三試合を終えた。

 第二試合、第三試合ともに選手が第一試合のように惨殺されることを恐れて一度剣が触れると即降伏した。

 

「降伏の速度だけは北部兵の誰にも勝るね」

「ハハ、彼らも死にたくはありませんからね」

「あ、そうだ」

「なんでしょう?」


 エレナが首をかしげる。


「エレナさん、僕のかばんを取ってくれる?」

「かしこまりました」


 エレナさんからかばんを受け取ると中から地図を取り出した。


「計画立案は順調らしいから本人から公国での作戦を聞いてみたくてね」


 ハンナは僕が出す仕事と並行して公国を取り戻すための作戦も経てている。

 せっかくだから時間もある今聞いてみたい。


「かしこまりました。まだ大枠しか出来上がっていないですがそれでよろしいのでしたら説明できます」

「構わないよ」

「では説明させていただきます」


 そう言ってハンナは話し出した。


「まずは公国の現状から、殿下に指揮権をお借りした北部軍の諜報部隊で大体の内情は把握できました。」


 ハンナには僕直属の諜報部隊をいくつか貸している。


「公国を現在支配しているのは私の叔父です。そのほかにも父の暗殺に協力した国内の有力貴族が幅を利かせています。先ほど言った通り穏健主義を捨て苛烈な身分制を敷いています」

「軍はどうなっているの?正当な後継者であるハンナの追放を見て見ぬふりしてたの?」

「軍の指揮官はクーデターが起こった時点で叔父に買収されていました。買収された指揮官はもともと小規模だった公国の正規軍を父に報告せず更に縮小させました。それと同時期に叔父の家と有力貴族達は私兵団を拡大させて正規軍より大規模かつ精鋭に仕上げました」

「なるほど、北部では軍が巨大すぎてそもそもそんな心配はないけど小規模な軍の国だとその心配があるのか」


 北部ではもしどこかの貴族が巨大な私兵団を結成してもそこに30万の訓練を受けた精兵が立ちふさがるためクーデターは不可能だ。

 だが公国では少数精鋭を基軸にして小規模な正規軍しかもっていなかった。

 指揮官が買収されれば容易にクーデターが可能だろう。


「クーデターが成功した後は正規軍は解体されて叔父と有力貴族の私兵が公国の軍とされています。私兵団の規模は今も拡大していて未だ叔父に反発する父と特に仲が良かった貴族を武力で制圧するつもりです」

「じゃあその貴族を支援するところから始まるね。その貴族の支援は間に合うの?」

「はい、今回説明する作戦はそれの大枠です」


 そう言ってハンナは公国解放のための作戦を話し出した。


次回投稿は火曜日になります。


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