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93話 帝都の実情

「勝者、、、リール・フォン・フォーク!」


シーン、、、


 会場は審判の声の後静まり返っていた。

 当然だ。

 絶対的だと思われていた帝都のチャンピオンが北部から来た少女に惨殺されたのだから。

 観客は恐怖・驚愕しフォル・バスク優勝に賭けていた奴は怒っているだろう。


トットッ


 結果は出た。

 私は後ろを向いて選手待機場に戻り始めた。

 私に笑顔を向けているのは最上段にいる殿下と部下たちだけだ。

 ハンナさんは私の実力を初めて目の当たりにして少し驚いているようだ。

 

「まあ、全力を出し切る前に死んでしまったが初戦だしこんなものでしょう」 




ー-------





「あれが、、、リールさんの実力、、、」


 僕の横でハンナは驚愕していた。

 

「強いとは思っていましたがあそこまでとは、、、それに途中性格変わってませんでした?」

「言ったでしょ?リールは北部でも有数の戦闘狂だって、一度戦い始めれば僕が止めるか相手を殺すまで止まらない。むしろ楽しんでやってるんだよ」

「いつものリールさんからは想像できませんね」

「まあリールは戦場と日常でだいぶ違うからね」


 

ー-------




トントンッ


「どうぞ」

「失礼します。殿下」

「お帰りリール。おめでとう」


 勝利から少し、

 勝者であるリールが帰ってきた。


「ありがとうございます。今回は相手が弱すぎたので賞賛いただくほどのことではありませんよ」

「そんなことないですよリールさん。おめでとうございます」


 ハンナも言う。

 

「それにしてもやっぱり性格変わってますよね」

「そうですか?」


 ハンナに指摘されるが自覚はないようだ。


「そんなことよりリールまだお昼食べてないでしょ。次の試合までまだあるしどっかに食べに行こうよ」

「いいですね」

「え?殿下まだ食べる気ですか?」

「当然だよ!」


 ハンナはさっきまでたらふくスイーツを食べていた僕の胃袋を疑っていたがそれはさておき席を立ってきた時の出店街に食べ物を探しに出た。


「リールどんなのがいい?」

「私はなんでもいいですよ。」

「じゃあ適当に回ろう。今日は護衛の人数も少ないから動きやすいし」

「あまり離れないでくださいよ。ここは人が多いので」


 エレナさんが言う。

 確かにここは人が多い。

 大会だからだろうが北部ではそもそも軍以外でこんな人が集まることは不可能だからちょっと新鮮だ。

 

「あ、あれおいしそうじゃない?」

「いいですね。行ってみましょう」


 闘技場前の出店でおいしそうなシチューの店を見つけて行ってみる。

 

「これください」

「はい、、、え?!貴族様!?」


 出店の主人は注文しに行ったハンナの服装を見て驚いた。

 確かにここらへんには貴族らしい人は少ない。

 まあ治安もそこまでよくないし貴族用の出入り口は別にあるからな。


「それがどうかしました?」

「あ、いえ!すぐに用意いたします!」


 店主は慌てて準備しだした。

 

「お~おいしそう」

 

 近くで見てもおいしそうなシチューだ。

 ヴェスターで学んことだが本当においしいものはこういう安い店にあるものだ。

 まあヴェスターの場合安いと言ってもこの20倍の値段だが。

 

「ヴェスター以外で出店に来るのは初めてだよ」

「そうなんですか?」

「うん、そもそもヴェスターと北都以外の都市にはほとんど行ったことなかったからね。ずっと戦場か出店もないような小さな村を行ったり来たりしてたから。ハンナは?」

「私は公国で何度か祭りを見て回ったことがあります。お父様が生きている頃は公国も治安が良くて北部には負けますがみんな優しかったので。まあ今では経済が低迷してみんなの心も荒れてますが」

「大丈夫、これから取り戻して再建すればいいよ」

「ありがとうございます」


 ハンナから公国の話を聞いていると出店の店主がシチューを2杯木の皿によそって持ってきた。

 

「お待たせしました。東部産キノコのシチューです。おい、君受け取ってくれ」


 そう言って店主は僕に渡そうとして来た。

 どうやら僕をハンナの付き人か何かに思っているのだろう。

 今僕はヴェスターでいつも着ていたワンピースを着ている。

 このワンピース自体実は結構希少な布でできていて作ったのも北部の名匠の高級品なのだが見た目はただの質素なワンピースだ。

 それに対してハンナは貴族っぽい服装をしているし僕が間違えられるのも無理はないだろう。


「あ!私が受け取ります」


 ハンナが慌てて受け取ろうとする。

 

「しかしご令嬢に渡すのも、、、」

「おい、貴様、、、」


 気づいたときにはすでに真後ろに強烈なオーラが漂っていた。

 リールだ。


「間違えるとはいい度胸だな」

「間違え?このご令嬢の従女なんじゃ、、、」


 案の定誤解していたようだ。

 

「違います。この方は私の仕える方です」


 ハンナが言う。


「も、申し訳ございませんでした!」


 店主が状況を理解したのかものすごい勢いで謝る。

 しまいには土下座しだした。


「どうか命だけは!」

「え?!」


 店主の口から想像もしてなかった言葉がでる。

 もしかして僕が殺すと思ってたの!?


「こ、殺さないよ!ほら!リールも下がって!」

「はッ」


 リールが下がる。

 

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

 今度は店主が泣きながら感謝してくる。

 何なんだ。


「とりあえず行こうハンナ」


 適当にお金を置いて素早く立ちさった。

 多分あれで足りるだろう。


「殿下はお優しいですね」

「え?」

「無礼を働いたものを処罰しないなんて」

「あんなので処罰とか盗賊じゃあるまいし」

「いえいえ、帝国南部では平民が貴族に無礼を働いたらその場で処刑なんてざらですよ」


 ハンナがけろっとした顔で言う。

 

「北部ではそんなことありえない、、、そもそも無礼とかいう概念が式典とか公式の場以外ない、、、」


 これだから南部は野蛮だ。

 あらためて文化の違いを思い知った。

次回投稿は日曜日になります。


読んでくれてありがとうございました!




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