89話 落胆
「各国VIP並びに帝国貴族の方々、今回はこの大会に足をお運びいただきありがとうございます。今日は1日目、予選です。この大会では実力のみが真実を語ります。真の強者をご覧あれ!」
フィールドでは司会が対戦相手発表の前に場を盛り上げている。
にしても”実力のみが真実を語る”とはよく言えたものだ。
貴族や各国の推薦選手を優遇しておいてそんな嘘がよく吐ける。
第一皇子とはまだ1回しかあっていないし帝都に来て間もないが無能ぶりは少しづつ透けてきている。
「リールはどんな対戦相手がいいと思ってるの?」
「そうですね、、、やはり強い相手と戦いたいです。もちろん必要ならば全力を出してでも勝利は獲得しますがせっかくの機会なので」
「やっぱりそうだよね。帝国南部に強者がいないことはもうわかってるけど諸外国にはいるかもしれないしね」
「はい、できるならば少しでも苦戦させてくれる相手がいいです」
「それはちょうどよかった。リールの相手は少なくともブロック内で一番強い選手だよ」
「何故わかるのですか?」
「そりゃあ第一皇子の顔を見てれば分かるよ。第一皇子あの時結構むかついてたから最初から潰しにかかってくるだろうしね」
実際第一皇子はリールと話した時結構むかついていた。
周りに自分に歯向かう人がいないからなのだろうが彼自身ストレスへの耐性がないのだろう。
「この大会はほぼ第一皇子の独裁運営みたいだから対戦相手操作なんて簡単だろうしね」
「そう言うことですか。でも確かにちょうどよさそうですね!」
リールはご満悦だ。
さすがは北部有数の戦闘狂と言ったところか。
「お二方、そろそろリールさんのブロックの発表です」
「おっ遂にか」
フィールドではすでに対戦相手発表を司会がしていた。
ちょうどリールがいるブロックに入ったところだ。
「では第4ブロックの発表です!第4ブロック第一試合はフォル・バスク対リール・フォン・フォークです!」
会場には少しざわめきが広がった。
「そう!皆さんがお考えの通りフォル・バスクと言う名!この闘技場でいつも行われている闘技で無敗を誇る帝国闘技チャンピオンです!」
チャンピオンか。
結構最初からとばしてくるな。
「対する相手は北部2大公爵家フォーク家の令嬢であり今大会唯一の女騎士です!どちらも実力者であることには疑いようがないでしょう。皆さまお楽しみに!」
司会は言い終わった後こちらをニヤリと見て来たような気がする。
やはり第一皇子の指示か。
「チャンピオンですか、、、面白そうですね!」
まあリールはボコボコにする気満々だけど。
「女騎士?」
「大丈夫なのか?チャンピオンだぞ?」
「実力者と言っても女ですぞ。これは一方的になる気が、、」
「チャンピオンは過激な戦いをすると聞くフォーク家はもしかしたら後継者を失ったかもしれないな」
「そもそも棄権するのでは?」
わずかに埋まっていた特級席からはそんな声が絶えない。
「チャンピオンか~過激な戦い方だってよ」
「楽しめそうです」
一応確認してみたがにっこにこで楽しさを伝えてくる。
これはチャンピオンにあとで謝らなきゃな。
「さて、無敗記録をかけて戦ってきて!」
リールは軍の大会に毎回参加していずれも無敗だ。
まあ実戦で無敗なのだから当然だろうがこれで今回の試合はどちらも無敗ということになる。
「はい、行ってまいります!北部に栄光を!殿下に勝利を!」
リールは楽しそうににっこにこで北部式の敬礼をした後席を出て行った。
次会う時はもっとにこにこになっているだろうな。
「さてと、せっかくの帝都の大会だ。楽しめるだけ楽しもう!」
「はい!」
隣に座るハンナと一緒に楽しむ宣言をした。
それと同じくらいに第一ブロック第一試合が始まるのだった。
この予選ではリールがいる第4ブロック含め6ブロックがあり、注目試合以外はブロックごとに8試合同時進行で行われる。
各ブロックごとに本選出場人数が割り当てられておりリールのいる第4ブロックは参加者100人に対して6人だ。
中には2,3人のチームで参加してる人もいてその人たちは予選はチーム同士で当てられて本選では個別に出場する。
「私決闘は初めて見ます」
ハンナがそう言った。
意外だ。
奴隷だった時期にひと悶着見ててもおかしくないがまあ買い手の層を想定して丁寧に扱われてたのだろう。
それでも結構ひどい目にあったと思うが。
「ならよく見てみるといいよ。戦いは見ていて飽きない」
ヴェスターではまだ剣を触れないくらい小さい時から毎日のようにみんなの訓練戦を見学してきた。
僕も一般人からすれば戦闘狂の部類に入るんだろうけど恐らくそれが原因だな。
「あ、選手が出てきましたよ」
「おっ!やっとか」
前調べしてきたハンナからいろいろ教えてもらった。
第一試合は大会の開会を告げる試合と言うこともあって注目選手が配置されたらしい。
隣国の主席騎士と帝国の実戦経験のある騎士だ。
「うおー!」
「いけ!」
「そこだ!」
会場は熱狂した。
選手が剣を振るたびに歓声が上がり応戦している選手にダメージが入るとどよめいた。
「すごいですね!殿下が見ていて飽きないとおっしゃった理由もわかりました」
「、、、違う」
「え?」
「、、、はぁ、、、」
「殿下?」
正直落胆した。
「あんなの戦いじゃない」
「え?それはどういう、、、」
一国の主席と実戦経験ある騎士だと聞くから白熱した戦いを見せてくれると思ったのに、、、
「ハンナ」
「はい」
「あれは戦いじゃない。遊びだよ」
次回投稿は日曜日になりそうです。
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