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87話 大会会場

「では行ってまいります」

「うん、僕たちも始まるまでには行くから」

「かしこまりました。殿下に勝利をお見せできるよう最善を尽くします」

「うん、まあそう気負わずせっかくの国際大会だから楽しんできて」

「はい。ありがとうございます。では」

「うん、行ってらっしゃい」


 そう言ってリールは馬に乗った。


「出発!」


 ヒヒーンッ!


 リールの馬が出発すると後ろからリールの部下たちの馬も続いて出発した。

 僕の社交界デビューから数日、今日は決闘大会当日だ。

 すでに帝都の闘技場には各国から代表団が到着している。


「そういえばリールは一般部門で参加したんだよね?」

「はい、そうだったと思います」


 一緒にリールを見送っていたハンナが答える。

 今回の第一皇子の大会は予選と本選に分かれている。

 予選は一般と特別枠に分かれている。

 一般は推薦状のいらない誰でも参加可能な枠なのに対して特別枠は貴族や各国から推薦された者達が優先的に参加するものだ。

 一般枠の者達は最低でも3回戦わなければならないのに対して特別枠は1回勝てば2日目の本選に行ける。

 しかも比較的弱い対戦相手に当てられるため特別枠のほとんどは本選に行ける。

 「最強の実力を持つ戦士を決定する」とか唄っておいて結局は血筋と後ろ盾でほとんどきまる。


「しかし何故一般枠で参加されたのでしょう?」


 ハンナが聞いてくる。

 今回の大会で第一皇子からは招待状をもらっているしそもそもリールは騎士だが北部の2大公爵家の令嬢だ。

 やろうと思えば最優先で決勝まで0戦で行けた。


「たぶん戦いたかったんでしょ」

「?」


 ハンナが首をかしげる。


「実はリールはいつも隠しているだけでエレナさん並みの戦闘狂だからね」


 そうだ。

 リールは表に出さないだけで実は戦闘狂だ。

 王国軍と常に対峙する北部軍の中枢であるフォーク家の唯一の子供として生を受け彼女自身も最前線で剣を握ってきた。

 初陣が少し遅かっただけで非公式の戦闘は彼女の方が早くに経験している。

 それらもあって戦いが好きになっていったのだ。

 実際彼女は歴史上最年少で騎士・近衛隊隊長の位を手にしている。


「リールさんがそうだとは知りませんでした」

「まあそうだろうね。リールはいつも無表情だから。さあ、僕たちも準備しよう。リールの試合は全部見届けなきゃ」

「はい、そうしましょう」




ー-------




「私も参加したかったです~」


 会場である闘技場に向かう馬車の中でエレナさんがそう言ってため息を漏らす。

 今日はエレナさんは休日だが戦いを見たいがためにプライベートでついてきてしまった。

 

「エレナさんが参加したらめちゃくちゃになっちゃうでしょ」

「うっ」

 

 エレナさんが大会に参加したら対戦相手全員胴体が真っ二つになってしまう。

 大会で死者なんて出したらそれこそ大問題だ。


「それにエレナさんが出たら最終的にリールさんと戦うことになりますよ。そうなったらどっちかが大けがしますよ」


 僕の隣に座るハンナが更に理由を追加する。


「でも~」


 エレナさんが年に似合わず駄々をこねる。

 エレナさんはこういうことになると一気に子供っぽくなる。


「あ、そろそろつきますよ」


 ハンナが言った。

 外は確かに庶民街への入り口が見える境界だった。


「あれが闘技場か」

「はい、今回はお忍びと言うことですので私名義で席を確保しておきました」

「ありがとう!さすがハンナ」


 今回はただリールの戦いが気になって来てみただけだ。

 そのためお忍びで来ている。

 もちろん馬車も普通の馬車で来ている。

 ハンナが全部席などを予約してくれている。

 ハンナはこういうところも優秀だ。


キーッ

 

 馬車のブレーキがかかり馬車が止まる。


「姫様どうぞ」


 リールがいない今日はエレナさんが手を引いてくれた。

 外に出るとそこは活気に溢れていた。

 

「すごいですね!」

「こんなの軍のトーナメント以来だよ!」


 ヴェスターでも数年に一度兵達が参加するトーナメントが開催される。

 施設ではそちらの方が豪華ではあるがこの大会は人の多さからそれ以上の盛り上がりに見える。

 

「いったい何人来てるんだろう?」

「前調べでは予選の今日だけで35万人が来場するそうです」

「35万!?」


 北部全軍以上の数だ。

 さすがは第一皇子主催と言ったところか。


「ここは人が多くて危険です。移動しましょう」

「そうだね」


 僕たちが降りたのはVIP用の特別出入口ではなく一般客用のメインストリートの端、人でごった返していてとても皇族がいていいような場所じゃない。

 僕たちは下調べを担当したハンナに先導されて歩き出した。

 僕たちの周りは外套とフードで鎧を隠した護衛隊によって固められているがかつてないほどの人の密集具合だ。


「ここは闘技場の前に特設で用意された祭り会場です。決闘大会に合わせてこの2日間は周りで様々な祭りが開催されます」

「だから会場の外でもこんなににぎわってるのか」


 路上には昼から酒を飲む者・商売に精を出す者などがたくさんいる。

 

「もうすぐ闘技場の入り口です。手続きは私がするのでお任せを」

「ありがとう」


 さすがハンナだ。

 用意がいい。

急用で金曜日投稿できませんでした。

申し訳ございませんでした。


読んでくれてありがとうございました!




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