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83話 対面

「全員集まってる?」

「はい、北部貴族はすでに全員集合しています。旧貴族は予定通りまもなく合流します」

「了解」


 旧貴族達には僕が来るまで今まで通りに振る舞うように言ってある。

 他陣営にサプライズしたいからね。


「あ、噂をすれば来ました」


 ワグネル侯爵が旧貴族達を連れて僕たちの方に向かってきた。


「殿下、お美しいですね」

「ありがとうございます」

「我ら旧貴族一同殿下の下に忠誠を」


ザワッ!


 旧貴族達が僕に忠誠を示すと改めてざわめきが起こった。

 今までどんな政争にも中立を保ち続けてきた旧貴族が帝都貴族の嫌う北部の姫についたのだ。

 当然だろう。


「さてみんな集まったし改めて感謝を伝えるよ」

「いえいえ、忠誠を誓う者として当然です」

「我らが姫ですからね」


 僕がこの会場に姿を現してから半刻も経たないうちに僕の勢力の全容を帝都貴族達は薄々気づき始めていた。

 中には驚愕する者もいればむき出しの敵意を見せる物もいた。

 旧貴族ではない中立の貴族は早くも僕につくことを考え始めていた。


「勢力また増えるかもしれませんね」


 リールが言う。


「そうだね、でも断るかも。旧貴族達は北部貴族と似た考え方を持つから引き入れたけどまだ陣営についていないだけの中立貴族は僕が嫌ってる帝都貴族そのものだから」

「それもそうですね」


 旧貴族以外の中立貴族はまだどこの陣営にもついていないだけの貴族だ。

 勢力が増えるのは嬉しいがそのせいでさらなる政争に巻き込まれて僕の目的が達成できないのはごめんだ。


「あ、来たようです」

「やっとか」


 今回の主目的が来た。

 第一皇子と第二皇女だ。

 

「キャー!殿下!」

「ご機嫌いかがですか?」

「今度お茶でもいかがですか?」

「殿下以上に美しい方はおりませんわ」


 僕たちの方に向かう間に令嬢や若手貴族に囲まれて身動きが取れなくなっていた。

 特に第一皇子は令嬢に大人気だ。

 第二皇女の方は一部若手貴族には話しかけれらているが第一皇子程ではない。

 むしろ皇族にしては不人気なほどに囲む人数が少ない。

 恐らくあれは正統派陣営の塊なのだろう。

 

「にしても、、」

「どうかなされました?」


 ぼそっとつぶやいた僕にリールが聞く。

 

「いや、何でもないよ。ただ少しかわいそうだとは思ってね」

「確かに、生まれてからずっとあんな感じはかわいそうですね」


 ずっと取り巻きに囲まれ自分を制限する生活をかわいそうだとは思いつつ。

 権力や北部への軽蔑意識には敵意を示した。


「あ、人込みを抜けました。対応には慣れているようですね」

「そうだね。あんなのが何年も続いてれば対応も身に付くに決まってる」


 第一皇子と第二皇女は取り巻きや貴族達を適当にあしらってまたこっちに歩き出した。

 2人が僕に向ける目はそれぞれ違った。

 第一皇子の方は明らかに作り笑いだということが分かった。

 目を見るに恐らく突然出て来た最大派閥の僕を憎んでいるのだろう。

 それに対して第二皇女が僕に向ける目は違った。

 どちらかと言えば好意を向けてきているようだった。

 敵対心は感じられず自然な笑顔をこっちに向けてきていた。


「どうやら僕達も顔を作らなきゃいけないみたいだね」

「なれませんね」

「そりゃそうだよ。北部だったらみんなに顔作る必要もないし敵は気に入らなかったらしゃべる前に排除すればいい」


 これも僕が社交界を嫌っている理由の一つだ。

 陣営外の人間と話す時には誰であれ顔を作らなきゃいけない。

 まったく、お互い感情を隠して騙しあって何が楽しいんだか。


「始めまして!我が妹よ!」


 大きな声がパーティー会場に響いた。

 

「お初にお目にかかります。第一皇子殿下」


 遂に第一皇子達が僕たちの集まるところまで着いたのだ。

 第一皇子は開口一番予想通りしたたかな歓迎を口にした。

 今日初めて会ったくせに「我が妹」とは大層なことだ。


「こんな可愛らしい妹がいるなんて知りませんでしたわ」


 続いて第二皇女も来た。

 第二皇女の方は第一皇子よりは好印象だ。

 だがどこか不気味な部分を感じられる。

 

「そんな硬いこと言うな。気軽にお兄様と呼んでもらっていいのだぞ」

「私のこともお姉さまと呼んでね」

「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて。僕のこともカーナとお呼びください」


 はあ、これだから疲れる。

 隙を見せれば今にでも潰しにかかって来そうなやつらをお兄様・お姉さまと呼ばなくちゃいけないなんてどんな拷問だよ。


「いや~カーナはすごいな。社交界デビューとはいえこんな大規模な用意をしてきたのは帝国の歴史上初めてだぞ」


 そりゃそうだろ。

 今まで北部貴族帝都に来なかったんだから。


「ドレスも可愛いわ。見たことない光沢を放っているけど何でできているの?」


 第二皇女が僕のドレスに興味を持った。


「これは全てダイヤと鉄金具でできています。北部の職人と学者たちが作りました」


 僕は少し大きめの音量で宣言するように言った。

 オリハルコンは公表できないため鉄と言った。


「ッ!」

「ッ!」


 第一皇子と第二皇女含めて聞こえた貴族は驚いていた。

 同時に僕は社交界の主要メンバーに財力を示すことができた。


次回投稿は金曜日になります。


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