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82話 入場

「全隊!前向け!」


ザッ!


 僕たちを先導するエレナさんの号令で道を作っていた兵達が一斉にパーティー会場の方に体を向けた。

 僕はリールに手を預けエスコートされている。

 後にはリールとエレナさんの副官2人がいて道を形成する兵達も合わせると前後左右死角なく囲まれている。


「全隊!進め!」


 エレナさんが号令を出すと兵達がドレスの僕の歩調に合わせてゆっくりと行進する。

 一寸の狂いなく足音が統一され帝都貴族の誰も見たことがないような練度を見せつけている。


「すでに閣下が派閥の皆を集めて固まっているはずです。会場に入りましたらそこへ」

「わかった」


 僕は左手に指揮官杖を持ちながらリールと一緒にゆっくりと、確実に進んで行く。

 

ザッザッ


 僕たちが会場のエントランスに入るころには兵達は入り口横で整列し最後尾の僕たちを待っていた。

 

「全隊!姫様に敬礼!」

 

ガシャッ!


 エレナさんの号令で兵達が一斉に敬礼する。

 右手に槍を、左手に大盾を持っている状態で敬礼したため槍の持ち手と鎧の胸当て部分があたり金属音が響く。


「みんな、ありがとう」

「光栄です!」


 僕の感謝にエレナさんが興奮気味で応える。

 他の兵達も帝都貴族や警備の皇室騎士団を前にして一切揺らがず堂々としている。

 さすが僕の戦友たちだ。


「じゃあ行ってくるね」

「いってらっしゃいませ」


 僕が行くと伝えると笑顔で送り出してくれた。




ー-------





「何が、、、起こってる、、、」


 おかしい。

 今私の目の前でありえないことが立て続けに起こっている。

 ありえない!

 

「何故だ、、、何故辺境1か月前までに追放されていた小娘が見たこともないような豪華な馬車に乗って数十人の達人級の兵士に囲まれている!それに北部軍総司令官だと?北部の姫だと?そんなの聞いていないぞ!」

「落ち着いてください。お兄様」

「お前は何故そんなに落ち着いていられる!陣営の構図が崩れるかもしれないんだぞ!」

「慌てても何も起こりません。陣営が違う私が言うのもおかしいですが今は落ち着いて対処するのが最善かと」

「、、、そうだな。すこし取り乱してしまった」


 そうだ。

 落ち着かなければ。

 逆に考えれば計画通り奴を取り込めれば私の陣営の優勢は圧倒的なものとなる。

 

「お兄様、私の記憶が正しければあの隣にいる騎士、見覚えがあります。なんだと?社交界にはお前よりも多く出席しているがあんな奴見たことないぞ」

「私もさっき思い出したばかりなのですがあれは私が正しければ北部2大公爵家であるフォーク家の次期当主であり北部軍最精鋭部隊近衛隊の隊長リール・フォンフォークです」

「何だと!?それじゃあ軍だけじゃなくフォーク家も後ろにいるということか!?」

「恐らく。」


トットットッ!


 1階で待機していた騎士が走ってきた。

 

「両殿下、まもなく第五皇女が会場に入ります」


 適当に取り込むために来たがこれは苦労しそうだ。


「わかった。今行く」

「私も行きますわ」


 私たちは突然現れた軍を率いる妹を見極めるために会場へ戻った。




ー-------




ガチャンッ!


 会場である大広間の扉が開き道が開いた。

 僕たちはしっかりとした足取りで堂々と進む。


「あれが追放されていた皇女?」

「そんなには見えないな」

「それに着ているドレス、あれは何?」

「馬車もそうだがどれだけ金をかけているんだ?」


 僕が会場に入ると回りから貴族達がひそひそと話す声が聞こえる。

 皆僕たちに注目している。


キラッ!


 僕のドレスがシャンデリアの光に当てられて反射する。

 その次の瞬間会場のざわめきが一層大きくなった。

 皆薄々気づいたのだろう。


「まさかあれ全部宝石!?」

「そんな、、、」

「一体いくらかかってるんだ」

「本当にこの前まで追放されてたの?」

「ありえない、、、」


 貴族たちが驚愕と疑いの目を向けてくる。

 

「殿下!やはりお綺麗ですね」

「おじさん、ドレスが綺麗なだけだよ」

「謙遜しないでください。殿下以上にお綺麗な人はそういませんよ」


 おじさんだ。

 うしろには北部貴族達も控えている。

 

「姫様」

「殿下」

「総司令官」

「我らの忠誠を」


 北部貴族達も挨拶してくる。

 そのやり取りを見て一気にざわめきがピークに達する。

 その中でもひときわ驚愕していた者がいた。




ー-------




「そんな、、、馬鹿な」


 嘘だ。

 北部貴族全員があいつについただと?

 信じられない。


「どうやら現実のようですね」

「北部貴族全員、、、まさか!」

「そうですね。どうやら新たな陣営の誕生を目撃したようです」

「くそっ!なぜ気づけなかったんだ!」


 北部貴族という巨大勢力が1人の皇女に忠誠を誓った。

 それに雑兵ではあるが世界最大数の兵を持つ軍も支配下に収めている。

 くそっ!

 今まで優勢だった私の陣営が一瞬で追い抜かされた!

 しかも我々が関わらなかった北部貴族で陣営を構成している。

 奴の支持基盤はすでに盤石と言うわけか。

 

「お兄様、一時休戦としませんか?」

次回投稿は火曜日になりそうです。


読んでくれてありがとうございました!




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