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80話 兄弟姉妹

「全隊!敬礼!」


 ザッ!

 

 僕とリールが屋敷から出てくると馬車と玄関の間にいる兵達が一斉に敬礼する。

 数にして400人いる。

 予備人員のうちの屋敷待機組だ。


「殿下の出陣!我ら30万の北部軍兵士の力を!」

「30万の力を!」

「30万の力を!」

「30万の力を!」

「30万の力を!」


 待機組の隊長が言うと兵達が復唱する。

 これは北部での伝統的なものだ。

 一騎打ちや敵との交渉など大将が少数で出陣するときに北部軍全軍の力を大将に宿らせる。

 フェリキア統一国から続く伝統だ。


「行ってくる!北部に栄光あれ!」


「栄光あれ!」

「栄光あれ!」

「栄光あれ!」

「栄光あれ!」


 僕は応えて馬車に乗り込んだ。

 今回の馬車はもちろん帝都入城の時に乗ってきたやつだ。

 装飾は全て付けてある。

 金銀宝石で埋め尽くされているが品性は保っていて統一感がある。

 

「では私は先頭で先導します。会場までのエスコートは私がしますので待っていてください」

「了解、堂々と威厳を示しながら入ってね。車止めの時点から帝都貴族たちは見ているから」

「了解です。殿下と北部の威光を帝都の豚どもに示します」

「お願い」

「それでは会場で」


 そう言ってリールは馬車のドアを閉めた。

 リールは今回の隊列の先頭でパーティー会場である皇宮に入城する。

 リールの後ろにはエレナさんがついていてその後ろには副官達が、そのさらに後ろには護衛隊の兵達数十名がついている。

 黒で統一された軍馬に乗り、先頭のリールとエレナさん以外すべての兵がフル武装だ。

 黒の下地に金のラインが入ったオリハルコンのフルプレートは威圧感マシマシだ。

 特にオオカミを模して造られた芸術品とも呼べる兜は見る物に少なからず畏怖の念を抱かせる。

 しかもそれらすべて統一された物を身に着けた数十人の兵が来るのだ。

 初手の威圧にしてはふさわしい。


「殿下、出発します」

 

 御者を務めている兵が言う。


「了解」


 僕がそう答えると隊列はゆっくりと進みだした。

 門までの庭園を抜けるとマンフレート邸の重く、巨大な門が開き帝都の町に出る。

 ここから皇宮までは少しかかる。

 僕たちの隊列が貴族街の大通りに出るといろんな人の横を通る。

 僕の乗る馬車を見た人たちは皆同じように驚く。

 まあ帝都でこんな馬車見ることもないだろうし当然だろう。

 

キーンコーン


 皇宮の塔から鐘の音が聞こえる。

 日はすでに沈んでいて貴族街の屋敷から所々明かりが漏れてくる。

 だが明かりが見えない、または少ないところも多い。

 恐らくみんなパーティーに出払っているのだろう。

 ずっと北部に追放されていた第五皇女が帰っていていきなり社交界デビューするのだ。

 今後の皇位継承問題にも大きくかかわってくるだろうし皆興味あるのだろう。

 、、、さて、我が兄弟姉妹はどんな人物かな?





ー-------





「第一皇子、ハンス・フォン・ベルヘルツニアご入場!」


 入り口に立つ騎士が叫ぶ。


「見て、第一皇子殿下よ」

「きゃー!殿下!こっちを見て!」

「殿下以上に才覚溢れる方はおりませんわ」


 私は入場するとすぐさまその場にいた者の目をくぎ付けにした。

 当然だろう。

 私はハンス・フォン・ベルヘルツニア、第一皇子でありこのままいけば私はこの大国、ベルヘルツニア帝国の唯一君主だ。

 私以上に才覚と地位、権力を持つものはいない。


「あら、遅かったですわね。お兄様」

「そっちが早すぎるのだ。ソニア」


 私を見て駆け寄ってくる令嬢たちを通り抜け皇族専用のソファーに行こうとすると話しかけられた。

 ソニアだ。

 ソニア・フォン・ベルヘルツニア、私の実の妹でありおこがましいことながら女の身で私の皇位継承を妨害してくる奴だ。

 実に鬱陶しい。

 伝統では長子である私が皇位に着く、そしてこいつは女だ。

 私の正統性は確実だというのに。


「来る途中に貧民街を通って来てな」

「何故そんなところを?」

「ただそこを通ったほうが近かったからだ。まあ貧民どもに囲まれて金をせがまれたから失敗ではあったな」

「そんな時は騎士に1人切らせればいいのですよ。そうすれば貧民どもも黙ります」

「私は貧民どもの卑しき血など見たくもない」

「ふふっ、同感ですわ」


 実際途中で貧民どもに囲まれたのは面倒だった。

 私が皇位に就いたらまとめて殺すか追放するかして帝都から消してやる。


「そういえば」

「ん?なんだ?」


 ソファーに座りワインを飲もうとした時にソニアが思い出したように言った。


「我々の妹、どんな子でしょうか?」

「知らん、北部で野蛮人に育てられた奴など知らん」

「あら、薄情だこと」

「今日はそいつじゃなくてそいつの持つ皇位継承権目当てで来たのだ」

「私も同じですが少し興味も沸いています」

「興味?」

「お兄様もご存じの通り北部は野蛮ですが力は無視できないほどに大きいです」

「まあ少しは聞いている。最近は王国相手に善戦しているとか。王国が負けないように支援を強化しなきゃな」

「特に北部の軍事力は味方につけておいて損はないはずです。騎士に遠く及ばない卑しき身分の雑兵だとしても30万集まればある程度の戦力にはなりますしね」 

「対抗勢力の長たる私に言うことか?」

「ふふっ、今日は平等に戦いたいと思いまして」


 ソニアと話していると側近の騎士が寄って来て言う。


「まもなく第五皇女の隊列が見える頃です。両殿下バルコニーに出るとよく見えると思います」


 やっと来たか。

 ソニアのみならず私よりも遅く来たのだ。

 せっかくだしどんな面をしているか見に行ってみるか。


次回投稿は金曜日になります。


読んでくれてありがとうございました!




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