７２話 中立貴族邸
「さてと、、リールは仕事を終えたから次は僕の番だね」
リールが帰って来てから数日、市腰の後処理があったがそれ以外は何も特筆することはなかった。
リールのやるべき仕事は終わった。
次は僕に来たお茶会の誘いの対応だ。
「中立貴族はいかようにするおつもりですか？」
リールが聞いてくる。
陣営に入っている貴族と違い未加盟の中立貴族は敵にも味方にもなる。
「とりあえず会ってから考えるよ」
「了解しました」
ヒヒーンッ！
外では出発に向けて準備が進められていた。
今回は小規模な護衛と帝都貴族の中では一般的な馬車で行くつもりだ。
「準備が整ったようです。行きましょう」
「わかった」
僕は立って外に出た。
「全員準備完了しました」
エレナさんが報告してくる。
エレナさんとリール・僕含め軍人は全員軍の礼装を着ている。
ドレスを着ていくのはハンナに進められたがただのひ弱な令嬢でないことを相手に理解させたい。
「ありがとう。じゃあ行こう！」
「はッ！」
僕は馬車に乗った。
馬車は護衛隊の乗る馬に囲まれている。
馬も赤い礼式用の鞍で整えられている。
「出発」
エレナさんが言うと隊列はゆっくり進み始めた。
「行ってらっしゃい！」
外ではお母様が見送りに来てくれている。
「行ってきます！」
ー－－－－－－－
「まもなく到着します」
馬車の中で僕の対面に座るリールがそう言う。
「了解」
僕はずっと外を眺めていた。
もうすぐお茶会会場の中立貴族邸だが目立った建築は見えない。
ここら辺一帯は隠居している貴族などがこじんまりとした邸宅を構えて静かに暮らしている。
「見た限りそこまで派手な邸宅じゃないしそこそこの品性が期待できそうだね」
「そうですね。陣営に入っている貴族は大体派手なのを好んで趣味の悪い邸宅を構えることが多いですし期待できそうですね」
帝都では貴族街を通るたびに吐き気がする。
貴族の邸宅があまりに品性に欠けているからだ。
たいして力もないのに無理に金をつぎ込んで趣味の悪い装飾をしまくる。
金を全面に出して無駄にでかくする。
こんな街並みをこれから順次到着する北部貴族達が見たらどう思うだろうか。
恐らく失望するだろうな。
まあ今回の中立貴族は品性がある程度期待できそうだからいいや。
「第五皇女、カーナ・フォン・ベルヘルツニア殿下の隊列である！」
「門に着いたようですね」
「そうだね」
外ではエレナさんが中立貴族邸の門番に対して身分を示している。
しばらくすると確認が取れて門が開いた。
敷地にはいるとまず目に入ったのが芝生だ。
無駄に装飾していない平らで奇麗な見事な芝生が見えた。
その奥に見える邸宅もこじんまりとしているが最低限の豪華さを兼ね備えているとても僕が好きなタイプだ。
ギギ―ッ
ブレーキ音をたてて馬車は止まった。
「行きましょう」
「うん」
いつも通りリールが先に降りて僕をエスコートする。
降りると数人の貴族が待っていた。
「お待ちしておりました。ようこそカーナ皇女殿下」
次回投稿は金曜日になります。
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