71話 事の顛末
「突撃!突撃ー!」
騎士団長の号令で一斉に数十人が突撃してくる。
だが全員ボンボンなので恐怖はない。
「北部の卑しき者共の首をはねろ!」
「栄光ある貴族の力を見せてやれ!」
本当に愚かだ。
貴族は確かに平民より教育の機会は多いがそれでも貴族全員が神童と言うわけでもない。
ましてや南部のろくに剣もふったことのないボンボンが12年王国と死闘を繰り広げている我々に勝てるなど妄想だとしても愚かな考えだ。
「容赦はするな。敵から剣を向けてきたのだ。向かってきたものは皆殺しだ」
「はッ!北部に栄光を!」
「はッ!北部に栄光を!」
「はッ!北部に栄光を!」
「はッ!北部に栄光を!」
士気はばっちりだ。
まあ、士気が必要な戦いでもないけどな。
「はあ!」
向かってきた騎士の一人が剣を私に振りかざす。
私は生け捕りだと言われているのに致命傷を狙っている。
皇室騎士団は統制すら取れないのか、、、
「くだらない」
私は振りかざされた剣の刃を手でつかんだ。
指揮官の軍服には白い手袋がついている。
生地にはオリハルコンの金属糸が編み込まれていて刃を通さない。
それでも刃を受け止めるのは骨折する危険があるが王国との戦場では素手で矢や槍を掴んできた。
慣れた手つきで衝撃を受け流す。
「な!馬鹿な!」
「驚くのはこっちの方だ。招待しておいて断ったら攻撃とはどんな愚か者だ」
騎士はこちらの戦い慣れした様子に更に驚いてとっさにもう一撃をくらわせようとする。
しかし刃先を掴んでいるため振り上げることができす体勢を崩す。
「馬鹿な!この私が小娘に力負けしているだと!?」
当たり前だろう。
お前は戦友が隣で死んだことも数万の王国軍に包囲されたこともない。
「そろそろ面倒だな」
ザクッ!
次の瞬間私の短槍は騎士の腹を貫通していた。
「う、、、うわああああああああああ!血が!血があああ!」
騎士は自分から吹き出る血を見て発狂した。
後ろにいる他の騎士も動揺して後ずさりした。
騎士はしばらくすると床に倒れピクリとも動かなくなった。
バシュッ!
「ばけ、、、もの、、、」
「死ん、、、だ、、、」
後の騎士達がそう言う。
一連の出来事を見ていた騎士は唖然としている雰囲気だった。
「隊長、一通り終わりました」
後で同じく戦っていた副官が言う。
彼が乗る馬の下には派手な鎧を着た騎士の死体が転がっていた。
「了解、総員帰還せよ」
私たちは帰路に着こうとする。
「ま、待て!逃げる気か!」
「ではまだやりますか?」
「ぐっ、、、」
私は色々とほざく騎士団長を横目に皇室騎士団本部を去った。
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「リールお嬢様大丈夫でしょうか?彼女は戦闘こそ最強ですが交渉事は不得意だった気がします」
「大丈夫だよ」
リールが皇室騎士団本部に向かって数刻、エレナさんが聞いてくる。
「リールは軍事的な才能が有名だから他が軽視されがちだけど王国との交渉や南部との交渉に何度も参加している。しかもそれらすべてで圧倒的な勝利を収めてきてるからね」
「しかし皇室騎士団長は粗雑な人間だと聞きます。普通の交渉ではうまくいかないのでは?」
「それも大丈夫、リールには出発前に「気に入らない奴だったら切っていい」って言っといたから」
リールには自分の判断で戦闘を許可している。
「それ大丈夫ですか?他の陣営に実力が露見するかもしれませんし」
「まあ戦闘を吹っかけてくるならあっち側だしあっちも今回の勧誘の許可はどこの陣営からも許可得ていないと思う」
「それなら大丈夫そうですね」
「許可を得ていない勧誘で戦闘騒ぎになったら当然表ざたにできないし皇室騎士団の中で一連は隠蔽されるだろうね。だからたとえリールが皇室騎士を何人切り伏せようと他陣営は何も知ることはないよ」
トントンッ
ドアがノックされた。
「どうぞ」
「はっ」
伝令兵が入ってきた。
もうそんな時間か。
久しぶりにゆっくりした一日だったな。
「姫様に報告します。リール隊長が間もなく帰還いたします」
「交渉内容は?」
「はっ。さっき到着した先発組によるとリール隊長が即断って退出、剣を抜いて隊長を捕縛しようとしたため向かってきた十数名を排除したとのことです」
やっぱりか。
「リールも久しぶりのストレス発散になったかな。まあいいや、報告ありがとう」
「ではこれで」
そう言って伝令兵は出て行った。
「僕たちも出迎えに行こう」
「そうですね」
僕たちは庭に出てリール達を出迎えた。
「ただいま帰還しました」
「お帰り。皇室騎士団はどうだった?少しは楽しめた?」
「いえ、雑魚の寄せ集めで正直期待外れでした」
「はは、まあ帝都にリールが納得するような軍はいないか」
「本部は実戦度外視の無駄金をかけた宮殿で練兵施設は一つもありませんでした」
「うわ、それは悲惨だね」
「騎士もボンボン以外居ませんでしたね。あと騎士団長ですが非常に不快な人間でした。殿下は会わない方がよいかと思います」
「わかった、ありがとう。日も暮れて来たしご飯食べよう」
「そうですね」
その後予想通り皇室騎士が数十人リールにやられたことはことは隠蔽されて他陣営が気づくこともなかった。
次回投稿は火曜日になります。
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