69話 皇室騎士団長
忘れがちだがここは敵地、丸腰でいるのは避けたいがまあもしもの時は服の中に隠してある短剣があるし大丈夫だろう。
預けるのを避けられただけでもいいだろう。
北部の武器製造技術の流失だけは避けたい。
南部の奴らが北部の技術を再現できるとは思わないがそれでも最善は尽くさなければ。
「こちらが来賓室です。しばしお待ちください」
「わかりました。」
私たちは来賓室入った。
中はギラギラ輝く椅子と机があった。
こんな無駄なところに金をかけて、、、
「私は団長の執務が終わり次第戻って来てお呼びします。何か飲み物をお持ちしましょうか?」
「わかりました。いいえ、飲み物はいりません。大丈夫です」
「了解しました。では」
案内係は出て行った。
「、、、確認しろ」
「はっ」
部下に命令して部屋を隅々まで調べさせた。
机の下はもちろん床下に天井裏までこの部屋に干渉できるすべてをだ。
「確認終了しました。多少窓の建付けが悪いだけで以上はありません。盗み聞きいている者もいないようです」
「わかった。では休もう」
相手が仕掛けてこないことを確認して私たちは椅子に座った。
、、、にしても相手は今日は仕掛けてこないのか?
もしスカウトが失敗した時のために可能な限り情報を抜き取りたいだろうに。
少し荒っぽいが私を捕縛することもできるはずだ。
帝都の連中はまだ我々が1野蛮人の集団程度にしか思っていないだろう。
私なら少なくともこの部屋の四方にそれぞれ3人の伏兵を忍ばせるな。
「そうだ、皇室騎士団長について復習しておこう」
「かしこまりました。」
情報管理官の兵の一人が説明し始めた。
「皇室騎士団長 氏名ファウクス・フォン・ヘッドマン、年は今年で54歳、騎士団長就任12年目で妻と息子がいますが女癖が悪いという話が後を絶ちません。去年は酒に酔った勢いで有力貴族出身の宮女に手を出そうとして問題になりました」
「年を取り既婚者なのに女癖が悪い、、、うちの主君とは正反対だな」
「まったくですね」
「何か女以外に好きなものは?」
「金と権力、典型的な汚職貴族ですね」
「彼自身の戦闘力は?」
「皆無です。剣を振ったのは10年以上前でしかも木刀です。武器は両手剣と短剣を常に持っていますがどちらも装飾用です」
「護衛は?」
「数名の私兵と騎士団員がいつも同行しています」
、、、彼自体は脅威にはならなそうだ。
いざとなったら足でも折って護衛は殺すか。
まあそうならないことを祈ろう。
こちらとしても殿下が陣営設立を宣言されるまでは派手な行動は避けたい。
トントンッ
少し今後について考えているとドアがノックされた。
「どうぞ」
「失礼します」
さっきの本部案内役の騎士が入ってきた。
「団長の執務が終わりました。謁見可能です」
「わかりました。行きましょう」
「ではこちらへ」
私たち一行は案内役について行き来賓室を出た。
途中皇室騎士団本部の騎士の目を集めた。
それもそうだろう。
私たちは北部軍の軍服を着ている。
皇室騎士団の金や宝石で飾ったギラギラな制服と対照的に我が軍の軍服は指揮官用であっても実用性が最優先されている。
しかも男女兼用だ。
南部では女性騎士や女性兵が認められていない。
皇室騎士団の連中からすれば貴族令嬢が軍服を着て軍人を率いている姿は異様なのだろう。
まったく羨ましいものだ。
北部は南部と違って実力主義にならなければ生きていけないほどに土地と人口が貧相なのだから。
まあ、それも殿下が北部に帰れば終わる。
北部は大陸1、、、いや、世界1富と食料が溢れる土地となるのだ。
「着きました。こちらです」
シャンデリアや金の燭台で飾られた廊下をしばらく歩くとひときわ大きく派手に飾れらた両開きの扉が現れた。
団長室だ。
トントンッ
「フォーク家令嬢、リール・フォン・フォーク様をお連れしました」
「よかろう、入れ」
部屋の中から図太い声が聞こえて来た。
雰囲気からは、、、品性は期待できなさそうだな。
「よく来てくれた。リール嬢、そこに座ってくれたまえ」
ファウクス・フォン・ヘッドマン、彼が座るように促してきた。
丸々と太りとても剣を振るえる体形ではない。
かといって作戦立案に貢献できるような戦略家にも見えない。
「では失礼します」
促されたように彼が座る長椅子とテーブルをはさんで反対側の長椅子に座った。
「いや~招待に応じてくれて感謝する。早速本題に入っていいかね?」
「構いません。私も北部軍からの報告を読まなければいけないので」
「単刀直入に言うと私の側につかないか?」
「具体的に?」
「簡単に言うとあの小生意気な追放皇女を捨てて我が皇室騎士団を支持する立場になってくれないか?」
「もしそれをしたとしてどんな対価が?」
「私は公爵だ。公爵として伯爵に叙することができる。それに皇室騎士団の資金から白金貨500枚を出そう。帝都での邸宅も用意する。社交界には出たことがないと聞くが私の後ろ盾があれば帝都の社交界でも高位の地位に付けるぞ」
「そうするとして私はどのように支持すれば?」
「君が持っている軍があるだろう?」
「近衛隊ですか?」
「そうだ。あれは帝都でも噂を聞く。卑しい身分の軍にしては精鋭らしいな。それを我が皇室騎士団の指揮下に入れたいのだ。毎年冬になると平民どもが一揆をいくつか起こす。それを楽に制圧したい。毎年傭兵を雇うのも手間だからな」
、、、こいつは、、、いや、こいつらは救えようのない愚か者だな。
次回投稿は金曜日になります。
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