68話 皇室騎士団本部
「隊長、案内役が到着したようです」
今回の旅の副官が言ってくる。
どうやら皇室騎士団の案内役が到着したようだ。
「了解した。今行く」
「ハッ!」
ここは中央通りのレストラン。
あちら側はこっちが殿下に内緒で来ていると思っているためまったく関係ないレストランで待ち合わせている。
よし、行こう。
次期ヴェスターの主として、中心として殿下に仕えるために。
私は外に出て部下と合流する。
今回は数人だけ連れてきている。
あの愚かさだ。
もしかしたら更に愚かな凶行に走るかもしれないからな。
「お初にお目にかかります。リール・フォンフォーク様、今回案内を担当させていただく者です」
馬車から1人騎士が出てきて挨拶をしてきた。
細い体格だ。
戦略家でもなさそうだしこれはボンボンだな。
「こちらこそよろしく頼む」
「閣下の元へはこちらの馬車で」
促されその馬車に乗った。
北部の馬車より狭く天井も低いが見栄を張るためにやけにキラキラしている。
「出発しろ」
案内役の騎士が御者に指示を出すと馬車が進みだす。
「騎士団本部は数分で着くはずです」
「了解した」
北部の馬車と比べれば乗り心地は最悪だが帝都の賑やかな町景色を眺めて暇をつぶす。
「そういえば卿は戦場に出たことはありますか?」
そう言うと案内役の騎士は不思議そうな顔で答える。
「戦場ですか?いえ、出たことはありません。そのような重労働平民どもにやらせればいいですからね」
「卿はどこの家でしたっけ?」
「私は男爵家出身です。民身の一番端に領地があります」
「何故騎士になろうと?武勇を示すならご自身の領軍に入ったほうがよろしいと思いますが」
「それはもちろん皇帝陛下の槍となり盾となって名誉を得るためです」
「わかりました。最後にもう一つ質問よろしいでしょうか?」
「はい、もちろん。公爵家令嬢たるあなたの質問なら」
「皇室騎士団は強いと思いますか?」
そう聞くと騎士は自信満々で言った。
「もちろんです!帝国の我が皇室騎士団は大陸最強を誇ります。高貴な身分の選ばれし者のみで構成された精鋭ですから。卑しい身分の軍がどんな大軍で攻めてこようと我らの剣一振りで殲滅できるでしょう!」
「わかりました。ありがとうございます。見学が楽しみになってきました」
ああ、、、
ほんっっとうに、くだらない。
もし帝都で戦う時があれば真っ先に皇室騎士団を包囲しよう。
馬車は進み皇宮の隣に並ぶ皇室騎士団本部が見えてきた。
ー-------
「フォーク家、リール嬢到着!」
皇室騎士団本部に着いた。
皇宮の隣にあり古い宮殿を本部として使っている。
正面の庭園は華やかに装飾され本部の建物も金で飾られている。
歴代騎士団長の石像が噴水の周りに並び、それも奇麗に飾られている。
「ずいぶんと奇麗な本部ですね」
「帝国1の騎士団にふさわしい本部にしています」
「ところで」
「何でしょう?」
「目立った防衛設備がないようですが」
「防衛設備?そんな役に立たないものより庭園の方が重要でしょう?」
「はあ、、、」
これは、、、
ここを攻める軍の指揮官はラッキーだな。
ここみたいな高い城壁も防衛塔もキープもない軍本部は一瞬で落ちるだろう。
そもそも守る気がないのだろう。
きっと敵前になればこいつらは剣を捨てて逃げる。
こいつみたいな前線に1度も出たことがないやつがいっぱいいるだろうからな。
トントンッ
馬車の扉がノックされた。
「行きましょう。リール様」
私は馬車から降りた。
降りると数人の騎士が待っていた。
「ようこそおいでくださいました。ここからの案内と護衛を担当させていただく者です」
「挨拶ありがとう。しかし護衛に関しては部下がいるので結構です」
「、、、わかりました。では行きましょう」
私がそう言うと部下を少し睨んで案内を始めた。
私たちはエントランスに入った。
シャンデリアが飾られ壁の燭台も金でできている。
「、、10、20」
「ん?なにか言いましたか?」
「いえ、何でもありません。気にしないでください」
あのシャンデリアでざっと30セットはうちの軍の標準装備が買えるな。
ここは騎士たちが来ている鎧も相変わらず旧式の鎧だ。
しかも重そうな宝石が多数追加されている。
ここは軍の司令部と言うより貴族のボンボンのお遊戯場だな。
「団長は現在執務に当たっていてしばらく手が離せないそうです。失礼ですが来賓室でしばらくお待ちください。」
「構いません。行きましょう」
ここにいると自分を天才だと勘違いしている無能が嫌でも目に入ってむかつく。
殿下を連れてこなくてよかった。
我が北部が誇る歴史上最強の戦略家とこんな低俗な連中と会わせたくはないからな。
「あ、すいません」
「何ですか?」
「ここから先は皇室騎士の者以外武器の持ち込みが禁止されていまして、お手数ですが武器をお預けいただきたいのです」
「それはできません。この剣は我が軍の最新型です。外部の方に預けることはできません」
「しかし、団長からの指示でして」
「わかりました。1人ここで待たせて預けます。作戦副官、前へ」
「ハッ!」
副官に私も含め全員が武器を預ける。
この副官は平民の20代ながら王国との戦闘でおびただしい数の戦果を挙げて近衛隊の副官の一人までのし上がってきた実力者だ。
彼以上に信用できる人材はここにはいない。
「戻るまで頼んだ」
「了解しました!命令を実行します!」
副官は敬礼して私たちを送り出した。
諸事情で1日遅れてしまいました。
申し訳ございません。
あと日曜日の投稿についてですが1回分休ませていただきます。
よって次回投稿は火曜日になります。
読んでくれてありがとうございました!
もし面白い・続きが読みたいと思っていただけたらブックマークや広告下の☆☆☆☆☆でポイントを入れていただけるとうれしいです!
評価はモチベに繋がりますのでよかったらお願いします!