67話 3つの手紙
「北部皇族派、、、よく考えたね」
「ありがとうございます」
北部皇族派陣営、一見北部が支援する皇女の陣営ととれるが帝国に2つの皇族がいた時代の北部皇族ともとれる。
これは僕が帝都の皇宮から完全に自立した存在であるということを示せるとともに将来的な「北部への帰還」という目標を暗に示せる。
「決まり、これにしよう」
僕がそう言うと円卓につく全員が立ち上がり敬礼した。
「北部皇族派陣営盟主、カーナ・フォン・ベルヘルツニア殿下に忠誠を!」
「北部皇族派陣営盟主、カーナ・フォン・ベルヘルツニア殿下に忠誠を!」
「北部皇族派陣営盟主、カーナ・フォン・ベルヘルツニア殿下に忠誠を!」
「北部皇族派陣営盟主、カーナ・フォン・ベルヘルツニア殿下に忠誠を!」
こうして僕の陣営の名前が決まった。
「それではこれで今日決めるべき議題は終わりです」
やっと会議が終わった。
戦術会議なら得意だがこういった文官気質の会議は少し苦手だ。
「あ、そうだ。」
フォルトが何かを思い出したように書類の束から1つの封筒を取り出した。
「ヴァルド研究部のルードヴィヒ殿からこれを殿下に渡してくれと預かりました。私のところにも昨日届いたばかりでまだ中身は見ていません」
「先生から?」
封筒は薄く、中身はそれほど入っていないようだった。
僕は椅子にレイピアと一緒に立てかけておいたいつも使っている短剣を取って封筒を開けた。
中には1枚の手紙が入っていた。
「殿下、お元気でしょうか?この手紙は殿下が出発されてから1週間程でヴェスターから発送されました。輸送の問題で少しの遅れがあると思いますが殿下の社交界デビューまでには届く手筈です。我々研究部は日々殿下の力になれたらと様々なものを開発してきました。しかし今回の件では兵器は役に立たず違うものが求められるでしょう。そこでサプライズとして殿下の馬車の荷物入れの奥にとあるプレゼントを入れさせていただきました。デビュー1週間前にお開けください。殿下の戦いに勝利あれ」
先生らしい。
ありがとうございます。先生。
「手紙にはなんと?」
リールが聞いてくる。
「僕の馬車の荷物入れにプレゼントを忍ばせておいたって」
「プレゼントですか?」
「うん、僕の戦いに役立つものだからです週間前に開けてだって」
「デビュー1週間前と言うとあと数週間ありますね」
「そうだね。きっと先生のことだから力の入れたプレゼントだよ。帝都でも少しは楽しみ得られた」
「それはよかったですね」
ー-------
僕たちは一件を終えフォルトにマンフレート邸を案内してもらっている。
「こちらが第一練兵場になります。ヴェスターの練兵場には劣りますが最低限の練兵能力はあります」
第一練兵場は試合のできる闘技場も兼ねていて高台の席もある。
僕たちはそこから練兵場を見下ろしていた。
「ですが帝都でこれだけの土地をよく確保できましたね」
帝都貴族の間ではあまり北部貴族は歓迎されていない。
それに帝都貴族での北部貴族の認識は野蛮な非文明人だ。
なおさらこれだけの土地を確保できたのを不思議思う。
「実はこの屋敷は我が家が代々受け継いできたのですがもともと北部皇族の南部滞在用の宮殿があったのです」
「あ、そういうことか」
「ですがちょうどいですね」
リールが言う。
「なにが?」
「数百年ぶりに北部皇族が戻ってきたではありませんか」
リールは笑顔をこちらに向けてそう言う。
「、、、そうだね。北部の祖先たちに顔向けできるように頑張らなきゃ」
そうだ。
今の北部があるのは祖先が守り、発展させてきたからだ。
その偉大な先人たちの列に僕も並べるようにならなければ。
「姫様、フォルト閣下、リール隊長」
リールと話していると伝令兵が来た。
僕たちを呼び、敬礼をした。
「なに?」
リールが聞く。
「報告があります。社交界にかかわることなのお三方がそろっている今お伝えしたく思います」
「わかった。報告してくれる?」
僕がそう命令する。
「はっ!報告は2つあります。1つ目は姫様宛に複数の中立貴族が合同でお茶会へ来ないかと招待が来たことです」
来たか。
帝都に入った以上来るとは思っていたがいざ来ると緊張するな。
社交界デビュー前に見極めておきたいということか。
「来ましたね」
「そうだね」
「どうされますか?理由付けて断ることもできますが」
「いや、行く。中立貴族とやらをこっちも見極めておきたい」
「かしこまりました。では返事はフォルト殿と私の代理で書いておきます」
「ありがとう」
僕はお茶会の参加表明なんてしたことないからちょうどよかった。
「2つ目は?」
「はっ、、、、それに関してなのですが、、、」
「なに?」
「リール指揮官宛てに密書が届いております」
「密書?」
「はい、送り主は皇室騎士団です。実物がここに」
そう言って伝令兵はリールに密書を渡した。
リールはその場で短剣を使って封筒を開ける。
中には長々とした数枚の手紙が入っていてそれをリールは戦場で培った速読術で読む。
「、、、ハハ!」
リールはその手紙の内容を見て笑った。
「どうしたの?」
「すいません。あまりにも内容が愚かで笑ってしまいました」
「どんな内容だったの?」
「殿下を裏切って皇室騎士団の指揮官に加わらないか? だそうです」
「ッ!!」
その場にいた全員が驚いた。
「私が裏切る?そんなわけないのに。ここまで愚かとは思いもしませんでした。だいたい皇室騎士団と言う軍隊もどきに入りたいわけないでしょ、騎士団長の地位渡されても入りたくないですよ。」
きっと皇室騎士団の団長は愚かさに磨きがかかった奴なのだろう。
リールは皇室騎士団が交渉材料として提示できるすべてを越える財産を持っている。
ヴェスターとヴァルドも時が来ればリールが受け継ぐ。
「殿下、面白そうなので行ってきます。皇室騎士団の偵察もしてみたいと思っていましたので」
「うん、行ってらっしゃい。あと帰ってきたら団長の愚かさを教えて。北部に帰った時の話のタネになる」
「かしこまりました」
その場にいた全員は密書に対して警戒を通り越して笑いを見せていた。
「本当にいるんだね。馬鹿って」
次回投稿は金曜になります。
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