66話 陣営名
「第四軍到着!」
「来たか」
天幕で先に来た第2軍を指揮していた先生と今後について作戦を修正していると最後となる第4軍の到着が知らされた。
「閣下!少し遅れました」
天幕の中に勢いよく陽気な男が入ってきた。
ベルトンだ。
「構わない。ちょうどトレビュシェットがあと少しで全基組みあがる。それより報告を」
「了解ですぜ。第四軍は当初の目標を全て達成し合流、途中駐屯地がいくつか通り道にあったんで全部つぶしてきました」
「了解だ。今のうちに全兵に中速を取らせろ。トレビュシェットが完成し次第攻撃を開始する」
「了解!」
そう言ってベルトンは自軍に戻っていった。
外では工兵と技術者がトレビュシェットと急いで組み上げている。
途中雨が降って組み上げ作業が遅れてしまったがそれも想定している。
「ヴァルドからの報告は正しかったですね」
副官が話しかけてくる。
「ああ、研究部も改革で更に開発スピードが上がっているようだな」
「そうですね。少し前までは天気の予想なんて神の所業だったのに」
「神か、、、」
出陣前にヴァルドの研究部から報告があった。
雨が降ることを予想していたのだ。
半信半疑だったが本当に予想された時間に降った。
戦争しか取り柄がない私にはわからないが気圧とかいうものを使って予想しているらしい。
殿下の改革で研究部も更に勢いを増している。
北部の技術は他に比べて更に発展度合いを増している。
「報告!偵察隊によると先ほど敵にウルヴィア城からの増援が到着した模様です。」
「わかった。引き続き監視を続けるように言え」
「了解しました」
やはり増援が来たか。
ちょうどいい。
今のうちに敵の総数を減らしておこう。
「そういえば閣下」
「ん?なんだ?」
「姫様はちょうど今頃マンフレート家のご令息と合流しているのでは?」
「ああ、そうだな。予定ではちょうど今日だろう」
「閣下はマンフレート家のご令息と会ったことがありますか?」
「ああ、何度か北都に行った時にエグナーに合わせてもらったことがあるぞ」
エグナーとは幼馴染だ。
お互い軍と政治の指導者になっても仲がいい。
エグナーも一種の親ばかだから北都に行った時は苦労した。
「どんな方でしたか?」
「一言で言うと「切れ者」だな」
「切れ者、、、ですか?」
「ああ、殿下を除けば彼以上の政治的才能を持つものはいないだろうな。その手腕はエグナー以上だ」
「そんなですか、、、」
「ああ、敵からしたら”バケモノ”だろうな」
ー-------
「時間は貴重です。早速始めましょう」
フォルトが大広間の中央に置かれた円卓の椅子に座ると僕達に言った。
「そうですね。始めましょう」
僕がそう答えると会議が始まった。
「今回決めるべきは1、殿下の社交界デビューでも我々の立ち位置の決定。2、それまでに我々が行う事柄です」
「了解です」
「では社交界デビューにでの我々の立ち位置から、今のところ我々貴族連合は独自陣営設立が効果的だと思っております」
どうやら彼らも僕と同じ考えのようだ。
「よかった、僕も同じ考えです」
「本当ですか?!」
フォルトは驚いたようだった。
それもそのはず、ヴェスターを出発した時はまだ社交界でも陣営設立は決めていなかったからだ。
「それなら話が早い、陣営の大まかところをここで決めてしまいましょう」
「そうですね」
陣営の概要についての会議が始まった。
「まず当然のことながら我々北部の貴族は全て参加します」
「ありがとうございます」
「臣下として当然のことです。そして、いつ発表するかですがいかがしますか?」
「僕は当日、僕が社交界の会場に入ったらその時に発表するのがいいのではと思ってます」
「当日ですか、、、わかりました。その方向で調整いたします」
当日、まだ社交界の会場はわからないがそこは驚きと混乱に包まれるだろう。
そのあと各部門の担当など様々なことを決めた。
フォルトの組織組み上げの能力は僕の予想以上だった。
瞬く間に僕の陣営の組織構造を作り上げ、それに僕含む全員が賛成した。
この手腕はまさにバケモノと呼んでもいいだろう。
帝都の貴族社会に限定すれば僕以上の能力だ。
、、、頼もしい仲間ができたな。
「それで最後の議題ですが、、、」
フォルトがあまりに早く組織を作り上げるあまり最後の議題に差し掛かっていることに気が付かなかった。
「陣営の名称を決めておいた方がよいと思います。事務的なことにも外部への通達にも必要ですので」
「たしか各陣営は法律的には存在していないことになっているから名称というより愛称ですね」
「確かにそうですね。今ある陣営の愛称は自然に決まりましたが我々の陣営はそれらとは違いきちんと記録もつけておきたいので」
帝国の法律上皇位継承は継承順位に基づいて行われる。
だが近年がその法律は形骸化していて財力・軍事力・有力貴族の支援を持つものが玉座についている。
そのため陣営は法律上存在しないとされている。
だが事実陣営はある。
そのため陣営は愛称で呼ばれる。
「今あるのは正統派陣営・貴族派陣営・改革派陣営ですね」
「そうです。それぞれ陣営の特徴がそのまま名前になっていますので我々も特徴に沿った名前がいいかと」
名前か、、、
我ながらネーミングセンスは壊滅的だからな~
「リール、何かアイデアある?」
隣に座っていたリールに聞いてみる。
「陣営名、、、そうですね。ではこんなのはどうでしょう?」
リールは言った。
僕たちの戦いの旗印となる陣営の名前を。
「”北部皇族派陣営”」
次回投稿は火曜日になります。
読んでくれてありがとうございました!
もし面白い・続きが読みたいと思っていただけたらブックマークや広告下の☆☆☆☆☆でポイントを入れていただけるとうれしいです!
評価はモチベに繋がりますのでよかったらお願いします!