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64話 合流


「そろそろ行こう」

「はっ!」


 そう言って僕は馬車に乗った。

 帝都入りした馬車ではなく帝都で使われる一般的な馬車だ。


「全隊!進め!」


 外ではエレナさんが護衛隊に指示を出している。


「そういえばおじさんの息子いるんだっけ?」

「はい、マンフレート家の跡継ぎがいらっしゃると思います」

「小さいときあったんだけど記憶がいまいちなんだよね~実質今回が初対面だ」

「そうですね。私もあったことがありますが彼は北部を出て長いのであまり覚えていません」


 僕たちは北部貴族連合の集合場所であるマンフレート家帝都邸に向かっている。

 朝伝令を向かわせておいたからみんな待っているはずだ。

 5000の兵も同じくマンフレート邸の兵舎で待っている。


「あと事前連絡ですがヴァルドの研究者たちから殿下宛ての荷物を預かっているそうです」

「研究者たちから?」

「はい、社交界デビューで役に立つものだそうです」


 まあ研究者たちがくれるものだ。

 役に立つだろう。


「そういえば各陣営の動きは何かあった?」

「特に我々に直接かかわる警戒するべき動きはありませんが正統派陣営が私兵の増強を行っているそうです」

「正統派陣営と言えば第一皇子と皇后の陣営だね」

「はい、おそらく第1皇妃と第4皇女率いる貴族派陣営の私兵に対抗するためと思われます。正統派陣営は教会や国外に嫁いだ皇族などからの支援を受けているので私兵の規模は数か月で貴族派陣営に匹敵するものになります」

「やっぱり教会の支援は大きいよね」

「そうですね。教会は各地に影響力を保持していますし金銭的にも独立した軍を持つほどに潤沢ですから」


 教会は神のためと言いながら各地で免罪符などで荒稼ぎしている。

 北部に教会がなくてよかったとつくづく実感する。


「恐らく正統派陣営は我々に対して大きい嫌悪感を持つでしょうね」

「そうだね。巨大な軍事力と財、技術力を持つ異教を信じる自治領なんて脅威でしかないからね」


 大陸に巨大な勢力圏を持つセレア教は着々と各国に教会を設立し拡大を続けている。

 だが北部だけは数百年大規模な布教活動を続けても一向に信者を生み出せていない。

 恐らく北部が実力主義で伝統的なフェリキア人の精霊信仰を受け継いでいるからだろう。


「セレア教は今回の継承権争いに立場表明してるの?」

「いえ、一応殿下以外の皇族はセレア教徒ですからいうことを聞きやすい正統派陣営を指示しつつも明確に指名はしていません」

「ということは僕が陣営設立を宣言したら真っ先に名指しで批判してくるってことだね」

「そうですね。南部と北部が国として分かれていた時代から南部の皇室にに大きな影響を持ってきましたから殿下が勢力を広げるのはよく思わないでしょう。まあ教会なんて我々の敵ではありませんよ」

「そうだね」


 大きな財力や影響力を持っているとはいってもそれは”南部の中では”だ。

 北部の力をもってすればセレア教全部を敵に回しても勝てる。


「セレア教の監視を一応強めよう」

「了解しました。諜報部隊に通達しておきます」

「にしても教会の軍は一度見てみたいな」

「そうですね。噂によれば信者だけで構成された教会のためならば死をも恐れない教信者の軍勢だとか」

「死を恐れないという点では北部のためならいつでも死ねる僕たちと少し似ているね」


 僕は少しいたずらな感じで言った。


「勘弁してくださいよ。我々はあんな無能ではありませんから」

「へへ」


 馬車はそう話している間にも進んでいった。

 皇宮の前を通り貴族の屋敷の間を抜けていく。


「軍との連絡は十分?」

「はい、今回来た500人の指揮官は私の副官の一人ですから連絡もスムーズにとれました」

「近衛隊の指揮官なら安心だね」


 編成はリールに任せているが近衛隊が多い分近衛隊の指揮官を付けているのだろう。


「あ、まもなくマンフレート邸が見えてくると思います」


 そう言われ僕は馬車の窓に顔を寄せた。

 貴族街の大きな道を抜けると大きな石造りの塀と鉄製の門で囲まれた巨大な屋敷が見えた。

 マンフレート邸だ。


「帝都における北部勢力の活動の中心地として巨額を投じて建設されました。大貴族の屋敷を建設できる土地を10個分使用し屋敷はもちろん1万の兵を収容できる兵舎・1年分の食料を貯蔵できる貯蔵庫を備えています」


 やはりフォーク家と肩を並べるマンフレート家の力を感じた。

 周りの屋敷が小さく見え皇宮さえも兵の高さでは劣る。


「第五皇女殿下の隊列である!開門せよ!」


 先頭を進むエレナさんが大きな声で門の横にいる兵に言った。

 今回は監視の目をごまかすため軍の指揮官ではなく皇女として来た。


「了解しました!内門・外門開門!」


ゴー


 音を立てながら重そうなもんが開いた。

 門が完全に開くと隊列は中に進んで行く。

 馬車が中に入ると全様が見えた。


「帝都にこんなものを用意してるなんて思わなかった」

「我らフォーク家が北部の山岳部を治めるならマンフレート家は南部との接続点であるわずかな平野部を治めています。政治をつかさどる家として備えは色々と用意しているそうです」


 中には石造りの巨大な邸宅を中心として正面に豪華な庭園、右に貯蔵庫が左にいくつもの巨大な兵舎と練兵場がある。

 まるで小さなヴェスターだ。

 

「ここが僕たちの作戦本部か」



次回投稿は金曜日になります。


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