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63話 ブローチ

「似合ってます!少しきらびやかさが足りませんがデザイン自体は悪くないと思います!」

「そうかな?アクセサリーなんて久しぶりに付けたけどなんか動きにくいや」


 僕たちは店員が見繕ってきたアクセサリーを1つずつつけて品定めをしていた。


「おしゃれには苦労がつきものですからね」

「ん~おしゃれはわかんないな~」


 女子としての嗜みを理解できないのは結構つらい。

 楽しみが違えば社交界でも苦労するだろうし今度いろいろと帝都の令嬢の文化に触れてみよう。

 他の令嬢が流行りのドレスの話をしている中包囲戦の戦術についてしゃべるわけにもいかないし。


「リールはどう?」

「ない方が動きやすいですがこの程度でしたら戦闘に支障はないと思います」


 リールは軍服に付ける用のブローチを見繕ってもらった。

 金でできた鳥のブローチだ。

 

「それいいね。動きやすそう」

「まったく、、、お二人は武器を買いに来ているんですか?おしゃれには我慢と努力が必要ですよ」

「それはわかってるんだけどな~どうしても動きにくくなると不安なんだよね~」

「ここは戦場ではありませんよ」

「わかってるんだけどね~あ!そうだ。リールのやつとおそろいのやつにしようかな?」


 僕がそう言うとハンナは少し考え込んで言った。


「まあそこまで動きやすいのがよいのでしたら私が何とかしましょう」

「ありがとう!」

「店員さん」


 ハンナは店員を呼んだ。


「彼女に見繕ったブローチのおそろいはありますか?」

「あ、それならおすすめがありますよ」

「ではそれをお願いします」


 店員はしばらくしてそれを持ってきた。


「こちらになります」

「おお!」


 そのブローチはリールのと形・大きさは一緒だが金ではなくガラスでできていた。


「ガラスのブローチは珍しいですね」

「こちらは帝都で有名なガラス職人が作ったものになります」

「へ~帝都にもこんな職人がいるんだ」


 正直意外だった。

 北部の職人と比べても見劣りしないものを作れる職人が帝都にいるとは思わなかっからだ。


「それがその職人がとても頑固者として有名でして数年に1度作品を流してその金で自分の納得いく作品を作っているんだとか」


 ファスターを思い出した。

 彼も納得のいかない出来のものは軍に卸さずそのまま溶かして作り直している。

 彼の場合作っているのは武器・防具だから使用者の安全ことも考えてなのだろうがこのブローチの作者はきっとそれ以上に頑固なのだろう。


「ですがその分あるのはこれだけで値段が少し張ってしまいます」

「いくらですか?」

「金貨200枚になります」

「200枚!?」


 帝都の一般的な貴族向けの店にしては高い。


「当店で一番高い商品になります」

「買います」

「え?!」

「え?!」


 ハンナと店員が同時に驚く。

 まあこんな大金普通の令嬢は即決で決められるものではない。


「この場で払います。これで」


 そう言って僕は袋を店員に渡した。

 店員は袋いっぱいに入った金貨を見て驚きつつも確認完了の挨拶をした。


「か、確認しました。お買い上げありがとうございます!」


 我ながら今回はいい買い物したな。


「これからどういたしますか?」

「ん~もう用事は済ませたし帰ろっかな」

「了解しました」


 僕たちは帰路に就いた。



ー-------



「おかえりなさい」


 帰るとお母さまがお菓子を用意して待っていた。


「ただいま」

「お茶を用意してあるわよ。リールちゃんとハンナちゃんもどうぞ」

「え?!私もいいんですか?」


 ハンナが驚きの声を上げる。

 昨日まで奴隷だった自分が皇妃と同じテーブルにつくのは無礼だと考えたのだろう。


「もちろんよ。カーナの友達だもの」

「ありがとうございます!」


 それから僕たちはつかの間の休息を楽しんだ。


コンコンッ


 ハンナとお母さまがファッションの話で盛り上がり始めたころドアがノックされた。


「重要報告です」


 重要報告、作戦にかかわる優先度の高い報告だ。

 恐らくあれのことだろう。


「どうぞ」

「はっ!」


 ドアが開いて2人組が入ってきた。

 重要報告は確実に情報を届けるために伝達兵に護衛が1人つく。


「報告をお願い。ここには外部の人はいないからそのままで大丈夫」

「了解しました。では報告させていただきます。専用暗号文で帝都内から発信されたものです。「果実がかごに1つ入った。へたを取り果物屋で買い手の到着を待つ」です」


 やっぱりそうだ。


「これを解読すると「北部貴族連合第1陣が帝都に無事到着、予定通り陣営設立に向け行動を開始した。会談は事前通告さえあればいつでも大丈夫とのことです」」

「遂にか」

「返答はいかがいたしますか?」

「暗号なしで普通のティーパーティーに参加するように見せかけて明日行くと伝えて」

「了解しました。ではこれで」


 そう言うと伝達兵と護衛は出て行った。


「北部の貴族が到着したの?」


 お母さまが聞いてくる。


「うん。全部で5陣に分かれて僕の社交界デビューまでに来る予定だけど今回はその第一陣が来たみたい」

「そう、無事に到着してよかったわ。途中で他の陣営に襲撃されるかもしれないと思ったから」

「大丈夫だよ。お母さま。護衛には軍の精鋭が500人規模でついてるから」


 今回の貴族連合移動には兵力の充填も含まれている。

 全5陣で2500人の先鋭北部兵が帝都に入城する。

 他陣営があからさまに兵力で脅してくることも一応想定しなければならない。

 先鋭兵はほとんどが近衛隊と第一軍団から選抜されているから護衛隊と合わせた2600人いれば帝都のどんな軍を持つ陣営にも対等に戦える。

 特に第1皇妃と第4皇女が率いる貴族派陣営は各貴族の私兵で構成される数万の軍がいると報告が上がっている。

 兵力を帝都に移動しておくに越したことはないだろう。

 だがヴェスターでは今頃王国への大規模逆侵攻が開始されたころだろう。

 無駄に兵力を引き抜いて迷惑はかけられない。

 兵力補充は恐らくこの5陣で最後だ。


「貴族派陣営の軍、、、一度見てみたいな」

「私も興味があります。どれくらいの実力なのか把握しておいて損はないでしょう」

「そうだね。今度いろいろ探ってみよう」


 そう言って僕はお菓子をつまんだ。

 これから始まる壮絶な戦いに備えて。

次回投稿は火曜日になります。


読んでくれてありがとうございました!



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