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60話 落札

「では残りの白金貨900枚、確かに受け取りました」

「ではこれで彼女の所有権は完全に僕のものですね」

「もちろんです。こんな高額落札当会場では初めてですよ。今度ともよろしくお願いいたします」


 僕は何も言わずにオークションお会場の応接室を立ち去った。

 

「帰ろう、リール」

「はい」


 僕は外で馬に乗りお母さまの屋敷に帰った。

 後ろには落札した彼女が乗っている馬車がついてきている。

 日はすでに沈んでいて帝都の夜風が馬で駆けている僕に当たる。


「ばかばかしい、、、」


 今日の一連の出来事を思い出すと心底ばかばかしいと思う。

 帝都の愚かな文化を散々体験してもっと南部が嫌いになった。

 帰ろう、、、



ー-------




「お帰りなさいませ、姫様」

「ただいま」


 屋敷の門を見張っていた護衛隊が挨拶してくれる。

 僕は庭で馬から降りて手綱を屋敷の馬係に渡す


「あ、馬車に貴族の令嬢が乗ってるんだけどその令嬢は僕の部屋に連れてきて」


 さっき話しかけてきた護衛隊にそう言う。


「了解しました。すぐにでいいですか?」

「そうだね。正装に着替えるだけだからすぐでいいよ」

「了解です。馬車と馬を切り離したらすぐにお連れします」

「うん、よろしくお願い」


 僕はそのまま馬車を横切って屋敷に入る。

 馬車は目立たないように帝都で一般的な馬車をオークションお会場で借りてきた。

 明日護衛隊の誰かに返しに行かせよう。



ー-------



「よし、すぐ来るし急ごう」


 僕は自分の部屋に戻ってから

 軍の司令官の正装に着替えた。

 普段は着ない豪華な装飾が施されたものだ。

 中でも僕のは専用に作られた最高司令官の制服だ。

 胸には僕の紋章とリールからもらったフォーク家の家紋のバッチがついている。

 肩には最高指揮官の身分を示すオリハルコンの肩章がついている。


「これで体裁は繕えたかな」


 部屋にある銀の鏡を見て言う。


トントンッ


「殿下、護衛隊が例の令嬢を連れてきました」


 ドアがノックされて外で待っていたリールが報告する。


「わかった。全員入って」

「かしこまりました」


 ドアが開いて令嬢とリールが入ってきた。

 令嬢を連れて来た兵は馬の管理をするために庭に帰った。


「さてと、まずは自己紹介頼める?」


 僕は令嬢に言った。


「はい、ご主人様。元バーレル公女のハンナです。奴隷になったので家名は無くなりました」


 彼女は光のない虚ろな目でこちらを見ながら言う。


「わかった、ありがとう。じゃあお礼にこれをあげるよ」


 僕はリールから書類を受け取って彼女に渡した。

 その書類を受け取ると彼女は目を大きく見開いて驚いた。


「これはっ!これは私の権利書じゃないですか!」


 そうだ。

 僕は今奴隷である彼女に彼女自身の所有権を渡した。


「そうだよ、君は奴隷として僕に買われたけど今僕は君に君自身の権利を譲渡した。つまり君はもう自由市民だ。法的にも実務上も奴隷じゃなくなった」


 そう言うと彼女は状況が理解できていないのか固まっていた。

 しばらくしてゆっくり口を開いた。 


「な、、ぜ、、、何故ですか?私を買うのに白金貨1000枚を使ったと聞いています。そんな大金を使って何故、、、」


 彼女は聞いてくる。

 

「白金貨なんて大金でも何でもないよ」

「え?」


 彼女はまだ理解できていないようだった。


「じゃあついてきて」


 僕は部屋を出た。

 僕は屋敷を出て馬車を集めてある小屋に行った。

 

「姫様、お出かけですか?」

 

 警備をしていた兵が聞いてくる。


「いや、ちょっと彼女に荷馬車の積み荷を見せたくて」

「、、、そういうことですか。ではどうぞ」


 兵は全て察したように小屋の扉を開けた。


「ご主人様、ここは、、、」

「もうご主人様じゃないよ」


 そうだ、彼女はもう自由市民の身分を手に入れている。

 僕がご主人様と呼ばれる筋合いもない。


「しかし、、、」

「まあいいや、とにかくこっち来て」


 僕は彼女を荷馬車の真後ろに呼び寄せた。


「はい」

「よし、開けて」


 彼女が僕に寄るとリールに荷馬車の後ろを開けるように言った。


「了解しました。殿下」

「え?今殿下っt、、、」


バタンッ!


 荷馬車の後ろが開いた。


「ッ!」


 彼女は中身を見て絶句した。


「これはっ!」


 彼女が驚くのも仕方ないだろう。

 彼女の目線の先には荷馬車いっぱいに乱雑に積まれた金銀財宝があるのだから。


「これは一体!」


 彼女は聞いてきた。


「何って、僕の財布だよ」

「ッ!」


 嘘は言っていない。

 この中から少し持ち歩いているだけでこれらすべては僕が自由に使える。

 おじい様と軍からのおこずかいのようなものだ。


「あなたは、、、あなたは一体何者なんですか?」


 彼女は真剣な面持ちで聞いてきた。


「自己紹介が遅れたね。僕はカーナ・フォン・ベルヘルツニア、ベルヘルツニア帝国第五皇女にして北部軍最高指揮官、人からは北部の姫と呼ばれている」

「北部の、、、姫!」


 彼女は僕に期待、、、いや、崇拝に近い目を向けてきた。

 

「早速だけど僕と契約しないか?」

「契約?」


 彼女は突然の提案に戸惑っている。





「そうだ。契約の対価は、、、バーレル大公の座と君を奴隷にしたすべての人の首でどうかな?」

次回投稿は火曜日になります。


読んでくれてありがとうございました!



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