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59話 公女

「後半最初の商品はこちらです!」


 司会が商品を再び紹介し始める。


「こちらは新大陸から運ばれてきた珍獣になります!」


 やはり珍獣が出て来たか。

 にしても北部は珍獣なんてお目にかかることはないから少し興味が湧くな。


「こちらの珍獣は普通の猛獣と魔獣が交わって誕生したと現地人の間では言われています」


「へ~面白いね」

「はい、魔獣は今ではほとんど見ませんしましてやそれと普通の猛獣が交わったとなれば更に珍しいですね」


 今度珍獣の市場にでも行ってみるか。

 帝都には専用の市場があるらしいからね。



 それからしばらく珍獣が連続で出てきた。

 どれも高額で落札されていく珍しい物ばかりだった。



「お次は珍獣ではありません!しかし珍獣以上に価値のあるものです!」


 流れが変わった。

 今までとは違うジャンルのものだろう。


「これが言ってた後半の違うジャンルかな?」

「恐らくは」


「残念ながら今回は1品しか用意できませんでしたがそれでもご満足いただけるほどの上物でございます」


 1品でこのオークション会場を満足できるほどものか。

 相当なものだろう。


「ではご覧ください!元バーレル公国の公女です!」


ジャラジャラッ


 僕はその情景にどこか見覚えがあった。

 先ほどの倉庫からリードにひかれて何かが搬入されていく情景だ。

 珍獣だと思っていた。

 だが今になって考えてみるとおかしい点だらけだ。

 檻に入っていないし皮のリードなんて強度が不十分すぎる。

 まさか、まさかこんなだとは思わなかった。


「まさか、、、奴隷だなんて」


「これは幼少期より公国の跡継ぎとして育てられてきましたが1年前にこれ以外の一家が暗殺されると親戚に大公の座を奪われ奴隷として帝国に流されました!」

「おお!」

「ぜひ欲しい!」

「今まで見た中で1番の上物だ!」

「これは滅多にお目にかかれないぞ!」

「生涯において1度お目にかかれるかどうかの代物です!金貨200枚から!」


 僕は固まった。

 知らず知らずのうちに椅子のひじ掛けが傷つくほど強く掴んでいた。

 息がうまくできなかった。

 幼少期は屋敷から出ず、北部で生きてきた僕はこれを見たことがなかった。

 人はここまで残酷になれるのか、、、


「ど、、れい、、、」


 目の前に広がる状況を理解するのに時間がかかった。

 人がありとあらゆる権利を取り上げられ物として取引される、、、

 隣を見るとリールも同じように固まっていた。

 北部生まれ北部育ちのリールも見たことがないのだ。

 

「金貨250枚!」

「私は金貨300枚出すぞ!」


 人が、、、

 人が競り落とされていく、、、

 

「ッ!」

 

 恐怖と悲しみの後に怒りが湧いてきた。


「さあ!殺すも生かすも落札したあなた次第!上流階級のマナーも完璧です!給仕にしても良し!少し若すぎますが妾にしても良し!さあどんどん札をお上げください!」


「金貨400枚!」

「金貨500枚!」


 競り落とそうとする客すべてに欲望が見えていた。


ドサッ


「殿下、、」


 僕は立ち上がった。


「リール」

「はい」

「札を頂戴」


 僕を見てリールも動揺を治めて札を渡す。


「金貨600枚!」

「金貨600枚出ました!他にいらっしゃいますか!」

「金貨1000枚出しましょう」


 さっき「揺れる現世」を落札した匿名の令嬢だ。

 金貨1000枚は屋敷が1軒買える。


「VIP様から金貨1000枚出ました!」


トントンッ


 僕は椅子から離れバルコニー席の端、手すりに向かった。


「これ以上いないようなのでこの奴隷はVIP様にらくさつさr、、、」


 なめるな。

 この僕の前で実力を否定し、無能な南部の豚どもが僕と同じくらいの可憐な少女を手に入れようとするなんてあってはならない。

 僕の、北部の財力をなめるなよ。


「白金貨1000枚!」


 司会の木槌が振り下ろされる寸前に僕の声がオークション会場に響いた。


「何だと!?」


 落札寸前で邪魔をされたさっきの令嬢が僕の方を見上げる。


「今白金貨って言ったか?」

「そんな馬鹿な」

「そんな大金皇室でも出せないぞ」


 会場はどよめきで包まれる。


「お、お客様、申し訳ありませんがもう一度よろしいでしょうか?」

「聞こえなかった?”僕は白金貨”1000枚と言ったんだ」


ザワッ!


 会場がもう一度大きなざわめき包まれた。


「嘘よ!そんな大金払えるわけない!」


 あの令嬢だ。

 席を立ちあがって僕の方を睨んでいる。

 確かに帝都に住む貴族からしたら異常な値段だろう。

 だが、


「嘘じゃない。そんなに疑うならこの場で払ってやる」


 僕は席に戻り袋を取った。

 この中にはちょうど白金貨が100枚入っている。


「これだ!」


 僕はそう言ってバルコニー席から袋を投げ出した。


ジャラジャラッ!


 袋は口が開き中の白金貨を空中に吐き出す。


「おお!」

「本物の白金貨だ!」

「本物だ!」


 下にいた他の客が落ちた白金貨を拾って本物か確かめる。

 プラチナは他にはない輝きを持っている。

 一度見たことある者なら見間違えはしない。


「北部製の白金貨だ!普通のよりもっと価値があるぞ!」


 北部製だと気づいた者がそう言う。

 北部製の貨幣は純度が高く南部の劣悪な物と比べると数倍の量のプラチナが含まれている。

 白金貨は普通の金貨の約100倍の価値があるからそれも含めるとあの令嬢が提示した額の数百倍払ったことになる。


「これで10分の1払った!残りは係が取りに来い!」

「ッ!」

「ッ!」


 さっきの令嬢も司会も呆気に取られている。


「これで落札でいいんだな?」

「あ!し、失礼いたしました!もちろん落札です!」


 よかった。

 1階席は降ってきた白金貨で大騒ぎになっているがその中で僕は安堵した。


 こうして僕の初めてのオークションは終わった。


次回投稿は日曜日になります。


読んでくれてありがとうございました!



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