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58話 オークション会場

「19番か~」


 リールに手渡された番号札を見て言う。


「どうやらバルコニー席は小さい数字のようですね」

「と言うことは僕たちの他にも結構バルコニー席いるんだね」

「そのようですね」


ドンドン!


 太鼓が鳴らされる。

 オークションを盛り上げるための演出だ。


「まず最初の商品はこちらです!」


 司会役がそう言うと舞台裏からスタッフがカートを押して出てきた。


「剣か」

「そのようです」


 カートに乗っていたのは剣だった。


「こちらは帝都一の名匠、ルクス・アレルドが作った名剣になります!」

「おお!」

「おお!」

「おお!」


 会場からは歓声が上がる。


「名剣には普通名前がつくものですがこちらの剣は作られたばかりなのでありません!今回競り落としていただいた方に命名権も差し上げます!金貨5枚から!」

「おお!」

「おお!」

「おお!」

「おお!」


 会場からは更に大きな歓声が上がる。

 この司会、商売上手だ。

 だけど、、、 


「作ったばかりなのに名剣?」

「何故でしょう?」


 そうだ、普通名剣は無数の戦場を潜り抜けてきた物に付けられる称号。

 作られたばかりの新品に付けていいようなものではない。


「どうやら帝都ではそういうものらしいですね」

「どういうこと?」

「恐らくあの剣は観賞用です」

「観賞用?」

「帝都の貴族の間では剣は戦いの道具ではなく観賞用という認識らしいです。その剣の価値はどれだけきらびやかに、美しくできるかで決まるようです」


 そういうことか。

 

「なんか腹立ってきた、僕たちが戦場で刃こぼれを起こすたびにより高い性能を探求してきたのに帝都では試し切りすらしないとは」(こちらの方がよろしいかと)

「ですね」


 その剣はその後僕たちと反対側のバルコニー席に座っていた貴族が金貨10枚で買い取った。

 使えもしない剣に金をかけるなんて馬鹿げていると思うがまあそれが彼らの価値観なのだろう。


「お次は名画「揺れる現世」になります!芸術をたしなまれている方なら必ず一度は聞いたことあるような代物です!こちらは金貨30枚から!」


「絵か~興味はないけど社交界デビューするなら買っといたほうがいいのかな?」

「そうかもしれませんね。ですが私も芸術なんて嗜んだことないのでわかりません」

「だよね~」


 北部は合理主義のため芸術などはほとんどない。

 帝都は別名芸術の都と言われているが正直言って芸術とは無縁だった僕にはさっぱりだ。


「おお!これはすごいぞ!」

「はい!あの「揺れる現世」ですぞ!」


 他の席からは歓声と熱気が上がってくる。

 すごいのだろう。


「まあ今回は見学だしいいや」

 

 今回は見送ることにした。

 

「金貨50枚!」

「いや!私は金貨60枚出すぞ!」

「私は70枚!」


 値段はどんどん上がっていく。

 相場調査で金貨10枚は家数軒分の価値があるとわかったからこの絵はそれだけ貴重なものなのだろう。

 にしても際限なく上がっていくな。


「噂ではオークションで破産しかけた貴族もいるとか、、」


 リールが言った。


「貴族が破産しかけるって、、、相当な、、、」


 オークションはギャンブルと同じような中毒性があるな。


「金貨200枚!」


 そんなことを考えていると突然値段が2倍以上に上がった。

 突然の高額入札に会場がざわつく。

 

「金貨200枚が入りました!他の方いらっしゃいますか?」


 司会がこの額以上の入札者がいないか確かめる。

 

、、、


 会場は静まり返った。

 金貨200枚は南部では大金だ。

 そうそう出す人もいない。


「いないようなのでこの名画「揺れる現世」は落札されました!」


パチパチ!


 所々から拍手が上がる。

 どうやらこの絵を落としたのは地上エリアの中央にあるVIP席の貴族の令嬢のようだ。

 恐らく彼女も匿名で参加しているのだろう。

 にしても200枚を簡単に出せるのは相当な財力だ。

 北部では毎日使うような額ではあるが帝都では普通滅多にお目にかかることない大金だ。



 それから何個もの商品が落札されていった。

 ジャンルは様々だがどれも高額という共通点があった。

 


「それではこれよりしばし休憩時間となります。後半に備えごゆるりとお休みください」


 休憩時間になった。

 僕は見学していただけだから疲れなかったが参加していた人は怒号を投げあって疲れたのだろう。


「ちょっと外の空気吸ってくる」

「私もお供します」


 僕がそう言って立ち上がろうとするとリールがついてこようとする。


「いや、いいよ。エントランスの前に出るだけだから」

「しかし、、、」

「いいって」


 ついてこようとするリールを半ば強引に部屋においたまま僕は外に出た。

 

「やっぱり南部の外の空気はいいな~」


 ヴェスターでは冬は外に出て空気を直接吸うと肺が凍ってしまうことがあるほど寒い。

 だから年中温暖な空気が漂う南部は気持ちがいい。


「さて、そろそろもど、、、」


 僕はエントランスから離れた搬入口に目を引かれた。

 

「なんだ?あれ」


 係がオークション会場の隣にある倉庫からリードのようなものを掴んてオークションお会場に入っていった。

 僕が振り向いたときにはすでに係の体の半分がオークション会場の建物に隠れていたためリードの繋がれているものは見えなかった。


「別大陸の珍獣か?」


 帝都貴族の間ではとにかく珍しい物の需要が高い。

 別の大陸から運ばれてくる珍獣をペットにすることも流行っていると聞くから恐らくそんなところだろう。


「まあいいや」


 あまり長居するとリール達が心配してしまう。

 一応剣は持ち歩いているから大丈夫だと思うけど一応帝都では気を抜かないでおこう。



ー-------



 僕はバルコニー席に戻った。


「ただいま」

「おかえりなさいませ」


 帰るとリールが新しいジュースを用意していてくれた。


「そういえばさっき飲み物を取りに行ったときに聞いたのですが後半は前半と違うジャンルの商品が出るとか」

「違うジャンル?」

「はい、詳しい内容はわかりませんでしたが前半とは雰囲気を一新するとか」

「へ~じゃあ僕が欲しいと思う物もあるかもね」

「そうですね」


「皆さま、それでは後半を始めたいと思います」


 司会が再び台に上がり客を盛り上げ始めた。

次回投稿は金曜日になります。


読んでくれてありがとうございました!



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