57話 帝都散策
「どこ行っか?」
なんとなく歩き始めてみたはいいものの帝都について全く知らないからどこを散策すればいいのかわからない。
「この時間になると食品街で市場が開かれるのでそこに行ってみてはいかがでしょう?」
「いいね!行こう!」
さすがリール。
事前情報もしっかりしている。
僕たちは馬に乗って食品街に向かった。
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「活気あるね~」
「そうですね。北都とは違う賑わいです」
食品街に着くとそこは活気にあふれていた。
多くの露店が並び様々な人が食品を買っている。
郊外で採れた取れたての野菜から焼き立てのパイまで様々だ。
「そういえば食品街にしては大きな建物があるけどあれ何?」
「あれはたしかオークション会場ですね」
「オークション会場?」
「はい、食品街はオークションエリアも兼ねていて大小様々なオークション会場があります」
「へ~、せっかくだし後で行ってみよう」
「はい、オークションはこの時間帯に始まることも多いですしちょうどよさそうですね」
僕たちはそれから馬を降りて馬を引きながら歩いて散策することにした。
「これおいしそう!」
露店でおいしそうなパイを見つけた。
まだ焼き立てだ。
「これ食べたい!」
「かしこまりました。私たちも食べたいので5つお願いします」
リールが5つ買ってくれた。
「おいしい!」
「そうですね。焼き立てのパイはヴェスターではあまりお目にかかれませんしその分おいしいですね」
「うん!」
ヴェスターではいつも保存のきくように堅いパンの状態で運ばれてくることが多い。
クルヴァ併合でそれももうすぐ解消されるがこんなやわらかいパンは帝都だけだろう。
「やっぱり食ではいつまでたっても南部に勝てないな~」
「まあそもそも食料自体そろえるのだけで精一杯ですからね」
「だね~」
北部に帰ったら食事情も改善しなきゃな~
「ごちそうさま!」
僕たちは仕事の疲れもあってパイをすぐに平らげた。
「オークション行こう!」
「かしこまりました。行きましょう」
食べ終えた僕たちは馬を引いてオークション会場に向かった。
「オークションって言ってもなに扱ってるの?」
「様々ですね。普通は特にジャンルを決めず売主が出したものを順番にオークションにかけていきます」
「へ~じゃあせっかくだし大きいところ行ってみよう。そこならいろんなものあると思うし」
「そうですね。行きましょう」
僕たちは近くで1番大きなオークションお会場に向かった。
「大きな~」
近くに行くと大きさがわかった。
北部の建物ほどではないが皇宮に迫る大きさだ。
ドーム状の建物にはきらびやかな装飾がしてある。
「ここでいいかな」
「行ってみましょう」
僕たちは大きな木の扉に手をかけて入ろうとする。
「ちょっと待て」
扉の横にいた警備兵にとめられた。
「ここは上流階級用のオークション会場だ。一般人は入れない」
あ~
そういう決まりあるんだ。
確かに入っていく人も小綺麗な格好ばっかりだ。
「リール」
「かしこまりました」
リールは白金貨の入った袋を開けて見せた。
「今回閣下はお忍びで来ている。邪魔するな」
「し、失礼しました!」
警備兵は驚いて謝る。
後ろのエレナさん達は外套を脱いで金糸で飾られた軍服を見ると更に驚いて僕たちを通した。
「行こう」
「はい」
扉を入るとエントランスに出た。
天井にはきれいなシャンデリアがつるされ、所々にきらびやかな装飾が施されている。
さすがは上流階級向けのオークション会場と言うところか。
「ようこそいらっしゃいました!ご案内いたします。こちらへどうぞ!」
入り口のやり取りを見ていた係が僕たちを案内する。
「2階のバルコニー席が空いていますので是非そちらに!」
バルコニー席に案内された。
余程あの白金貨が効いたのだろう。
「なにかありましたら何なりとお申し付けください」
そう言うと係は出て行った。
バルコニー席は個室になっているためここではいろいろと話していてよさそうだ。
「にしても驚いたよ。こんな広いなんて」
「そうですね。私も驚きました」
僕たちがいるのは2階のバルコニー席だがその上にもまだバルコニー席がある。
その前には大きな空間が広がり、ドーム状の天井には何個もシャンデリアがついている。
「劇場みたいだね」
「そうですね。オークション用の司会台を除けばほぼ劇場ですね」
「そういえば飲み物頼めるんだっけ?」
「確かそうだったと思います」
この席に来る途中係が言っていた。
ちょっとした料理や飲み物が頼めるらしい。
「人数分の飲み物頼もう、おごるよ」
「ありがとうございます。注文は私がしてきても?」
「いいよ」
「では行ってきます」
リールは外に飲み物を注文しに行った。
「エレナさん、警備は大丈夫?」
「はい、確認終わりました。安全そうです」
エレナさんに警備を確認した。
「案内された個室で刺客が隠れていたなんてことがあったらたまらないからね」
「帝都にいるときは屋敷以外気が抜けませんね」
「そうだね」
帝都ではお母さまの屋敷以外安全な場所はないと思っている。
いつどこに誰の刺客が潜んでいるかわからない。
お母さまの屋敷にいる人と北部のみんな以外信用できない。
「姫様、始まるようです」
「お!やっとだね」
トントントンッ
ドアがノックされる。
3回のノック、リールだ。
味方と敵を識別するための軍の合図だ。
ガチャ
「ただいま戻りました。殿下、ジュースでよかったですか?」
「うん、それでいいよ。ありがとう。ちょうど始まるよ」
リールも来てみんな席に着いた。
「あ、そうだ。殿下これを」
「ん?」
「この席の札です」
リールがオークション用の札を渡してきた。
この札を挙げて競りを行うのだ。
今回は基本見学しに来ただけだが何かいい物があったら落としてみよう。
「ありがとう」
札を受け取るとちょうどオークションが始まった。
「皆さま、今回は我がドーエル商会のオークション会場にご来場いただき誠にありがとうございます!今回は滅多にお目にかかれないような品も用意しておりますので是非お楽しみください!」
プライベートの予定が入ってしまい1週間ほど家を空けることとなりました。
そのため次回投稿は来週の火曜日(8月16日)になります。
投稿が空いてしまい申し訳ありません。
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