56話 激務
「殿下、朝ですよ」
「わかったぁ~」
僕はあくびをしながらベットから起きた。
あの後手続きをして家に帰りそのまま寝た。
匿名での物件購入にはいろいろと手続きがあって思った以上に時間がかかったからだ。
あの後帝都を少し散策しようと思っていたが結局時間的にできなかった。
「帝都は朝早いね」
「そうですね。ヴェスターより少し早いですね。まあそれでも起きない理由にはなりませんよ」
「ギクッ!」
二度寝しようとする僕をリールが鋭い目で止めた。
「一階で皇妃様がお待ちです」
「わかった。じゃあ行こう!」
僕は重い腰を上げていつものワンピースに着替え、部屋を出た。
隣のリールの部屋を通り越して階段を降りる。
「それにしてもこの屋敷ぼろいね」
「そう言わざるを得ませんね」
廊下は歩くたびにギシギシと音が鳴り、壁は修復を繰り返した跡が残っている。
第一皇妃が嫌がらせで一番ぼろい屋敷をあてがったのだろう。
「おはよう、カーナ、リールちゃん」
「おはよう、お母さま」
「おはようございます、皇妃様」
ガラスで囲まれたテラスでお母様は待っていた。
テーブルには3人分の朝食がもうすでにそろっていた。
「さあ、いただきましょう」
「うん!」
僕たちはきれいに並べられたスープと卵料理・パンを頬張った。
お母さまのシェフはやっぱり凄腕だ。
料理一つ一つに工夫が凝らされていてとてもおいしい。
「そういえば今日はどうするの?」
お母さまが聞いてきた。
「今日は色々と調達したいものがあるからいろんなところを回ろうと思う。あとついでに帝都を散策したいな」
「そう、ならお弁当持っていくといいわ。用意させるわ」
「ありがとう!お母さま!」
ちょうどお昼に何食べるか迷っていたところだ。
「あ、でも数十人分なんて用意できるかしら?」
「大丈夫だよ。今日は護衛はリールとエレナさんと数人だけだから」
「そんなに少なくて大丈夫なの?帝都は土地勘もないでしょ?」
心配される。
それもそのはずだ。
僕は今帝都で一番暗殺の危険にさらされている身だ。
だが、どんな暗殺者が飛び掛かって来ても帝都の戦場を知らないチンピラなど王国兵から「一騎当千の虐殺者」と恐れられているエレナさんの敵ではない。
「大丈夫だよ。今日は移動も多いし少人数の方が動きやすいし」
「そう、、、なら気を付けてね」
「うん!」
ー-------
「ごちそうさま!」
「もう行くの?」
「うん、時間は貴重だからね」
僕たちは朝食を食べ終わり席を立った。
お母さまのシェフからお弁当も受け取ったし準備は万端だ。
「じゃあ行ってきます!」
「行ってらっしゃい。気を付けてね」
「うん!」
ー-------
「姫様、出発準備はできています。さっきおとりが出発して尾行も撒きました」
「了解、じゃあ僕たちも出発しよう」
「了解しました」
外に出るとエレナさんが準備を終えて待っていた。
後には今回の護衛の2人もいる。
今回は僕・リール・エレナさん・他2人の計5人で行く。
おとりも出発したようだしそろそろ行こう。
「出発!」
僕たちは屋敷の門を出た。
「まずどこにします?」
今日はやることが山ほどが何を先に終わらせるかは決めていない。
「じゃあリール、やることリスト読み上げてくれる?」
「はい、帝都でも護衛隊の服装調達・帝都の裏社会把握・北部貴族の各屋敷との道確認・ダミーに使う武器の調達・諜報用の馬調達・諜報部隊との定期情報交換・第一皇妃の兵力把握・皇宮の警備把握、以上になります」
「うわー!聞くだけで頭が痛くなりそう」
「いくつかは事前に潜入している諜報部隊がほとんど終わらせています。ですがそれでも多いですね。いくつか後日に回します?」
「いや、今日終わらせよう。僕の社交界デビューが迫ってるからね。それまでには体制を整えなきゃいけないし」
「かしこまりました」
「よし!まずは服装調達からだ!」
「了解!」
エレナさん始め護衛隊が元気よく返事をする。
ー-------
「はあ、はあ、やっと終わった、、、」
ドサッ!
日が沈み始める前にに僕はやっと仕事を終わらせ、広場のベンチにもたれかかった。
「ぜぇ、ぜぇ、やっとですね、、」
リールも疲れたようだ。
「こんな激務戦争でもありませんよ」
エレナさんも噴水のふちに座り込んでいる。
「だね、、でもこれで普通は4日かかる仕事を1日で終わらせた。明日からはもう少しましになるでしょ」
「そうですね」
周りでは護衛隊のみんなも馬にもたれかかっている。
「どうしますか?夜までには時間がありますけど」
日が沈み始めるまでにはまだ時間がある。
疲れているがせっかく時間が余っているのだ。
少し散策してみよう。
「せっかくだし散策しよう。みんなはここにいていいよ」
「いけません。我々もついて行きます!」
「エレナさんがさっきまでの疲れが嘘のように飛び起きて言った」
「でも、、、大丈夫?」
「問題ありません!お前らもそうだろう!」
「はい!」
「はい!」
後ろの2人も同じく飛び起きて言った。
みんな相変わらずだ。
「じゃあ行こう!」
「了解!」
「了解!」
「了解!」
「了解!」
僕たちは活気あふれる帝都に踏み入った。
次回投稿は水曜日になります。
読んでくれてありがとうございました!
もし面白い・続きが読みたいと思っていただけたらブックマークや広告下の☆☆☆☆☆でポイントを入れていただけるとうれしいです!
評価はモチベに繋がりますのでよかったらお願いします!