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55話 金銭感覚

「しょ、商会長が何故?」


 目の前にいるのは不動産エリア一番の商会の商会長だ。

 まだ名乗ってもいないのになんでいきなり商会長が出てくるんだ、、、


「いえいえ、このような平民の身でもわかりますとも、その外套、見たこともないような上質なものです」


 そうか?

 一応改革で新しく作った北部軍の標準装備だが北部では一般的な品質だぞ?


「そのような上質なものを身にまとわれている方と言えば貴族様以外におりません」

「、、、いいカモフラージュだと思ったんだけどね」


 どうやらこの外套は南部では超上質なものに該当するらしい。


「今回はどのようなご用件でいらっしゃいましたか?」

「ああ、そうだった」


 外套が上質だと言われて本題を忘れていた。


「とりあえず外套は脱がせてもらうよ。リール」

「はい、閣下」


 リールに脱いだ外套を渡した。

 リールは僕の身分を隠すために殿下ではなく閣下と呼んだ。


「そちらの服、、、」

「ん?ただの普段着だよ」


 男物の服を貴族令嬢が来ているのが珍しかったか?

 今着ているのは北部軍の軍服だ。

 南部に北部軍の制服を知っている者なんていないと思っていたが知られたか?


「そちらの服も見たことがないほどに見事でございます」


 ああ、そっちか


「別に特別なものではないよ。それよりそろそろ注文いいかな?」

「あ、失礼しました。本日はお屋敷をお買い求めでしょうか?」


 やっぱり貴族だから屋敷を買いに来たと思われている。


「いや、今日は平民が使うような一般的な物件を買いに来た」

「平民が使うような、、ですか?」

「匿名で複数の物件を買いたい。これで買えるだけの数を頼む」

「かしこまりました。予算はどれほどでしょう?」

「リール、予算を」

「了解です」


 リールが僕とトーリ商会長が挟むテーブルに予算の入った袋を置いた。

 リールが袋の口を開くと中からプラチナのコインが溢れた。

 北部製の白金貨だ。

 北部と南部では使われているコインが違うが同じ白金貨だし使えるだろう。


「これは!?」

「ん?どうかしました?やっぱり南部ではこれは使えませんか?」

「っ!」

「トーリ商会長?」

「し、失礼しました。もちろん使えます」

「では他に何か問題が?」

「いえ、問題はございません。しかしこの量の白金貨、、、これで平民が使うような物件を買うとなれば帝都の大きな区画をまるまる一つ買えますが、、、」

「え!?そんなに!」

「はい、もしかして帝都の不動産の相場をご存じないのですか?」


 そんな大金を持ってきたわけではないが、、、


「はい、北部出身なので帝都の情報には疎いです」

「どうりで、、、北部の方は金銭感覚が我々南部人と2桁ほどずれていますからね」

「そこまで大金を持ってきたつもりではないのですが、、、」

「これは帝都では皇室も滅多に出すことがない大金です」

「そんなに?」

「これだけあれば巨大な屋敷が3つほど買えますよ」


 どうやら我々の金銭感覚は南部では通用しないようだ。


「困ったな、数軒でいいのに」


 北部では白金貨なんて日常使いしてたからこんなことになるなんて思わなかった。


「じゃあ貴族街の屋敷も買おう。適当な屋敷を見繕ってくれる?予算はこれの半分」

「もちろんです!かしこまりました。」


 計画変更だ。

 ちょうど貴族街にも拠点が欲しいと考えていたところだ。

 

「内見はいらない、とにかく早く匿名で取引したい」

「かしこまりました。では少しお待ちいただければこちらでお探しいたします」

「わかった。じゃあ待ってる」


 僕がそう言うと商会長は一礼して部屋から出て行った。


「帝都の金銭感覚について学ばなきゃね。僕も5歳に追放されたから帝都の相場なんてわかんないや」

「そうですね。北部が比較的裕福なのは知っていましたがここまでとは、、、」


トントンッ


「どうぞ」


 ドアがノックされた。

 僕が入室を許可すると使用人が数人入ってきた。

 カートを押していてそのカートにはお茶とケーキが乗っていた。


「お茶をお持ちしました。どうぞ」


 メイド服を着た少女がティーカップを並べてお茶を注ぐ。

 その次に並べられたケーキには食欲をそそられた。


「ありがとう」


 僕はお礼を言った。


「あ、、え、、」

「ん?何か?」


 お礼を言われた少女はなぜか戸惑っていた。


「いえ!なんでもありません。ただお貴族様は普通使用人に気など使わないと思っていたので」


 ああ、そういうことか。

 北部の常識でお礼を言ってしまった。

 南部貴族は使用人に気を使わないのか、、


「僕は北部人だからね。身分なんて考えないんだよ」

「そうでいらっしゃいましたか。知りませんでした。帝都には北部の方は少ないので」

「まあ北部人は基本北部から出たがらないからね。あ、そうだ。よかったら商会長が戻ってくるまで話し相手になってくれる?」

「私などでよかったらぜひ!」


 そのあと彼女からいろいろ話を聞いた。

 彼女は田舎から出稼ぎに来たが仕事が見つからず路頭に迷っていたところを商会長に拾われたそうだ。

 彼女の話を聞く限りこのトーリ商会は信用できそうだ。

 決めた。

 帝都で不動産買うときはここにしよう。


 僕は帝都で初めての買い物をしたのだった。

次回投稿は日曜日になりそうです。

午後にあげると思います。


読んでくれてありがとうございました!



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