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51話 貴族街

ゴトゴト、、、


 馬車はゆっくりと帝都の中を進んでいた。

 外では今なお民衆のどよめきが収まっていない。

 この馬車は屋敷に向かっている。

 お母さまの屋敷だ。


「楽しみですか?殿下」

「うん、でも少し不安かも、8年も会えなかったからね」

「殿下のお母様ならきっと一目でわかりますよ」


 8年前、第一皇妃の兵がやって来て僕とお母さまを引き離した。

 あの日から僕はお母さまを助けに来ると誓っていた。

 まさかこんな形で再開するとは思わなかったけど、、、

 本当はもっと準備して軍を率いてお母さまを北部に連れ帰る予定だったけどまあ結果は同じだ。


「お母さまの屋敷までどのくらい?」

「少しかかります。ここから反対側にありますので」

「皇妃にしては相当な仕打ちを受けていたって聞くけど具体的にどんなの?」


 僕は恐る恐る聞く。

 リールのことだからあらかじめそういうのも調べているのだろう。


「主に行われたのは財産の没収・第一皇妃の監視下での生活・社交界への参加禁止ですね。いずれも第一皇妃によるものです」

「そう、、、」


 やはりお母さまを助けなければ。

 

「大丈夫ですよ。私は皇妃様に会ったことはありませんが殿下のお母様なのです。きっと強く生きておられますよ」


 リールが励ましてくれる。


「そうだね。ありがとう」

「いえいえ」


 馬車は人が一番多いエリアを抜けて少し加速した。

 外には派手な色の建物が見える。

 帝都の商店だ。

 人工の少ない北部にはない活気がある。


「お金、、お金、、」


トントン


「浮浪者です。追い払いましょう」

「こんなところにも浮浪者がいるの?」


 浮浪者だ。

 家もない貧困にあえぐ人たちが裏路地で暮らしているのだ。

 恐らくこの豪華な馬車を見て来たのだろう。


「はい、情報によると帝都の富裕街の手前には大きなスラムがあるとか、おそらく富裕街への物乞いが集まったのでしょう」

「そう、、、やっぱり別世界だな~」

「そうですね。北部では浮浪者なんていませんから」

「職にあぶれるってこと自体わかんないな。僕たちはいつも仕事に追われているから」


 いい意味でも悪い意味でもこの帝都は別世界だ。

 北部ではないことが多くあり、価値観が通用しない。


「食べるものがないんです!お願いします!」


 外から悲痛な叫びが聞こえてくる。

 恐らく帝都の商人達は人気取りのために定期的にばらまいているのだろう。

 結果として彼らはそれを頼りに生きるようになってしまった。

 働こうとする意味を失わせたのだ。


「無償の施しほど残酷なものはないね」

「そうですね。では追い払います」

「、、、うん、お願い」


 リールが外の兵に命令すると兵は馬車を取り囲んで浮浪者を押し出した。

 押し出された浮浪者は様々な老脈男女様々の者がいた。

 老人から若者はもちろん中には僕と同じくらいの少女もいた。

 彼女は帝都で一番豪華な馬車に乗る僕とぼろ布を纏う自分を比較して悲しそうな顔をした。

 今彼らを救うことはできない。

 できることと言ったらせいぜいこうして立ち去って働くことを促すことくらいだ。

 いつかはこの人たちも救ってやる。

 そう心に決めた。



ー----------



「貴族街に入りました」


 リールがそう言うと景色が一気に変わった。

 貴族街だ。

 白くきれいな塗料で塗られた巨大な屋敷がいくつも見える。

 庭には大きな噴水と幾何学的な模様の庭園が並んでいた。

 北都の建物と比べると劣るがそれでも恐らくかけられた財は凄まじい物だろう。

 さっき浮浪者たちがたむろしていた建物とも呼べないぼろ小屋が並んだスラムを思い出すと頭が痛くなる。


「南部の貴族たちは芸がないね。ひたすら派手にすれば財を示せると思ってる」

「ですね、無駄にキラキラしていて無理に個性を出そうとして中には品性に欠ける物もあります」

「皇宮は見えるかな?」


 小さいときに行ったきりだ。

 ぼんやりとしか覚えていないがせっかくだしこれからの主戦場を見てみたい。


「いえると思います。あ、見えてきました」


 窓を開けて外をのぞく。

 さすがに貴族街のど真ん中で暗殺してくる馬鹿はいないだろう。


「わぁ」


 前方には黄金の宮殿が見えた。

 皇宮だ。

 いくつもある皇室所有の宮殿の中で一番大きい宮殿。

 高い鉄の柵で囲まれ庭園は巨大だ。

 建物は帝都で一番高いドーム型の建物を中心に一つの町をつなげたような大宮殿が人がっていた。

 金や宝石で飾られ光り輝いていた。

 大通りからまっすぐ続く入り口への道の途中には悪趣味な虚像があった。

 現皇帝、僕の父親だ。


「一体あれにどれだけの国庫の財が浪費されたのか、、、想像されるだけで頭が痛くなりますね」

「うん、しかも周りにいる警備兵、、あれをまとめて北部の戦線に送ればある程度の戦力になるのにこうして守る価値のない豚どもを守ってる」

「あらためて我々北部人と南部が分かり合えないという事実を実感しますね」

「だね」


 馬車はそんな話をしているうちにも進んで行った。


「殿下、まもなく到着です。心の準備を」

「、、、うん、遂に再開できるんだね。ちょっと実感がわかなくて。大丈夫かな?」

「殿下の当然の権利です。何も気にすることはありませんよ」

「ありがとう、そう言ってくれて覚悟がついた。行こう!」


 遂にお母様がいる屋敷が見えてきた。

次回投稿は日曜日になります。


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