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50話 帝都


「隊列を再構築!近接護衛陣形!」


 外ではエレナさんが護衛隊に向け準備を指示している声が聞こえる。


「殿下、見えてきました。帝都です」


 僕は馬車から身を乗り出し、前方を見た。

 そこには見渡す限りの大都市、大陸最大の都市、「帝都」が見えた。

 手前の街道には溢れんばかりの通行人が見えた。


「わぁー!」

「遂に来ましたね。殿下」

「うん、遂に来た。2年間、ここが僕たちの戦場だ」


 僕は久しぶりに見る帝都に対する感動を押し出し気を引き締めた。

 僕はここに遊びに来たのでも住みに来たのでもない。

 戦いに来たのだ。


「よし、予定通りここらへんで準備しよう」

「かしこまりました」


 リールがそう聞くと窓を開けてエレナさんに向け手を振った。

 そうすると隊列はゆっくりと止まった。


「つけられるものはすべてつけて、帝都で戦うなら帝都のやり方で戦う」

「了解です」


 エレナさんにそう言うと後ろの荷馬車から大量の宝石や金を持ってきた。

 それを僕の乗る馬車に着け始める。

 あらかじめ馬車にはそれらを付ける用のでっぱりやへこみがあり宝石側にも同じものがある。

 これはファスターの提案だ。

 帝都への入場は注目されるだろう。

 南部には馬車で財力を示す文化がある。

 そして帝都にはなるべく早く着き社交界デビュ―までの準備に長く時間を取りたい。

 しかし、帝都までは南部の優秀な軍馬でもこの巨大な馬車では2月近くかかる。

 そこで重量を無駄に増やしている宝飾品をすべて取り外して複数の荷馬車で運ぶのだ。

 これのおかげで軍馬の休憩時間を減らしてスピードも上げられた。

 

「姫様、取り付け完了しました!」

「了解、ありがとう」


 やはりやりすぎだと思うのは僕だけだろうか?

 この馬車は軍からのプレゼントだが豪華すぎる。

 そもそもサイズも普通の2倍くらいはあるしそのすべてが金銀財宝で覆われている。

 輝いていないところを見つけるのが難しいくらいだ。

 まあいい


「よし、出発!」


 僕はリールと共に馬車に乗ると馬車は動き出した。

 宝飾品を付けたためさっきより動きが鈍くなっている。

 まあ帝都はすぐそこだし問題ないだろう。


「帝都にはボンボンが先に行って門を開けているはずです」

「結構素直になったね」

「まあ1か月もすれば諦めるでしょう」


 リールの言う通り帝都には皇室騎士団が先行している。

 あのボンボンも1か月近づけてもらえないとさすがに諦めた。


「殿下、そろそろ通行人が多くなります。外をご覧ください」


 リールの言う通り外では先ほどと比べ物にならない程の通行人がいた。

 帝都の直前でいくつかの街道が合流しているからだ。


「やっぱり南部の人の多さだけはかなわないね」

「ですね。面積で言えば北都よりわずかに大きいくらいなのに人口は300万人、実に北都の10倍です」

「あらためて聞くと以上だね。やっぱり貴族がここに集中していると産業も集まりやすいのか」


 面積が同じなのに人口は10倍、暮らしは明らかに北都より悪いだろう。

 まあ北都にはない格差があるからなのだろうが。

 北部にはない奴隷制・主従関係がここ帝都にはある。


「殿下、いよいよ入城です」

「遂にか、、、行こう、リール」

「はい、どこまでも」



ー----------



「開門」


 警備兵の覇気のない声で木の門が開かれる。

 帝都の入り口には大勢の警備兵が集まり僕たちのことを護衛、もとい監視している。


「この人の多さには圧倒されるね」

「はい、一般市民がここまで多いのは北部ではありえませんからね」


 門は巨大だが木製で北部各要塞にあるの鉄の門の方が上部そうだ。

 整備もそこまでされていないらしく所々傷んでいる。

 何年にもわたり実戦を経験してこなかった結果だろう。


「あれが皇女様の馬車の馬か?」

「第五皇女って誰の事?」

「聞いたことないな」

「北部から来たらしいぞ」

「皇族が北部にいたの?」

「第一皇妃様に追放されてたらしいぞ」

「まじかよ」


 門がまだ完全に開ききる前に民衆の話し声が聞こえてきた。

 先頭の馬の鼻先下見えていないだろうがそれでも話し声は絶えない。


「もっと賢そうな民衆を期待していましたが無理みたいですね」

「しょうがないよ、南部では金がなきゃ十分な教育も受けられない。無償で提供される北部とは違うんだ」

「そうですね」


 リールと話していると門が完全に開いた。

 巨大な帝都を囲む城壁の奥には大通りが伸びていた。

 北都の摩天楼を貫く中央通りには見た目で劣るが北都はおろかヴェスターでも足元に及ばない人の波で活気に満ちていた。

 大通りの横には無数の焦点が並び様々な服装・身分の人々が行きかっていた。

 馬車道に一番近い歩道には僕たちの隊列を見物するために集まった無数の人が集まっていた。


「全隊、進め」


 エレナさんが護衛隊に命令するとゆっくりと馬車隊と護衛の乗る軍馬は進み民衆の前に姿を現した。

 無数の金銀財宝で飾られた僕の馬車が現れると大きなどよめきが起こった。


「すげえ、、、」

「あれ本当に馬車かよ」

「金で埋め尽くされてる、、、」

「っ!」

「こんな馬車皇帝陛下でも乗ってないぞ」

「こんなの見たことない」

「追放されてたんじゃないのかよ」

「皇女は大金持ちだな」

「見ろ!護衛も見たことないくらい豪華なフルプレートだ!」

「馬も強そうだぞ」


 帝都の民衆は僕たちを見て驚きを表した。

 この馬車は北部の財で作られた。

 南部では誰もこれ以上のものは見たことないだろう。

 計算ではこの馬車だけで南部の大貴族2家分の財産に当たる。


「反応は予想通りですね」

「そうだね、民衆に見た目で権威を示すのは効果的だからね」

「人込みは警備上危険ですのでカーテン閉めましょう」

「そうだね」


 そう言われて窓のカーテンを閉めた。

 ガラスの向こうから弓で狙われる危険があるからだ。

 帝都では僕を殺したい勢力なんていくらでもいる。


「全隊、各馬車に民衆を近づけるな」


 外ではエレナさんが物珍しさに近づいてきた人を追い返そうとしている。

 僕はそんな普段はない光景を見て改めて思った。


 本当に来たんだ。

 帝都に、、、

次回投稿は金曜日になります。


読んでくれてありがとうございました!



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