49話 南部の戦い
「明日中には帝都に入城できる予定です」
リールが今後の予定を説明してくれる。
南部に入ってから2週間がたった。
ゴールの帝都まで少しの位置まで来ている。
「やっぱり近づいてくると緊張するね」
「ですね、いよいよ戦場です」
外をっ見ると黄金の大地が広がっている。
一面が小麦で埋め尽くされ、そこに日があたって黄金に輝いている。
「やはり帝都に近づいたからか建築も豪華になっていますね」
「そうだね」
たまに小さな村を通過するが国境付近の村より明らかに豊かだ。
「帝都周辺は皇室領ですからでしょうね」
「だね、皇室領には大量の金がかけられている。まあどうせ景観だのプライドだのつまらない理由だろうけど」
帝都に近づくにあたってすれ違う人も増えてきた。
個人の行商人から大規模なキャラバンまで様々だ。
フェリキアの道には途中から様々な街道が合流するため道幅もそれに応じて広がっていっている。
「そういえばあのボンボン達は今どこ?」
「ずっと前方にいます。エレナさんが近づくたびに追い返しています」
皇室騎士団は名目上僕の護衛、事実上の監視として派遣されたが今は護衛隊によって追いやられただの随行者になっている。
「それにしても1回くらいは襲われると思ったけど今のところないね」
「ですね、護衛隊のフルプレートで威圧してるのがよかったでしょうか?」
北部と違って南部の街道は警備されていない。
犯罪者も多く、中にはキャラバンも襲う大規模な盗賊団もいると聞く。
こんな金があると宣言するような馬車に乗っていたら一度くらいは襲撃されてもいいと思っていたが今までなかっt、、、、、
ヒヒーンッ!!
馬の鳴き声が響いた。
それと同時に鎧の音も聞こえた。
音からして質が悪い、護衛隊のものではない。
「敵襲!敵総数200超!」
「噂をすれば来ましたね」
「だね」
トントンッ!
「姫様、盗賊団です。囲まれました」
エレナさんが馬車の外から報告してくる。
「姫様、命令を」
エレナさんが命令を求めてくる。
「殿下が出るまでもありません。私が蹴散らしてきます」
リールが立ち上がろうとする。
「いや、馬車でちょっと体がなまってるような気がするからリハビリ代わりに僕が行く」
「了解です。ではこれを」
リールが馬車の壁に立てかけてあった僕の短槍を差し出してきた。
「ありがとう、行ってくるね」
「はい、いってらっしゃいませ」
僕はそれを受け取って外にでる。
「エレナさん、指揮は僕が取る。200人だから陣形とか考えなくていい。好き勝手に暴れていいよ」
そう言うとはエレナさんは満点の笑みで言った。
「ありがとうございます!では行ってきます!」
エレナさんが馬から降りて槍一本をもって全速力で盗賊のところまで走っていった。
恐らくあの盗賊はもう助からないだろう。
「さて、僕も行こうかな。1か月ぶりに槍持ったんだ。練習相手になってもらうよ」
僕は肩をほぐしながらゆっくり歩いて行った。
現在僕達は包囲されている。
敵数はこっちの2倍以上、ボンボン達は離れすぎているしそもそも戦力にならない。
だが、、、
「総員!南部の犯罪者に北部軍の力を見せつけろ!」
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
僕は一番近くの盗賊に向けて言った。
「戦争において数は大切だがそれはあくまで軍隊同士の話だ。我々と貴様ら盗賊では練度が数で補えないほどに離れている!」
僕はそう言った後槍を両手で強く握って走り出した。
盗賊は対抗して数人で固まり、その一人が弓で狙ってくる。
恐らく今回盗賊は僕たちが皇女の一団だということに気づいていない。
気づいていたとしても今僕は動きやすいいつものワンピースだから皇女だと思われないだろう。
そのため敵は容赦なく心臓を狙ってくる。
「やれ!」
盗賊の一人がそう号令をかけるともう一人が矢を放った。
矢はまっすぐ僕に飛んでくる。
盗賊と僕の距離はそこまで離れていない。
そのため矢はすぐに僕の目の前に到達した。
「矢は敵の頭を狙うものだ!」
僕はそう言うと槍を胸の前に掲げた。
ガキンッ!
鈍い金属音が聞こえた。
その次の瞬間僕の右後ろに矢が突き刺さった。
矢を槍ではじいたのだ。
槍はオリハルコンでできているため無傷、しかし敵の矢じりはぼろぼろになっていた。
「なっ!」
「そんな馬鹿な!」
盗賊が驚いている。
南部ではこんなことできる人はいないだろう。
「驚いたか?こんなこと北部軍では当たり前だぞ」
「北部軍、何のことだ、、、まさか!」
盗賊の一人が目を見開いて僕の髪を見た。
「どうしたんだよ!」
他の盗賊が聞く。
「帝都で噂になってるんだ。白い髪の第5皇女が北部から帰ってくるって」
「まさか!」
気づいたようだ。
「いかにも、僕はカーナ・フォン・ベルヘルツニア、帝国第五皇女にして北部軍最高司令官である」
僕は盗賊に答え合わせをするように告げた。
「さて、運動にはもう少し付き合ってもらうよ」
そう言って僕は再び走り出した。
盗賊の目の前に達すると槍を思いっきり突き出した。
「グハッ!」
僕の槍は鉄でできた盗賊の胸の部分の鎧を布のように貫き反対側まで貫通した。
僕は次の標的を隣にいたあの弓兵に定め流れるように最初の盗賊から槍を引き抜くとそのままの勢いで弓兵の首を胴体と切り離した。
ドサッ!
弓兵の胴体が膝をついて僕の後ろに倒れた。
「ば、バケモノ!」
残った一人の盗賊が怯えた顔で盾を構えた。
もう一つの手には片手剣を持っている。
「あ、もうそろそろ終わるころだし僕も終わるか~」
「え、終わるって、、」
盗賊が半泣きの顔で聞いてくる。
「あそこ見てみなよ」
そう言って僕が指さした方向には無双するエレナさんと盗賊の死体を踏み越える護衛隊がいた。
「う、嘘だ!」
「嘘じゃないよ。あとさよなら」
僕は逃げようとする盗賊に向かって槍を突き出した。
槍は盗賊の盾を粉砕しながら盗賊の胸に迫り、貫いた。
バタッ!
やっぱり南部の戦いはあっけないな。
「殿下、お見事です」
リールが歩いてきて言った。
「こんな敵とも呼べないひょろひょろ倒したところで何にもすごくないよ」
「ふふっ、殿下はそういうところがすごいんですよ。自分を過小評価できる冷静さがあるのがすごいんです」
「そうかな?あ、それより水浴びして着替えたいな。久しぶりの戦闘だったから夢中で血がついちゃった」
そう言う僕のワンピースには盗賊の返り血がベットリついていた。
「では今日はここらへんで野営しましょう。近くに川もありますし、帝都への入城は遅れてもいいですし」
「そうだね。じゃあ僕は早速体洗ってくるよ」
「はい、何かあればお申し付けください」
僕は近くの川へ向かった。
途中遠くに見える小さな町の明かりを見てつぶやいた。
「遂に帝都か、、、」
次回投稿は火曜日になります。
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