4話 装備調達
カンッカンッ!
「あ、暑い、、」
「そりゃ最近は溶鉱炉フル稼働ですからね、、、でも何度来てもこの暑さにはなれませんね」
おじい様との模擬戦の翌日、僕はリールと一緒に要塞の武器工房に来ていた。
何基もの溶鉱炉が常に動き続けている。
「姫様、久しぶりです」
背が低くて筋肉質な職人が話しかけてきた。
彼はファスター、隣国のドワーフの国のフルテッド王国から来たドワーフだ。
フルテッド王国は帝国の保護国で特に鉱物資源や技術交流などで北部と結びつきが強い。
「おはようファスター、そういえば試着って?」
そう、今日はファスターに呼ばれて来ている。
「実は姫様の初陣のためにかねてより計画してきた新型の鎧が完成しましてね」
「おお!遂に!」
「はい、ドワーフの技術と北部の良質な素材を惜しみなく使った自信作です」
数日後に迫った初陣に向けて自分用の鎧を工房が作ってくれていた。
「よくよく考えてみれば殿下の鎧って専用のものありませんでしたね」
「まあ訓練用には一般の軽装鎧で大丈夫だからね」
「ではこちらへ」
そう言われファスターについて行った。
道中にも所狭しと溶鉱炉が並んでいて金属音が絶えない。
「最近は忙しいってゆうのは知ってたけどここまでとは」
「最近備蓄用の武器の補充を一気にしてましてね、これが終われば落ち着くと思うんですが」
ドワーフたちも大変のようだ。
「つきました!ここです」
そう言われると目の前に布に包まれた鎧があった。
「これ?」
「そうです」
「ずいぶんと警備が多いですね」
確かにそうだ、この部屋だけでも警備が5人はいる。ふつうの鎧にこんなに警備必要だろうか?
「それではお披露目です!」
ファスターが布を取ると納得できた。
そこにあったのは見たことないほど見事な鎧だ。
装飾はない。一見簡素な皇女が着るにはふさわしくない鎧のように見えるが細部まで寸分の狂いも
なく正確でかつ限界まで頑丈になっている。
「すごい、、、」
鎧に圧倒されて唖然としていた。
「すごいですね、、こんな鎧初めて見ました」
「そうでしょう、これはドワーフのまだ実用化されていない技術を大量につぎ込みましたから。あと
姫様は宝石とか好きそうじゃなかったので実用性に全振りしました」
「うん、確かに宝飾品はそこまでこだわらないかな。完璧な鎧だよ!」
「ありがとうございます!まだ着色とかはしてないので完成ではありませんが試しに着てみます
か?」
「うん!お願い!」
「ではあちらの部屋でお願いします。私はここで待ってます」
それからリールの助けを借りて鎧を着た。
全身鎧だから着るのは一苦労だ。
しかし全身鎧にしては結構スリムだ。
体のラインがくっきり見えるくらい体に密着してる。
「オーダーメイドの特権ですね」
「そうだね、それにしてもこの鎧着てるのにきずかないくらい軽い」
軽い!
その軽さに驚いた。
早速着たままファスターの説明を聞きに行く。
「どうです?すごいでしょ、それは鋼じゃないですからね」
「どういうこと?もしかして銅?金?」
こんな軽さの金属見たことがない。
薄くしてもこんなに軽くなるはずがない。
「それは北部とフルテッドの国境で見つかった金属でしてね、実はまだ公表していない金属なんです
よ」
「公表していない?どういうこと?」
「姫様、童話って読んだことってあります?」
「帝都にいたころは読んだことあるけどそれがどうかしたの?」
「その童話で勇者が着ている鎧なんかにオリハルコンってゆう金属使われてるのを見たことないです
か?」
「あるけど、、、まさか!」
「そうです、その鎧は神話上のものだと思われていたオリハルコンで作られています」
普通なら嘘だと一蹴するところだが今着ている鎧を見ると現実味がわいてくる。
「これはまだドワーフの王家と北部軍の一部にしか知られていないことです」
「す、すごい、、」 」
そういわれると急に着ているのが怖くなってきた。
「今まで北部とフルテッドの技術者が研究していて、ちょうど姫様の鎧を作ろうと準備していた時にこの金属が
転がり込んできたんです。ドワーフ王家からのプレゼントということで姫様がオリハルコン鎧の初
めての使用者です」
「なくさないようにしないとね、、、」
「鋼の20分の1の重さで100倍の強度を誇ります。その鎧を着ていればまず敵の攻撃が通ることは
ないでしょう」
「オリハルコンはどれくらい埋まっているの?」
「今のところ大規模な採掘もおこなわれていませんし北部でしか見つかっていないのでなんとも言え
ませんが北部の鎧すべてをアダマンタイトに置き換えるくらいはあるかと」
「、、、すごいわね」
これは軍事界における革命だ。
この金属が普及すれば鋼は無用の産物になる。
「この金属は少なくとも王国との戦争が終わるまで北部とフルテッド以外には出さないつもりです」
「それがよさそうだね」
「おっと話がそれてしまいましたが今回は鎧だけじゃありませんよ」
「え?」
そういってファスターが細長い木箱を持ってきた。
「こちらです」
そういってふたを開けると中には黒く光っている美しいレイピアと短槍があった。
「これは?」
「これは我々要塞の工房からのプレゼントです」
「レイピアと短槍?」
「はい、これもオリハルコンで作りました。姫様はレイピアと短槍を使うと聞いたので」
「これ工房のみんなが自費で?」
「はい、少し高かったですがフルテッドからいくらか割安で融通してもらいましたし、何より我らが
姫様の初陣ですから。鍛冶師ができるのなんてこんなもんだけですよ」
「ありがとう!大事にする!」
「よかったですね!殿下!」
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「じゃあまた今度!」
あの後ファスターから鎧と武器の手入れの仕方などを教わって帰るところだ。
鎧は最後の仕上げをして初陣当日に届けてくれるそうだ。
「今日はありがとう!全部大切にするよ!」
「そうしてくれるとありがたいです。でも無理に大切にしなくてもいいですよ、壊れたらいつでも直
します!ですからがんばってきてください!」
「頼もしいよ、頑張るね!、、、あと最後に1ついい?」
「なんでもどうぞ」
「あの鎧、、、なんで胸平たいの?オーダーメイドだよね?」
「それはもちろん姫様の胸が平た、、、あ」
それからファスターは僕と話すときは用心するようになったのだった。
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そして時は来るのだった。
投稿予定
次回は30日水曜日に投稿予定です。
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