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46話 北都出発

カンカンッ!


「午前取引終了!午前値動きは小規模!全部門休憩!」

「ここも随分と変わったね」

「はい、前よりも活気づいています」


 隣でエグナーおじさんが言う。

 ここは北都中央取引所。

 小麦から城までなんでもここで取引され、相場が決まる。

 北都中心部のドーム状の巨大な会場で商人たちの怒号が飛び交っている。


「ここ数か月で南部産小麦の値段は半分以下になりました。殿下がクルヴァを手に入れた今はもう法外な値段で南部商人たちが提示するものを買わなくてもいいですからね」

「南部商人たちは何て言ってるの?」

 

 南部商人たちは今回の北部によるクルヴァ併合で最大級の事業だった小麦の輸出をすべて失うことになる。

 何も言わないということはないだろう。


「やはり反発が大きいです。中には傭兵を雇って脅しまがいなことをやってくる商会もいます」

「彼らからしてみれば金の生る木を切り倒されたみたいなことだからね」

「はい、この前はクルヴァの農地を買い取らせてくれと言ってきた者もいました。もちろん断りましたが」

「正しい判断だよ。それにもう僕達北部は止まらない。帝国南部と同じくらい肥沃なクルヴァを獲得した今格安で品質の高いクルヴァ産小麦が出回る。もう南部の長期輸送で品質が落ちた割高な小麦なんて市場で相手にもならない」

「あと、輸送路で先週南部から塩を輸送していた北部商人所有の商隊が盗賊らしき者に襲われました。まだ確証はありませんが恐らく南部が雇った傭兵かと」


 もうそんな強硬手段に出るとは、、、

 南部商人たちからしたらそれだけ壊滅的な被害なのだろう。

 

「それを受けて現在南部内にもついて行く護衛部隊を編成しています」

「わかった。足りないものがあれば僕の名前でおじい様に要請していいよ」

「ありがとうございます。」

「それにしても南部商人たちの連合があるって聞いたけど」

「はい、本部を帝都に置いている帝都商会連合があります。南部の経済は彼らが牛耳っています」

「彼らの顔が楽しみだよ」

「ですね。私も帝都が楽しみです」

「よし、僕はそろそろ出発の準備してくるよ」

「かしこまりました」


 そう言って僕は取引所から宮殿に戻った。

 宮殿前ではみんなが荷馬車にいろいろと積み込んでいた。

 今回は僕の馬車だけではなく5台の荷馬車もついてきている。

 中に入っているのは装備と金だ。 

 どちらもおじい様はじめ軍のみんなが持たせてくれた。

 でも金は多すぎだと思った。

 5台の馬車のうち4台は金だ。

 これをすべてばらまいたら帝都の金市場が崩壊してしまう。

 

「殿下、おかえりなさいませ」

 

 そう考えているとリールが来た。

 リールは積み込みを指揮していたようだ。


「ただいま、積み込みは順調?」

「はい、滞りなく進んでいます。ただ馬車を追加しなければならないかもしれません」

「追加?なんで?」

「実は先ほど総督閣下の使いが来まして、、、」


 


ー----------




「なんだ、、、、これは、、、」


 リールについてきた先には宝石が山のように積み上げられていた。

 しかも全て希少なものばかりだ。


「北都としての支援ですと言って置いて行きました」

「エグナーおじさん、やってくれたな、、、こんなのどうすればいいんだ!」


 僕は頭を抱えた。

 さすがにやりすぎでしょ?


「北都の商人達とマンフレート家からだそうです。これでも北都の金庫の1万分の1も開けていないとか」

「確かに北都は世界最大の経済都市だから金はあるのかもしれないけど、、、これ使い切れないでしょ?」

「まあ殿下への支援金ならこれくらい当たり前ですね!」


 リールが笑顔で言った。

 あ、リールも親ばかだった。


ー----------



「積み込みは完了、護衛隊出発準備も完了しました。皇室騎士団は今先行して出発しました」

「了解、僕たちも行こう」

「かしこまりました」


 馬車の中でリールから積み込みの報告を聞いて出発を指示する。


「本当に半分でいいのですか?あれでも足りないと思っていましたが、、、」

「開いている窓からエグナーおじさんが言ってくる」

「半分でも多すぎだよ。僕が行くのは北部じゃなくて帝都だよ?これだけあれば何でも買える」

「ですが、、、」

「いいの」

「、、、かしこまりました」


 エグナーおじさんが用意した宝石の山は半分にした。

 本当はおじい様と軍が用意した金で十分すぎるほどだから全部返したかったのだがエグナーおじさんがかたくなだった。


「では数週間後に帝都で会いましょう」

「うん、エグナーおじさんも気を付けて、北部貴族は南部貴族にとっては排除しておきたい対象だからね。道中襲撃とかあるかもしれない」

「はい、心得ています。殿下もお気をつけて。では」

「じゃあまた今度」


 エグナーおじさんとの話が終わると先頭のエレナさんが号令を出す。


「全体出発!」


 馬車がゆっくりと動き出した。

 速度は徐々に早くなり馬単体と同じくらいの速度になった。

 へこみ一つない整備された北部の道だからできることだ。


「次の経由地は境界の関所です」

「そうだね、、、行こう、南部へ」


 8年、、、

 8年ぶりに足を踏み入れる。

 この先は戦場だ。

次回投稿は月曜日になります。


読んでくれてありがとうございました!



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