45話 支持表明
「こちらはクルヴァ要塞から殿下が回収なされた小麦で作ったパンになります。同じくクルヴァの牛からとれた牛乳で作ったバターでお召し上がりください」
「ありがとう」
僕たちは今中央宮殿の広間でおじさんと会食をしている。
今ちょうどオードブルのパンが運ばれてきた。
「このパンも殿下のおかげでこれからは自分たちで収穫した小麦で作れるようになるのですね」
「僕は後ろで指揮してただけだよ。」
「いえいえ、トレビュシェットも殿下が作られたではありませんか」
「相変わらずおじさんは僕を買いかぶりすぎだよ」
エグナー・フォン・マンフレート、現北部総督にして北部の2大貴族の一つであるマンフレート家の当主。
その天才的な手腕でこの北都を成長させ続けている。
「そういえばリール嬢、ブラン司令は元気ですか?」
「はい、おじい様は元気です。この前は殿下が帝都にいる間最前線に復帰すると意気込んでいました」
「はは!それは勝ちが確定したようなものですね」
北部はこの北都が経済・政治、ヴェスターの軍司令部が軍事・外交を担っていてお互い対等な立場だ。
北都のマンフレート家とヴェスターのフォーク家で全体を治め、関係も非常に良好だ。
世界最大の軍と帝国最大の経済都市、この二つが密接に連携している限り北部に負けはないだろう。
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「こちらは南部から輸入した希少なステーキです」
おじさんとは久しぶりだったため時を忘れて話を盛り上げているとメインが来た。
「さて、メインも来たことですし本題に入りますか」
「そうだね」
「まず最初に、我ら北都は北部全体と同じく殿下を全力で支援するつもりです。すでに専用の莫大な予算を確保しております」
「ありがとう、エグナーおじさん」
「それでなのですが、私も殿下が帝都に着かれる数週間後に帝都に向かうつもりです」
「僕の社交界デビューだね」
社交界、北部の僕たちが生きる世界が戦場や市場だとしたら南部の貴族が生きるのはまさにこの社交界だろう。
派閥を構成し、他社を蹴落とし自らの地位を押し上げようとする、、、
僕から言わせてみれば実にくだらないものだ。
僕も一応皇女だから帝都に着いたら数週間でそこにデビューさせられる。
ついてくるリールも同じだろう。
「はい、社交界は我々北部人からすれば滑稽な話ですが印象がすべてです。デビューで有力な貴族が支持すれば地位も自然と上位に格付けされます」
「そこでおじさんがマンフレート家として支持するということだね」
「その通りです。すでにフォーク家とマンフレート家が合同で殿下を支持する南部の改革派貴族を集めております。北部貴族は距離的に参加可能な家はすべて参加する予定です。我々マンフレート家も微力ながら支持させていただきます」
「ありがとう、帝都では北部の名声なんてほぼ無意味だろうしありがたいよ」
「我が家も決して帝都での地位は高くありませんが全力で支持させていただく所存です」
エグナーおじさんはやっぱり頼れる。
小さいころからヴェスターに来た時毎回面倒を見てくれた。
大人の中ではおじい様に次ぐ信頼を置ける人だ。
リールは年もそんなに離れてないし一応まだ子供だしね。
「あと私の息子が今帝都にいるのですがお力になれるかと思います」
「確か帝都の学園に通ってるんだっけ?」
「はい、学力や技術力ではヴァルド城やこの北都の学園の方が圧倒的に上ですがあいつには優劣関係なく様々な世界を見せたいと思いましてね。ちょうど今年で最高学年になったと思います」
帝都の学園、、、
皇族も通う貴族用の教育機関だ。
帝都を追放される前は僕もそこへ通う予定だったが北部に来てからはそこよりも圧倒的に高度な北部の教育を受けてきた。
「息子から聞いているのですが帝都の学園は北部の全住民が受けている義務教育よりも質が悪いとか」
「え?そんなに学力が低いの?いくら南部でも最高峰の教育機関がそれだと思いやられるね」
「まあ優秀な学者は潤沢な予算とともに研究する同志・理解を求めてほとんどが北部に来ますからね」
北部では貴族しか教育が受けられない南部と違い住民全員にある程度の義務教育をさせている。
優秀なものは身分に構わず最高教育機関であるヴァルド城の研究棟や北都の学園に行ける。
だが南部では想像以上にひどい状況のようだ。
「そういえばあのボンボンがさっきわめいてましたよ。帝都貴族の私を会食に入れろとかなんとか」
「ボンボン、、、ああ、あの副騎士団超か」
「まったく、、あの様子では帝都の騎士団は壊滅状態でしょうな」
「そうだね、彼らの装備も見たけど装飾品ばっかりで実用性皆無だし剣も重くて大きい使い勝手の悪い物だったよ」
「帝都の鍛冶職人は一度ヴェスターに来た方がいいですな」
「だね」
実際彼らの装備はひどい物だった。
剣は刃こぼれが目立ち近いものにならないくらいだ。
皇室騎士団は帝国全土で最強を名乗っておきながら実態はただの貴族のボンボンが集まっただけの無能集団だ。
剣術は南部で学んだのだろう。
南部の剣術は戦術というより踊りに近く、まったく使えない。
彼らも実際戦ったことはないだろうし戦っても勝てないだろう。
「もし彼らが全員で切りかかってきたとしても一瞬でひねりつぶす自信があるよ」
「はは!まあ殿下なら可能でしょうな、殿下自らやらずとも北部兵ならできます」
そこからはおじさんとの楽しい雑談を終えて一日が終わった。
明日の夕方にここを出発する、、、
いよいよ南部だ。
次回投稿は日曜日になります。
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