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43話 町


「殿下、早速これからの予定をお伝えしておきます」

「うん、よろしく」


 出発して数時間、ヴェスターはすっかり見えなくなりもあと数時間で最初の通過地点である町が見えるころだ。

 リールが馬車の中の向かいの椅子から予定を報告してくれる。


「まず、帝都までの日程です。ヴェスターから帝都までは最短のルートであるフェリキアの道で1か月かかります。」

「やっぱりわかってても長く感じるね」

「はい、いつもは歩兵部隊でも数日しかかからない距離でしたからね。ですが途中よるところがいろいろとあるので退屈はしないかと」

「まあせっかくの遠出だし楽しんで行こう!」

「はい、では詳細です。1週間後には北都へ到着します。北都では1日の滞在を予定しています」

「おじさん元気にしてるかな?」

「総督閣下は世界が滅んでもピンピンしてるような方なので大丈夫でしょう」

「だね」

「それから数日で北部と南部の境界に着きます。北部側の関所は軍が事前通達してあるのでスムーズに通過できますが南部側の関所では待つことになるでしょう」

「やっぱりフェリキアの道の関所は混むか~」


 南部と北部は同じ帝国だが北部が自治されているため境界には関所が設けられている。

 北部と南部では奴隷制の有無・関税の違い・無登録傭兵の禁止・移民政策などなどが大きく異なっているため通過するものは身分に問わず北部、南部のお互いが設けた2か所の関所で検査される。

 リールが言った通り北部の関所は軍所属ってことですぐに通過できるけど南部の方は待たされることになるだろう。


「まあそれでも普通よりは優先されるでしょうからマシでしょう」


 リールが続ける。


「関所を通過したら半分来たことになります。しかし南部の道は北部の道と違い未舗装のところが多いので北部より時間がかかる見込みです」

「やっぱりそうか~」


 北部は採掘した鉱物や南部から輸入した食料を無駄なく分配するため莫大な予算をかけて街道を整備してきた。

 たとえ小さい道でも軍事的要所以外は石畳で整備され、軍の部隊厳格に管理している。


「北部は1週間と数日ですが南部では帝都まで2週間と数日かかります。南部では特によるところもないので途中町を観光でもしながら帝都に向かう予定です」

「了解、まあいつも戦場を歩いてきたわけだから馬車でふかふかの椅子に座ってるだけなら一か月でも二か月でも苦痛ではないしね」


 そうだ、僕は槍や矢が飛び交う戦場を小さいころからベルトンについて行って歩き回ってたんだ。

 今更こんな快適な馬車で苦痛に思うことは何もないだろう。




ー----------




二時間後



「あ~つらい」

「見事に心折れてるじゃないですか」


 リールに言われる。


「だって~いつもはみんなと歌うたいながら楽しく移動してたんだもん」


 いつもは周りの兵達と大合唱しながら歩いていたが今は話し相手もリールしかいないし体も動かさない。


「暇だー!」

「そんなこと言われましてもどうしようもできませんよ」

「うがー!何か刺激を!」


 そうしてリールの前でのたうち回っていると声が聞こえてきた。


「ん?今何か聞こえた?」

「聞こえましたか?私は何も」


「、、、ナ殿下、カーナ殿下」


 確かに聞こえる。


トントンッ


 馬車の扉がノックされる。


「姫様、よろしいでしょうか?」


 エレナさんだ。

 エレナさんは先導しているボンボンの騎士団とこの馬車含む護衛隊の距離を離して護衛隊を指揮している。


「いいよ、なに?」


 僕は扉に着いた小窓を開けて身を乗り出した。

 エレナさんは馬で並走しながら僕に言った。


「あれをご覧ください」


 そう言ってエレナさんは前方を指さした。

 僕はそっちの方を向いた。



「皇女殿下!」

「姫様!」

「我らの姫!」

「カーナ殿下!」


「あれは!!」


 僕が向いた方向には最初の町があった。

 そしてその町の中央を貫くフェリキアの道の沿道には数千人の住民が大集結していた。

 みんなが僕の名前を叫んでいる。


「どうやら町の住民が軍から姫様が通ることを聞いて集まっていたみたいです。みんな歓迎していますよ。姫様の出陣を応援しています」


 馬車が町に近づくごとに歓声は大きくなっていった。

 

 正直意外だった。

 軍のみんなはともかく北部の一般人にとって僕は南部から来た居候の姫だ。

 その僕をここまで認めてくれているとは思っていなかった。


「ふふ、よかったですね」


 リールが後ろから笑顔で言ってくる。


 僕はあふれんばかりの笑顔で言った。


「うん!」


 僕は沿道に集まるみんなに向かって思いっきり手を振った。

 みんなも歓声で答える。

 それと意外だったのが腕章だ。

 軍で普及している僕の紋章の腕章が一般人のみんなにも普及していたのだ。

 沿道に集まっているみんなもほとんどがつけている。


「殿下は知らないと思いますが北部での殿下の人気は凄まじいものですよ」

「え?ほんとに?」

「ええ、ほんとですよ。軍には北部各地から集まった人材がそろっているんです。そこから波及して北部はもう殿下に夢中ですよ」


 リールは僕に言った。


「労働者から貴族まで殿下を好きじゃない人なんていません。腕章も北部各地に普及して今では北部の団結の象徴にになっています」

「何で教えてくれなかったの?」


 そう聞くとリールはいたずらな表情で言った。


「だってこうした方が殿下喜びますからね」

「さすがリール、姉らしく僕のことを知り尽くしてる、、、これは一本やられたな」

「さあ、みんなが殿下の笑顔を待ってますよ」

「うん!」


 それからゆっくりと街中を進む馬車から僕は手を振り続けた。

 みんなも応えて腕章を見せながら僕の紋章が書いた旗を振り、歓声を浴びせ続けた。


 やっぱり僕は幸せ者だ。

次回投稿は火曜日になります。


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