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42話 皇室騎士団

「報告、皇室騎士団が見えました」

「ついに来たね」


 遂に来た。

 僕の敵が、北部の敵が、


「殿下、大丈夫ですよ。我々がいます」


 そういってリールが僕の手を握った。

 毎日の訓練や数えきれないほどの戦場で傷つき、鍛えられてきたリールの手は僕にとって頼もしかった。


「そうだね!どんな奴が来ても怯えない!だって僕は北部の姫だもん!」

「行きましょう」


 北部と南部を結ぶ大街道、「フェリキアの道」

 その終着点がこのヴェスターの南門だ。

 僕が今立っているところでもある。

 僕は内門のより奥に立っているが、全開にされた内門・中門・外門の奥に確実に迫ってくる皇室騎士団が見える。

 全員が白色の馬に乗り、黄金の鎧を着ている。

 

「あれが皇室騎士団ですか、、、」

 

 リールが興味深そうに見る。


「、、、なんか弱そうですね」


 リールはきっぱりと小ばかにするように言った。

 まあ、僕も見てて強そうとは思わない。

 大層な鎧を着ているが実用性に欠ける。

 それに乗っている者達も顔が美形なだけで弱そうだ。

 やっぱり聞いた通りのボンボンのようだ。


「殿下、我々も中門あたりに行きましょう」

「、、、わかった」


 僕は一歩一歩をゆっくりと確実に踏み込んだ。

 フェリキアの道の起点は内門と中門の間にある。

 つまり内門を越えたら帝都へ一直線、後戻りはできない。


「越えますよ、殿下」

「うん、」


コツッ


 革靴が岩畳を叩いた。

 内門から出たのだ。


「護衛隊が待っています」

「うん、行こう!」


 僕に後悔はない。

 だってこれは別れではないから。


「リール、」

「何でしょう?」

「絶対、絶対かえってこよう、ここに!」


 僕は笑って言った。


「はい!」


 リールも笑顔で返してくれた。

 行こう、戦場へ




ー----------





「総員!敬礼!」


ザッ!


 100人の護衛隊が僕に敬礼した。

 敬礼している兵達は老若男女様々だがその動きは全くぶれていない。


「姫様、、、いや、指揮官閣下、総員101名整列完了しました。我らの忠誠はカーナ閣下にあります!」


 エレナさんが軍服姿で敬礼しながら報告してきた。


「ありがとう、じゃあ行こう!」

「はっ!閣下のご意思のままに!総員騎乗!」


 護衛隊が今回のために用意された黒の軍馬に乗った。

 北部軍十数万の軍馬から選抜された最高の101騎だ。


「馬車にお乗りください」


 エレナさんが促してくる。

 エレナさんがの後ろにあるのはこれも同様に今回のために用意された馬車だ。

 8頭がけというこれまでないような大きさの馬車だ。

 外は北部産の金銀財宝で飾れ、中は広々とした実用的なつくりだ。

 ファスターが張り切ったせいで無駄に豪華なものができてしまった。


「いや、皇室騎士団と直接話したいからちょっと歩くよ」

「かしこまりました」

「では行きましょう、殿下」

「うん!」


 外門を出て少し行ったところで皇室騎士団と話せる距離になった。

 僕を見て後ろから白と金の鎧を着た青年が一人出てきた。

 馬に乗ったまま僕を見下ろしている。


「これはこれは、カーナ皇女殿下、初めまして。私は今回護衛を務めさせていただきます皇室騎士団副団長、フィアル・フォン・カーデスターでございます」

「挨拶ご苦労、だが馬に乗ったまま敬意を示す文化は帝国に存在しないはずだが?」

「おっと、これは失礼、何せ野蛮な北部を横断していましたので礼儀を忘れかけていました」


 そう言って馬から降りた。

 小ばかにしたような顔でこちらを見ている。

 、、、なめられているな


「ところで、その北部人たちは何ですか?」


 そう言って後ろの護衛隊を指さした。


「護衛だ」

「野蛮な北部ですから心配なのはわかりますが護衛は我々だけで十分でございますよ。なによりそのような雑兵、我々の足を引っ張るだけですから」


 こいつは本気で言ってるのか?

 、、、どうやらこいつは本気で自分が強いと思っているらしい。


「それに何故男物の服を着ているのですか?」


 僕が来ている軍服を見て言った。


「僕は北部で軍に育てられた。おかしいことはないだろう」


 相変わらず小ばかにしたような顔だ。


「それと」

「?」

「、、、お前に一つ教えてやろう」

「何をです?」


 僕はヴェスターのほうを向いて叫んだ。


「全軍!気を付け!」


ザッ!!!


 僕が叫ぶとさっきまで誰もいなかった城壁に一斉に兵が現れた。

 その数は見えているだけでも数万に及ぶ。

 2列目以降も城壁にびっしりと整列していて、それも合わせると10万を超える。


「北部の民よ!ここはどこだ!」


 僕は手を大きく広げて叫んだ。


「北部!北部!北部!」

「北部!北部!北部!」

「北部!北部!北部!」

「北部!北部!北部!」

「北部!北部!北部!」

「北部!北部!北部!」


「ここを統べているのは誰だ!」


「我々!我々!我々!」

「我々!我々!我々!」

「我々!我々!我々!」

「我々!我々!我々!」

「我々!我々!我々!」


 城内から叫ぶ兵も合わせた20万以上の兵が50人の皇室騎士団に向けて叫ぶ。

 フィアルに浴びせられた掛け声は空間を大きく揺らした。

 南部のボンボンには経験したことないだろう。


 僕の2回目の問に兵達が答えると南門の上に大きな北部軍の軍旗を掲げた老将が現れた。

 おじい様だ!


「我ら北部の民の盾にして剣!そして我ら北部の主はただ一人!貴様ら!それは誰だ!」


「カーナ!カーナ!カーナ!」

「カーナ!カーナ!カーナ!」

「カーナ!カーナ!カーナ!」

「カーナ!カーナ!カーナ!」

「カーナ!カーナ!カーナ!」

「カーナ!カーナ!カーナ!」


 みんな!

 これは打ち合わせにはなかった。

 おじい様はいつまでたっても衰えないね。

 よし!

 

 僕は20万歓声を受けての再び振り向いた。


「我ら北部を弱いと思うのも雑兵と呼ぶのもいいだろう、もしかしたら本当にそうなのかもしれない、だがそれは北部軍30万を倒す覚悟があるということだな?」


 フィアル含めた皇室騎士団はヴェスターとその中の20万の軍を前にかたまって震えていた。

 僕は何も言わずに背を向けて護衛隊に囲まれた馬車に乗り込んだ。


「お見事です。殿下」


 馬車から見守ってくれていたリールが言った。


「ありがとう、よし!行こう!戦場へ!帝都へ!」

「はい!仰せのままに!」


 馬車は8頭の馬にひかれてゆっくりと滑らかに動き出した。

今日から書き溜めの投入開始です。

次回投稿は日曜日になります。


読んでくれてありがとうございました!



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