39話 決意表明
幼少期を思い出す先生達との2か月はあっという間に終わってしまった。
「殿下、着きました。外で皆が待っています」
ヴァルドからヴェスターに着いた馬車の中で隣に座るリールが言う。
僕は息を大きく吸い覚悟を決めた。
「よし!行こう!」
「はい!喜んでお供します!」
僕は勢いよく馬車の扉を開けた。
外には兵達でごった返している。
「殿下、お帰りなさいませ」
待っていたおじいさまが出迎えてくれる。
「ただいま」
「ここは兵達であふれているので中に入りましょう」
「うん」
おじい様はどことなく申し訳なさそうな顔をしている。
恐らく今回の呼び出しに責任を感じているのだろう。
「姫様!行かないでください!」
「ここにいてください!」
「姫様!」
建物までの道で兵達が行かないでと言ってくる。
僕はそれに笑顔だけ返す。
僕たちは指揮官たちが集まる建物に入った。
「姫様、2か月ぶりですね」
ベルトンがいつも通り笑顔で迎えてくれた。
「姫様、お元気のようで何よりです」
エレナさんの優しく迎えてくれた。
他にも各軍団の軍団長達が笑顔で迎え入れてくれた。
僕はみんなが座る円卓に座って一度目を閉じた。
それから目を開け、真面目な顔に代わってから口を開いた。
「さて、」
軍団長たちの顔が一気に真剣になる。
「僕は行こうと思う。」
「、、、そうですか、、、」
みんなは残念そうな顔をしたが以外にも止めようとはしてこなかった。
「皆には私から言ってあります。殿下、、殿下はご自身のしたいことをなさってください。我々はそれを全力で補佐いたします」
リールに話をまとめておいてとは言ったけどここまで軍団長達を説得してくれるなんて、、、
「リール、、ありがとう」
僕は静かに、しかし最大限の感謝を込めて言った。
すると次にベルトンが口を開いた。
「俺たちは姫様が帝都を焼くことを望むなら何の迷いもなく帝都にあるすべてを焼き尽くします、、、しかし姫様がそれではなく別の戦い方を望んでいるのなら俺たち北部はそれについて行くだけです」
ベルトンは言った。
その時の彼はいつもより何倍も頼もしく見えた。
ベルトンに続いてみんなも口を開く。
「私も同じです」
「私も」
「俺もです」
そこにいるすべての軍団長達が賛同してくれた。
恐らくこの世界にこれ以上頼もしいことはないだろう。
「ありがとう、、、みんな」
「さて、あとはあいつらだけですね」
「兵は中央練兵場に集まってます」
そうだ、まだ兵達が残っている。
兵達も納得させなければ。
「そうだね。いくら僕達指揮官の中で解決しても30万の兵達が納得しなきゃいけないからね」
「兵たちは一応姫様が帝都に召還されていることを知っています。」
「それで暴動が起きかけました。下級指揮官も決起しそうになって大変でした」
大変そうだ、、、あとで何か差し入れておこう。
「あと殿下」
リールが言った。
「なに?」
「先ほど第一山岳防衛門から連絡が来まして、皇室の騎士団が2日前通過したとのことです。おそらく皇帝が差し向けた迎えの騎士団でしょう」
遂に来たか、、、
「あとどれくらい時間残ってる?」
「恐らく今日中には最終の防衛門を通過しますから明日の早朝には着くかと」
「じゃあ今日がラストチャンスだね」
「はい、あとすでについて行く護衛隊の選抜は終了しています。」
「わかった。ありがとう、皇室騎士団はどれくらいの数なの?」
「報告によると50人ほどです」
「迎えにしては多めだね」
「はい、おそらく殿下が乗り気ではないことを想定して威圧するために多くしているのかと」
「、、、笑えるね」
「はい、このヴェスターには20万以上の殿下派の兵がいますからね」
そうだ。
ここはヴェスター、彼ら皇室騎士団のような軍隊もどきが威圧できるようなところでは到底ない。
「まあ、護衛隊は威圧感マシマシでお願い。」
「もちろんです。すべて近衛隊と各軍団から選抜した先鋭兵に新型のフルプレートに黒で統一した鎧よ用意しています」
「ありがとう、そういえば皇室騎士団の指揮官って誰?」
「今回派遣されてきたのですか?」
「うん」
「確か、中央貴族の子息だったと思います。どうせどっかのボンボンです。警戒する必要はないかと」
「わかった。ありがとう」
「では行きましょうか」
「うん!よし行こう!」
僕は椅子から立ち上がり後ろのドアから部屋を出た。
外には文官達が集まっていた。
「姫様、、、」
「殿下行かないでください」
文官達も兵達と同じように引き留めてくる。
僕は練兵場で話すからとついてくるように促してその場を去った。
ガタン、
「中央練兵場です。足元に気を付けてください」
僕たちは巡回馬車に乗って中央練兵場へ着いた。
練兵場は兵達で埋め尽くされている。
10万人はいるだろうか?とにかく莫大な人数が集まっている。
だだっ広いはずの練兵場は兵達で埋め尽くされているからか狭く感じる。
「姫様!」
「殿下!」
「俺たちは戦えます!」
「そうです!」
「行かないでください!」
「帝国なんて敵じゃありません!」
ここでも引き留められる。
でもみんなには悪いけど僕は行くよ。
「殿下、こちらです。」
リールは兵達をかき分けながら練兵場中央にある台を目指した。
どうやら臨時で演説台を作ってくれたようだ。
「どうぞ」
リールは演説台に上ると上から手を差し出してきた。
僕はそれを掴んで演説台に上がった。
演説台は高く、練兵場にいる10万の兵を一望できた。
練兵場に入りきらなかった兵も建物の屋根や城壁の上からこっちを見ている。
僕は大きく深呼吸した。
一度目を閉じて気持ちを落ち着かせた。
そして練兵場外合わせて20万近くの聴衆に向け口を開くのだった。
お待たせしました。
今日から再開です。
次回投稿は日曜日になります。
読んでくれてありがとうございました!
もし面白い・続きが読みたいと思っていただけたらブックマークや広告下の☆☆☆☆☆でポイントを入れていただけるとうれしいです!
評価はモチベに繋がりますのでよかったらお願いします!