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35話 先史


「ではお渡しした歴史書をお開きください」


 僕は先生からもらった分厚い歴史書を開いた。


「では最初は初歩的な振り返りから行います。皇女様、帝国の祖先はどのようなものでしょう?」

「フェリキア人のことだね」

「その通り、まだ暦も定められていない時代大陸北部の山岳地帯、つまりここ北部に小規模な部族がいました。それがフェリキア人です。皇女様の祖先でもあります」


 やっぱり先生の解説はわかりやすい。

 さすが天才だ。


「フェリキア人はこの貧相な土壌の北部で狩猟を中心とした生活形態を築いていました。その時は特定の場所にとどまることはせず、獲物を求めて放浪していましたが我々が普段と通っている大森林とそれを含む山岳の切れ目を見つけるとそこに定住します。」

「じゃあヴェスターあたり?」「いい質問ですね。実はヴェスターこそが帝国発祥の地、祖先が最初にきずいた拠点なのです」


 初めて聞いた。

 驚きだ、いままではただの軍事拠点として作られていたと思ったが帝国発祥の地だったなんて


「初めて聞いた」

「まあ、このことは最近解明されたばかりですしマニアックなのでね」

「へ~」

「では続けましょう」


 先生は続けた。


「初めての拠点を作ったフェリキア人は農業が確立してもなお狩猟が食料供給で大きな割合を占めていました。そしてここが重要な点なのですが暦ができる200年ほど前初の武力衝突があります。それ自体は小規模でしたがその後の歴史に大きな影響を残します。相手は隣接していた農耕部族、兵数も生活の質も圧倒的でした。先制攻撃はその農耕部族、フェリキア人集落に侵攻しました。しかしフェリキア人はそんな圧倒的な敵を少人数で壊滅させたのです。フェリキア人の兵士はその足で相手部族の集落をいくつも襲い最終的には多くの集落を支配下に入れ有利な条件で和平したのです」

「何故勝てたの?」


 先生は言った。


「それはフェリキア人が狩猟部族だったからです。彼らは厳しい山岳部の環境で生き残ってきた動物や魔獣を相手にしてきたので戦術や武器の質が洗練されてきたのです」

「確かに農場しかしてこなかった相手よりは強いかもね」


 先生は僕の質問に答えると続けた。


「初の戦いに勝利したフェリキア人は自分たちが強いことを自覚し始めます。それから手に入れたいくつかの集落の住民を奴隷化し、食料調達は彼らにやらせました。これはフェリキア人の人口がそこまで多くなかったのに対し奴隷化された集落の住民が多かったため実現できたのだとみられています。生活基盤が整い、余裕ができたフェリキア人はさらなる部族の発展のため次なる戦いに向け準備しました。この時代では初めての「軍」を組織し武器の質も強化し続けました。人口も増やし、フェリキア人のみで構成された精強な軍を作り上げました」

「僕がやったことに似てるね。奴隷化とかはしてないけど北部軍とクルヴァ地方の経緯に似てる」

「そうですね。帝国の皇族には少なからずフェリキア人の血が入ってので性格が似たのかもしれませんね」


 なんだか、自分の血について見つめなおす機会があってもいいような気がしてきた。


「軍を組織し、軍事基盤を盤石にしたフェリキア人は最初戦った農耕部族含め、周辺勢力を次々に攻めます。フェリキア人は数十年の間でその一帯を制圧しました。そして一帯を制圧し、今の王国がある地域に進出しようとした時初めての「国」に出会います。その国はあらかじめフェリキア人の進出を予測していてフェリキア人をまね、軍も組織していました」

「その国は今の王国とは違うの?」

「王家は変わりましたが国自体はその後継だと考えられています。しかし資料があまりにも少なく断言はできません」


 王国がそんな長い歴史を持っているとは知らなかった。


「初めての国と出会ったフェリキア人は統率された全体的な組織などを見て自分たちも国家を建国することを決めます」

「フェリキア統一国だね」

「はい、帝国の前身となるフェリキア統一国がこの時建設されます。もともと部族の族長を務めていた家が皇族となり統治します。統一国はすでに広大な土地と奴隷を抱えていたので瞬く間に国家を拡大し、軍も増強されました。統一国の国力が整うとすぐにその国へ侵攻を開始します。これが国家同士の初めての戦争だとされています。この戦争は終始統一国が圧倒しました。最終的には大陸から追い出し、島に撤退させることに成功します」

「さすが僕の先祖だね」

「はい、王国に対してはこの時から最強でした」


 王国が負けるのはずっと変わっていないようだ。


「今王国がある地域をすべて制圧すると大陸北部の制圧が加速します。多数の国家・部族・民族を武力をもって制圧し、わずか200年で北部において絶対の地位を確立します。北部制圧が終了するといったん戦いはやめ、内政期間に入ります。首都であったヴェスターには巨大な要塞が建設されその周辺には大陸最大の大都市が建設されたそうです」

「なんだか、いつものヴェスターが首都だったなんて不思議だね」

「はい、今では当時建てられたものはほぼ残っていませんが城壁は一部当時のものが残っています」


 すべて終わったらゆっくり遺跡を採掘するのも悪くないかもな~


「数百年の内政期間を終えると今度は南進を開始します。南部にはすでに地域統一を達成した大きな国家がいくつかありましたがそれでも統一国にかなう国力はありませんでした。そのため各国は軍事同盟で対抗しようとします。しかし大きな戦果を挙げることもなく数百年で制圧されてしまします。これには統一国と各国では大きな違いがあるからとされています」

「大きな違い?」

遅れてすいません。

今回から4話ほどは帝国の歴史をたどっていく話になります。

歴史フェーズが終了すると第2章に入る予定です。

お楽しみに!


読んでくれてありがとうございました!



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