2話 宴会
「まったく、、、この前も言ったでしょう!殿下は帝国の皇女であらせられるのですよ!」
あれから1時間はたっただろうか、、、僕はおじい様からの説教を受けている。
「はあ、、、まあ今日はこれくらいにしておきましょう。日も暮れてきていますしね。」
「よっしゃー!これで夜の偵察にまにあ、、」
おじい様がこちらをにらみつけてくる。
「すいません、、、」
「それでよろしい」
今日はあきらめることにしよう、、
「それより初陣の準備をしては?」
「あっ確かに」
「参加希望の兵はまとめておきました。過去最大の初陣になりそうですね」
「ありがとう。そうなんだよね~」
貴族や皇族の初陣は大量の兵を引き連れていくことになるが、普通はある程度の兵を引き連れて安全な盗賊討伐くらいにしか行かない。
しかし僕の場合、1週間後の初陣は何万もの歴戦兵を連れて戦争の最前線に行くことになる。
まあ準備しておいて損はないでしょ。
「あと明日あいてる?」
「はい、あいておりますがどうかされましたか?」
「ちょっと明日剣の手合わせしてほしくて」
「わかりました。明日は中央練兵場を開けておきます」
「ありがとう!」
「久しぶりに腕が鳴りますな!」
「へへっ僕も負けないよ!」
明日に備えて少しずつ兵たちに剣術を教えてもらっていた。
明日はそれをおじいおじい様に見せるつもりだ。
「じゃあ僕はこれで」
「はい、ではまた明日」
おじい様と別れた後、宿舎の自分の部屋に戻った。
本居は一応近くの城にあるがほとんどこの要塞で過ごしているからこの部屋が事実上の我が家だ。
貴族の邸宅みたいに豪華でもないし使用人もいないが実用的で居心地の良い気に入っている。
「さてと、」
さっきまで来ていた軽装な服を脱いで寝巻の青のシンプルなワンピースに着替える。
「そろそろかな?」
着替え終わると外に出て要塞の中央にある練兵場に向かった。
ここは夜になると兵達の憩いの場に変わる。
近くの町から酒場や劇団が出張してきて活気あふれている。
「おまえら!姫様が来たぞ~」
ベルトン少し酔っ払った様子でみんなに言った。
「姫様~!」
「こんばんわ姫様」
「明日の閣下との模擬戦楽しみにしてますよ!」
「こっちで一緒に食べましょうよ~」
「いや今日はこっちで」
兵たちが気軽に話しかけてくる。彼らは5歳のころから育ててくれたいわば家族みたいな存在だ。
「みんなこんばんわ~ごめんね、今日は指揮官組と食べるね~」
ベルトンの隣に座る。
ベルトンの他にも各軍団長がいる。
みんな個性豊かだ、北部は血筋より実力を重んじる風習があり貴族の指揮官は少ない。
実力重視なのは指揮官以外も同じで北部軍は年齢も身分も性別もバラバラで帝国では珍しく異民族の兵や女性の軍人が半数を占める。
「大人気ですね、姫様!」
「はは、まあ悪くはないね」
「姫様も来たことだし早速食べますか!」
そう言うとベルトンは近くの町から出店を出している酒場の店員に声をかけた。
「肉の串焼きとジャガイモスープを10個ずつ頼む」
「かしこまりました閣下」
「閣下はやめてくれ、俺は平民だ」
「お前が軍団長になるなんて10年前は考えられなかったな!」
向かいに座る老将がいる。
彼はバークレー、40年も北部軍にいるベテランだ。
今は北部軍の参謀としてみんなに慕われて第3軍団長でもある。
僕も剣術は彼に教わっていた。
温厚な性格とは裏腹に戦場だとめちゃくちゃ怖い。
彼は王国との戦争だけでもおびただしい戦績を上げていて王国兵からは老いた悪魔なんて呼ばれているらしい。
「そういえば姫様、」
「なに?」
バークレーが言う。
「帝都では皇帝の健康不安説が噂になっているらしいです」
北部の人間は価値観の違いなどから皇室を嫌っていることが多い。
僕も最初は受け入れられなくて苦労した。
僕はほぼ北部人だから大丈夫だが帝都の貴族が父のことを呼び捨てにしてるのをみたら卒倒するだろうね。
「本当か!そしたら近く皇太子が選出されるかもな」
帝国では後続の中から次期皇帝の皇太子が選出されるが今ではほぼ権力争いの舞台になっている。
「まあ僕には関係ないよ。女だしもう負けた身だから。帝都では能力主義じゃないからね」
「そうだといいんですけどねー」
「まあそんなこと話しても仕方ないですね。始めた私が言うのもなんですが」
「お待たせしました~」
さっきの店員が他の店員を連れて頼んだものを持ってきた。
「じゃあ、乾杯!」
ベルトンがそう言うと全員がお酒を掲げて乾杯した。
僕は水だけど、、、
「じゃあこっちもいただきますか!」
乾杯と同時にスープや串焼きも食べ始める。
串焼きは焼き立てで肉汁があふれてきていてとてもおいしい、ジャガイモはやせた土地が多い北部では定番だが定番なだけに工夫されていて素朴だが串焼きにも劣らないおいしさだ。
「姫様、明日の模擬戦楽しみにしてますよ!」
バークレーが期待した様子で言う
「ありがとう、先生の名に恥じないように頑張るよ!」
「まさか妹弟子が閣下と戦うなんて俺が初陣だったときは思いもしなかったぜ」
「そういえばベルトンも先生に教えてもらったんだっけ?」
「教えていてもらったというか初めて自分の部隊を持った時ときに一度教えてもらっただけですけどね」
「まあこいつは兄弟子と言っても姫様に比べればすずめの涙ほどしか実力はなかったですがね」
「うるさいですぜ!」
「ハハハ!」
テーブルが笑いに包まれる。
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「じゃあ今日はこれくらいで解散しますか」
「そうだね、じゃあまた明日」
みんなは解散して各自の宿舎に戻る。
あれから山ほど食べたためおなかがいっぱいだ。
自分の部屋に戻ると崩れるようにして寝たのだった。
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